無駄な徹夜
朝日に照らされながら、窓の外を小鳥達が飛んでいく。
夜が明けた。
明けてしまった……。
明けない夜はないのか……、いや、本当に今日程明けないで欲しい日はない。
ベッドに寝っ転がりながら思う。
目の下には真っ黒のクマができてしまっている。
あれから電池の減らない携帯に浮かれて、下で彷徨いている魔物を窓から写真で撮ったり、豪華なベッドや調度品と共に自撮りをしたり、音楽を聴きながらベッドの上で弾んでみたりして一人ではしゃいでいたら、あっと言う間に朝日が射し込んできた。
久しぶりの徹夜である。
今日はレイブンが何か企んでそうだったのに……。
本当にバカな事をしたと、今では後悔している。
眠い。眠すぎる。
さっきメイドさんが置いて行った朝食は、まだ手付かずでテーブルの上に置かれている。
眠すぎてあまり食欲がないが、少し物を入れておかないと……これから何が始まるのか分からないのに、身体が持ちそうもない。
油断をすると落ちてくる瞼に必死で抵抗しながら、朝食が置かれているテーブルの椅子に座る。
意識をしないと、身体が前に倒れそうだ。
置いてあるのは、パンだと思われる何かと野菜? かな……あと、白い飲み物。
パンと思われる物は焼きたてなのかまだ温かく、木の実のような物が混ざっており、香ばしい匂いがしている。
野菜はレタスみたいな葉物で、その上にどきつい黄色い俵型の何かが置いてある。
白い飲み物は、匂いを嗅いでみたが無臭で、少し指に付けて舐めてみると豆乳のようなコクがある。
決めた! 食べるのは、パンと葉物とこの白い飲み物にしよう。
どぎつい黄色の野菜は何か想像できなくて怖いから、食べるのはやめておく。
温かいパンをちぎって、豆乳で流し込む。
葉物野菜もフォークで、えいやっと口へ運んだ。
パンも見た目通りふわふわだし、豆乳も癖がなくて飲みやすい。
少し怖かった葉物野菜も新鮮で美味しい。
あまり食べ過ぎてしまうと、眠気に勝てなくなりそうなので盛られている半分ぐらいでやめた。
身体がフラフラする。
…………はっ!! 寝てた。
いけない。
このままでは寝てしまう。
これから、悪魔がやってくるのだから何が起きても対応できるようにしないと……。
その時、部屋のドアがノックされ開いた。
「おはようございます。おかげんはいかがですか?」
レイブンが部屋に入ってくる。
「……おはよう」
眠くて疲れていて、あまり声が出ない。
それより、これから起こる事を想像して少し吐き気がした。
「おやおやおや、いけませんね。顔色が悪いようですよ?」
まったく感情がこもっていない。
その言葉は表面を繕っただけだと分かる。
さすが悪魔・導師。
感情を捨て去っているか。
「ま、その様子だったら大丈夫でしょう。今日はちょっと色々試したい事がありますから、城の裏庭に行きますよ」
ニッコリと浮かべる微笑には、毎回ゾッとする。
こうして私は眠気と共にレイブンに連れられて、重い足取りで裏庭とやらに連れられて行った。