ディーンとの再会、真実を告げる決意
「そんな大変な思いをされていたのですね…。帰れるはずなのに帰ること叶わず、ましてや魔王の討伐という過酷な旅に、この世界に来られて間もなく参加されていただなんて…。わたくしでは頼りない所もありましょうが、全力でユーカ様をお支えします。これからどんなことが起きようと、お側におりますので!」
そう言ってくれるシンシア。シンシアは本当に優しい子だ。
「私ね、この世界で大切な人がたくさん出来たの。トーマさんに、トーガ村の皆でしょ。ディーンさんに、ショーンさんに、ギルさん。それに、シンシア!本当に大切な人達なの。魔王は倒したけど、また何か別の脅威が生まれたら…絶対に皆を守りたいと思う。過酷な旅だって平気よ!…でもね、同じくらい大切な人達が元の世界にもいて…。だから、どうしても元の世界に帰ることを諦められないの。この世界が大切って言いながら…」
「どちらもユーカ様にとっては大切なのですから、諦められないのも迷ってしまわれるのも当然です!諦められないからといって、責められることはありません!わたくしは…もしもユーカ様が、元の世界にお帰りになっても、決してユーカ様のことを忘れません。責めることもありません。こちらから、ユーカ様のお幸せをお祈りはさせて頂きますが。皆様…勇者様方も同じだと思いますよ?近々、勇者様はこちらにお越しになるのですよね?一度、お話になってみては…」
「で、でも…!ディーンさん自身も、元の自分の居た世界に帰れないでいるのよ!そんな人に、こんな話…」
「勇者様はユーカ様のことなら、全て受け止めてくださると思いますよ。何があっても、何を話しても。そういう方ではないでしょうか?」
「……そうね。ディーンさんは、そういう人かもしれない。…話しても良いのかな…?」
「えぇ、むしろ押し込めるよりも話して貰いたいと思われるはずですわ」
シンシアに背中を押された感じになるけれど、ディーンさんがここに来たら…一度話してみよう。そう決心したのだった。
学校の建設現場の視察など、日々する事には事欠かない。その合間に、広い庭園の一角に用意してもらった薬草園の管理もする。流石に耕すのはさせてもらえなかったけど、薬草の管理や採取は譲れない。そうして作った薬液は役人さん経由で、薬液不足で困っている地域へ回してもらっている。トーガ村の皆に何かあったら直接治せるし、この村にはトーマさんっていう優秀な薬師もいるしね!
そんな日々を送り、シンシアに全てを話してから2週間が経過した頃。そろそろトーガ村に到着するとの、ディーンさんからの手紙が届いた。手紙の配達の時間差を考えると、おそらく明日あたりには到着するのだろう。
(ディーンさんと会ったら、全てを打ち明ける…包み隠さず打ち明ける…)
つい鈍ってしまいそうになる決意を、奮い起こし中だ。暗示のように唱えていないと…決意が揺らぎそうになるんだもの!
そして、翌日。お昼前にアントニーから、ディーンさんの到着が告げられた。『客間へお通ししております』と告げられ、最後にまた暗示を唱えると、ディーンさんが待つ客間へと降りていくのだった。
客間に入ると窓の外を眺めていたディーンさんが、こちらを振り返った。久々に見ると…キラキラオーラが数倍増しに見えるのはなんでだろう…。
「久々だね。旅は疲れなかった?王都でしないといけないことは、全部終わったの?皆に変わりはない?」
「これくらいの旅で疲れはしない。王都ですることは、もうないな。ショーンとギルは相変わらずだ。そう急かなくても、時間はたっぷりあるぞ?」
「そ、そうだよね。なんか本当に久々な感じがして、ついつい…」
「ユーカこそ元気だったか?それこそ心配だったんだが…」
「私は元気だよ!トーガ村への支援も順調なんだよ!」
「そうみたいだな。ここに来るまでの間でも、前に訪れた時よりもかなり変わっていたからな」
「でしょう?トーガ村の良さは残しつつ進めてるつもりなんだけど、大丈夫だと思う?」
「あぁ、この村は相変わらず良い村だと思うぞ」
ディーンさんの言葉に安心する。やっぱりディーンさんは、安心をくれる人なんだよね。もっと私が王都を離れてからの皆のこととか聞きたいけど…先に話してしまわないと、結局話せずに終わってしまいそうで。
「ディーンさん!ちょっと今から真剣な話があるんだけど…いいかな?」
そう切り出すユーカなのだった。
読んでいただき、ありがとうございました。次話は、9月5日の11時投稿予定です。よろしくお願いします。