表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジェノサイド・デビル  作者: 縦島横ヲ
9/9

簒奪者の戦い③

「あなた本気で言ってるの? いいから帰還しなさい! 軍務違反になりますよ!」

 “穴”から甲高い声が聞こえてくる。ベルハイムはそんな声に動じる様子もなく飄々としていた。「俺は大した人生は歩んできてないがよ、それでも死にたくなる瞬間はある。限定品を買うために並んでいたら目の前で売り切れた瞬間だ。あれはキツい。手に入ると思っていたものが指の隙間から零れ落ちるときの絶望は筆舌し難いものだ」

 ベルハイムは何かを覚悟した表情のまま近くにあった樽を流剛鋼で持ち上げる。

「けど、それ以上に人を死に至らしめる感情は慚愧、後悔だな。もう少し早く並んでいれば。もっと遡れば、早起きしてりゃとか髪型なんか拘らずに早く出発してればとか、もうどうしようもねぇことばかり考えちまう」

 ベルハイムは血で濡れた髪をかき上げながら樽に腰掛ける。

「だから後悔しないことにした。過ちも失敗も、後悔さえしなければそれはただの選択、事象へと成り下る」

「あなた、一体何を……」

 “穴”の声を完全にシャットダウンし、意識を前方から迫りくる『暴掠』に集中させる。

「そう考えれば怖くねえ。もう逃げてたまるかよ。俺の罪からも、使命からも」

 前方数百メートル先、ダイモンは悠然と触手を揺らめかせながら歩みを進めていた。そして鋭く眼光を尖らせるベルハイムを見つけると玩具を見つけた子供のように破顔する。

「あ、死んでない。まだ遊ぶ?」

 ベルハイムは流剛鋼の衛星を大量に展開すると、徐ろに立ち上がった。

「ああ、お前も命賭けろよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ