敵襲?
船での旅が半分の行程を終えた。天候にも恵まれ、きっとこのまま順調に進むことができるだろうと、のんびり船旅を楽しんでいたある日。デッキを散策していると、私達の乗船する船にやけに接近してくる見慣れぬ船を見つけた。
(あの船は? 何か妙な動きをしているような…? 気のせいかな?)
最初はそう思ったのだけど…その船を発見後、急遽慌ただしく動き始めた船員さん達。そんな彼らの動きに不穏な空気を感じ始めた頃、護衛騎士さんがやって来て、私へこう告げた。
「ユーカ様、すぐに船室にお戻り下さい。どうやらこちらに接近中の船は、海賊船のようです」
「海賊船……! 大丈夫なんですか?!」
「皇太子殿下とユーカ様は我々が必ずお守りしますので、ご安心を。その為にも、我々はこれから海賊の討伐に参加します。もちろん船室にも護りをつけますので、どうかお早くお部屋へ」
そう促されて、船室へ戻ることに。でも、これから海賊船が襲ってくるというのに、部屋で何もせずじっとしてはいられない。私は攻撃魔法では戦力にならないけれど……私には神級の結界魔法がある!
「私は神級の結界魔法を扱えます。今からこの船全体に結界を張ります。船の動きに合わせて結界を張る必要があるので、出来れば外が見える位置に立ちたいのですが…」
「神級の結界魔法が…! それはなんとも心強いですな! 聞くところによると、大砲であろうと上級の攻撃魔法であろうと、防ぐことが出来るとか?」
「えぇ、大丈夫です。すべて防げます。結界の強度は、神級の攻撃魔法でようやく拮抗するくらいでしょうから」
「それなら大丈夫ですな! 攻撃を受けないのであれば、海賊船を振り切ることだけに集中出来るでしょうし!」
そう言うと彼は、船長に今の話を報告してくるようにと部下に命じた。あとは…。
「えーっと…それで…外が見える位置に立ちたいというのは大丈夫ですか?」
「あぁ、そうでしたな! この部屋の窓は…」
「少し小さいですよね…船の動きがもう少しわかるといいのですけど…」
「そうですなぁ…ユーカ様の結界があるとはいえ、お護りする必要は当然ありますからな。船上デッキでは、船員や我々が動き回っていますし…」
「それならわたしの部屋のバルコニーが良いのではないか?」
護衛騎士さんとの会話に第三者の声が…って、王子様か。そっか、王子様のお部屋には専用のバルコニーがあるのかぁ。でも、お邪魔しても良いのかな?
「お邪魔してもよろしいのですか?」
「もちろんです。護衛対象が同室にいた方が、騎士達も護りやすいでしょうからね。そうであろう?」
最後の問いかけは護衛騎士さんに向けて。護衛騎士さんは、それに対して『御意』の意を伝え、私は王子様のお部屋にお邪魔することになった。
海賊船は今も近付いているのだから、とにかく大まかに船の大きさをイメージし、結界を張る。大きく張りすぎて結界内に海賊船が入り込んだら、意味がないしね。
【神の力によりて守護を】
そう唱えてから、部屋を移動。早速バルコニーに出て、船の動きに合わせて結界の大きさを調整する。
(よし、あとは振り切ってもらうだけ!)
結界を張った直後、海賊船から大砲が発砲される。しかし、結界に阻まれ大砲は空中で爆ぜる。その衝撃も防ぐので振動はまったくないけれど、見た目から判断すると結構な威力の攻撃だったように思えて。
(…うーん…ギリギリセーフだったな)
実際に大砲をも防いだということで、皆が安心して船のスピードを上げることに集中出来たようだ。いくら防げると聞かされていても、実際に見るまでは不安もあるものね。
動きの早い海賊船だったが、全力の攻撃を防がれて唖然としていたというのもあるのかもしれない。徐々に両者の距離が離れていき、なんとか海賊船襲撃の危機を乗り切ることが出来たのだった。
もうトラブルが起こりませんように!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。更新頻度が落ちてしまいましたが、少しずつでも更新して完結目指しますので、よろしくお願いします。




