如何に力を尽くせばいいのか
「それで私は何をすればいい」
「……わからないと言ったはずなんですが?」
「もちろんそれは承知している。そこで君から具体的な意見を聞いてみたいんだ。何をするにも前例というものは非常に効果的だろう。そういうことだ」
「なるほどねー……うーん。ぼくがいつもやってること、か」
「どんな些細なことでもいい。朝起きたら必ず顔を洗うとか」
「身だしなみの問題かい! そういうのとはなんか方向性が違うでしょうよ……」
「そうなのか? いや、案外重要な意味が含まれているのかもしれないと思ってな」
「残念ながら無いよ……そうだな、一つ重要なのがあるかも」
「それはなんだ?」
「前にも話したと思うけど……とにかくいつでも、『死ぬ』ってことを考えること。これが大切かな」
「…………」
「……わたしはいつもやってますみたいな顔しないでください」
「しかしいつもやっていることに変わりはないのだが……」
「そういうのじゃなくてさ、なんていうか……もしもある日いきなり、あなたは明日死にますって言われたら」
「若干怖いがどちらかというと喜ぶ」
「きみはね!! ちょっと待って話聞いて!!」
「むぅ。わかった」
「つまりね、明日死ぬなんて言われたときに、あー今まで自分は何してたんだろう、こんな後悔するくらいならもっといろいろやっておけばよかった、ってなっちゃうでしょ?」
「ふむ、たしかに」
「そりゃまあ、誰しも後悔ってのは必ず持ってるものだと思うから、心の底から満足して、もう何もやることはないって思いながら死ねる人なんてそうそういないと思うんだよね。でも、後悔は弱さになるし、悲しさを生むし、怖さを感じさせる。だからそれをできるだけ減らすんだ。いつ死んでしまってもいいように……そういう意味での、死を考えるってこと」
「……なるほど」
「きみはそういうの、ある? やりたいけど出来ないこと、まだやってないこと。できれば、一回で終わっちゃうようなものよりも、長く続けていくようなものの方がいい」
「それはなぜだ?」
「たとえばきみがパフェを食べたいとする。パフェを食べに行く。おいしかった。終わり。……っていうよりもさ、もっとこう、濃ゆい時間を過ごそうって感じ? これから先、未来までずっと重ねていって、最後の最後に、あーやり遂げたなーって感じるようなもの。そういうのって、ある?」
「……言われてみれば、たくさんある。よく考えたら今までずっと、私は死ぬことばかりを考えていたからな。あまり気にならなかった」
「……そっか。じゃあまずは、それを一つ一つ片づけていこうよ。そうしたらきっと、死ぬときは安らかでいられるはずだ」
「なるほど……よし、さっそく今日から始めよう! 私は今日から全力で生きる、いつか全力で死ぬ時のために! だから君も全力で協力してくれ! 頼んだぞ!」
「……おう!」




