再び扉は開くのか?
王都のディーンさんの家は…豪邸だった!当初、私がトーガ村に場違いな豪華な家が建ったらどうしよう!って考えていた以上の豪華さ!
「すごい…豪華な家だね。ディーンさんって豪華なの好きだっけ?」
「いや…家のことは分からないから任せると言って、他の用件を済ませていたら、こんな家が建っていた。俺も最初にここを案内された時は…驚いたんだ」
「そうだよね…。なんか大貴族の豪邸って感じだし…ディーンさん好みではなさそう」
そんな会話を交わしながら、豪邸の門をくぐり抜けると、そこには執事さんを先頭にずらっと使用人さん達が…。そして、一糸乱れぬお出迎え…。
「おかえりなさいませ」
じーっとディーンさんを見つめると、『これも、任せていたら用意されていた…』と諦め口調で答えられた。
(任せっきりは…良くないね。勇者って…大変だな。私も任せっきりだったけど、こんなことにはならなかったしね。一応トーマさん達に見てもらってたのと、王都とトーガ村の違いがあったんだろうけど…。でも、やっぱり勇者の邸だからって理由のが大きそう)
自分が案内するからと執事さんに下がってもらい、ディーンさんに連れられて邸を見て回ったのだけど、外観だけじゃなく内装も豪華絢爛!もう言うことはないね!
一通り見せてもらって…私の部屋というところも一応見せてもらって…。その後は庭園に出て、そこでお茶を頂くことになった。
「ディーンさん。いろいろありがとうね。皆に聞いてもらえて、ようやく気持ちが落ち着いたよ」
「そうか。それなら良かった」
「結局、これからどうなるかわからないけど…今なら、なるようになれって思えるよ。元の世界に帰れなかったら、私を受け入れてくれた皆と生きていく!もし帰れたとしても…絶対に皆のことは忘れない!もし、もしもね?元の世界に帰れたけど、やっぱり皆に…ディーンさんに会いたくなったら…。来たいと思って、また来れるものなら…こっちに来てもいいのかな?」
「…もちろんだ!いつでも俺は、いや俺だけでなく皆も、ユーカを受け入れる!」
そう言って、そっとユーカを抱きしめるディーンなのだった。
それからー・・・再び、トーガ村に戻ったユーカ達。ユーカが大掛かりな村への支援を全て見届けた夜。眠りについて目を覚ますと、そこは今ではすっかり見慣れたトーガ村の寝室ではなく、日本の…元の世界の自分の部屋なのだった。
ディーンさん達との魔王討伐の旅、その後は王宮にも滞在したし、トーガ村での生活期間を考えると、一年以上経過しているのだけど…夢から目覚めてみると、たったの一晩しか経っていないのだった。
(あれは本当に夢の世界だったの…?夢と呼ぶにはあまりに長く、濃い体験をしてきたというのに、一晩しか経っていないなんて…)
枕元には、今目覚めた夢の世界へと誘われるきっかけになった本が置いてあって…。
(今はまだ気持ちの整理がつかない。でも、いつか気持ちの整理がついたなら…?私はどうしたいんだろう…もちろん私の本当の世界はここだけど…皆は…ディーンさんはどうしてるんだろう…)
あんなに毎晩のように夢の世界へと入り込んでいたというのに、あれ以来枕元に本を置けずにいた。読書は続けているのだけど、どうしても夢の世界へ入り込むことはためらってしまうのだ。それが、完結済み小説であっても…だ。
皆のことを考えない日はない。皆のその後も気になるのだけど、再び夢の世界に入り込む決心はつかなかった。
でも、いつか…あの本の完結篇が出版されたなら。その本を枕元に置くことになるのだろうか。皆のこと…皆のその後を知りたいと思って。それは、今はまだわからない。でも、これだけは言える。
私は絶対に、皆のことを忘れない!
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。一応ここまでで、この話は完結です。
この後、ユーカがどうするのか。また夢の世界への扉を開くのか、それとも…。再び物語が動き始めることがあるなら、第2章としてでしょうか。どうなるかはまだわかりませんが、もしもまた物語が動き始めることがあれば、よろしくお願いします。




