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現場の昼飯時、近寄ってくる動物達  作者: 蘭鍾馗


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5.駐車場犬の一家

「駐車場犬」とは何か。


 要はあれですよ。観光施設やなんかの大きな駐車場に棲みついて、そこで来客からごはんを貰ったりして生きている野良犬のこと。私が勝手にそう呼んでるだけですが。


 ◇


 昔、四国のある場所で景観調査をやっていた時の事。


 そこは海に近い場所で、海が展望できる場所に観光施設と駐車場があった。その駐車場に「駐車場犬」の一家が棲みついていた。

 お父さん犬とお母さん犬、そして子犬が3匹くらいいた。で、その駐車場を訪れる観光客からご飯を貰ったりして生きていたわけです。

 で、「お母さん犬」は愛想が良くて撫でさせてくれる。子犬達もおおむねそんな感じ。でも、「お父さん犬」は人が怖い。飼われていた頃に虐待されていたのかも知れない。近寄ると逃げていく。


 その近くの宿に泊まって、2泊3日の予定で調査をしていたのだが、2日目の午前中が雨になってしまった。景観調査だから雨が降ると景観写真が撮れない。なので、宿を出てから、とりあえずこの駐車場に車を止めて、雨が止むのを待つことにした。


 ◇


 で、車の中で雨が止むのを待っていたら、ドアの外に、何やら気配がする。


 何だ?と思って窓の外を覗いてみると、居たんです、そこに。

「お父さん犬」が。

 結構な大降りの雨の中、ビシッと座ってこちらを見ていた。


 その目は、「何か食べ物下さい。」と言っていた。


 日頃は「お母さん犬」の方が観光客に愛想を振りまいて食べ物を貰っていたので、一家の父親として、なんか不甲斐ないとか思ったのかも知れない。人が怖いはずなのに、それを我慢して、大雨の中、私の車の横に来てビシッと座って、家族のためにおねだりをしている。


 頑張ったじゃん。


 私は、前日に昼食用に買っておいたパンをあげた。

「お父さん犬」は、それをくわえて、どこかへ持っていった。


 ◇


 さて、昼前になって雨は止み、撮影日和になったところで調査開始。雨上がりで空気が澄んでていい景観写真が撮れた。

 そして翌日も調査をやって、予定は無事全部終了。あとはレンタカーで空港まで戻って帰るだけ。

 駐車場に戻って、車の中で荷物を整理していたら、駐車場犬の一家がやってきた。

 家族全員、私の車の横に並んで座っている。

「お父さん犬」も触らせてくれた。まだちょっと怖そうだったけど。


 まるで、「お父さん犬」が、「昨日、この車の人がパンをくれたんだよ。」と家族に話したとしか思えないように、家族全員揃って私のところへ挨拶に来てくれた。


 でも、私はこれから帰らなきゃいけない。

 車を出すと、駐車場犬の家族全員が従いてくる。

 後追いされてしまった。


 でも、また止まるわけにもいかないので、スピードを上げた。

 バックミラーを見ると、全速力で走って追いかけてくる。

 最後、「お父さん犬」が2回、大きな声で鳴いた。


 さよなら。

 ごめんね、連れて帰れないんだよ。


 ◇


 四国某所の、ちょっと切ない仕事の思い出です。



 

現場の昼飯と動物の話、これにて終了です。

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― 新着の感想 ―
猫や犬のお話は、蘭鍾馗さまの優しさを動物たちが感じ取ったのかな、というエピソードだなと思いました。 このお話のわんこたち、家族総出でお世話になりたいです!と本当にお家へ連れて行って欲しかったのかもしれ…
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