表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
漆黒の流星《ブラックスター》  作者: ショウ
第1章:漆黒の流星

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/38

第1章エピローグ⑤:白の約束―想い―

事件から数日――。

穏やかな日常は、何事もなかったかのように戻ってきた。


星峰魔法高等学校。

昼休み。


鈴華は教室の窓際に立ち、春風に揺れる校庭をぼんやりと眺めていた。

窓から吹き込む風が、長い黒髪を優しく揺らす。


ふと視線を屋上へ向ける。

そこには零と影山の姿があった。

影山が身振り手振りを交えながら何かを話している。

零は面倒そうに相槌を打ちながらも、ときおり小さく笑っていた。

その姿を見て、鈴華は自然と口元を緩める。


(……やっぱり。)

(ああして笑っている方が、黒神くんらしいですね。)


事件の時に見せた冷徹な執行官の姿よりも。

教室で居眠りをして。

面倒くさそうに授業を受けて。

友達と他愛もない話をして笑っている。

そんな”いつもの黒神くん”の方が、今はずっと自然に思えた。

あの日まで。


“漆黒の流星”は、自分にとって遠い存在だった。

誰もが憧れる英雄。

世界最高峰の魔法組織で活躍する特別執行官。

手の届かない場所で戦う人。

そんな風に思っていた。


けれど――。

実際に出会った黒神零は、そのどれとも違っていた。

面倒くさがりで。

自由奔放で。

少し抜けていて。

時々、子どもみたいに笑う。

思わず呆れてしまうことも少なくない。


それでも――。

困っている人を決して見捨てない。

誰よりも優しくて、誰よりも強い人だった。


鈴華はふと、自分の肩へそっと手を添えた。


あの日、自分を優しく包んでくれた黒いコート。

廃工場で掛けられたあの温もりは、今でも鮮明に胸へ残っている。


『返さなくていい。』


零が何気なく口にしたその言葉。

自分へ託してくれた、大切な一着。

あの時の温もりを思い出すだけで、不思議と胸の奥が温かくなった。


『親友との約束みたいなもんだ。』


あの日、屋上で聞いた言葉が静かに蘇る。

そういえば――。

澪との模擬戦後の帰りに話していた”友達”のこと。

きっと、その人が零の言う親友なのだろう。


(大切な人……なんですね。)


鈴華は小さく目を細めた。


それ以上は考えない。

今はまだ、その約束へ踏み込んではいけない気がした。

まだ知らないことが沢山ある。

アストラル・オーダーのこと。

執行官のこと。

そして――。

黒神零という、一人の少年のこと。


(少しずつでいい。)

(もっと、知っていきたい。)


焦る必要なんてない。

これから同じ学校で過ごしていくのだから。

いつか私も黒神くんの力になれたら。

そんな小さな願いが、胸の奥で静かに芽生えていた。


その時だった。

屋上にいた零が、ふとこちらへ視線を向ける。

鈴華は少し驚いたあと、柔らかく微笑む。

零は不思議そうに首を傾げる。

何も分かっていない。

そんな表情が少し可笑しくて、鈴華は小さく笑った。


(ふふっ。)

(やっぱり、黒神くんですね。)


春風が長い黒髪を優しく揺らす。

約束から始まった2人の”普通の学校生活”は、まだ始まったばかりだった。


――第1章『漆黒の流星』完


挿絵(By みてみん)


第1章完結ということで

活動報告も更新しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ