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第6話 守る力

第 6 話  守る力




—結誓連盟



「それで、蒼真の怪我は?」

「命に別状はないです。陽葵様も少し落ち着かれたご様子です。蓮が付き添っています」

「そうか…」

「それから…襲撃実行犯は影楼の黒影と名乗ったそうです。」

「…黒影か」


廊下を早足で歩きながら、状況確認を求める神代天音。

足を止めた部屋は蒼真の部屋だ。

橘は「私は蓮の方へ行ってきます」と去っていく。

ノックをし、扉を開けるとベットではなく、ソファーで眠る蒼真がいた。


ここ数日、一ノ瀬邸の人員は増やしたが、恐らく夜の警戒を怠らなかったのだろう。

蓮の報告によれば、蒼真の方が先に気づいていたらしい。


「まったく、無茶ばかりする…」

天音の声が聞こえたのか、蒼真が目を覚ます。

「無茶じゃねぇ。多勢に無勢ってやつだ」

と、20人くらい居たぞ。みんな弱かったけど。とボソッと呟く。


「そうか、だがお前が死んでは守る者も守れんからな。程々にしときなさい」

天音は優しく子供に諭す様に話し出す。

「橘からきいたよ、何故、彼女が対象なのか知りたいそうだね?」

全てを見透かしているかのように蒼真の瞳をじっと見つめる天音。


そらせない。

昔からそうだ。

この人の瞳の奥はそこ知れなくて怖い。

でも、優しさも知ってる。


「ああ。…別に理由なんて俺達はいらない。ただ、知りたい。陽葵のために」

真剣な眼差しを俺は天音に返した。


「…蒼真、守る力の話は覚えているか?」

「守る力…?」



開けた窓から夜風が部屋に流れ込む。

天音と自分の髪の毛が風に揺れた。

月明かりに照らされて俺達の銀色の髪は幻想的に輝いた。





—木の上で訓練を抜け出してサボる銀髪の少年。

「こんな所にいたんですか?」

下から声が聞こえた、天音だ。

サボりがバレるのが今日は早かった…。

「戻るよ」

そう言って、木から降りて訓練所へ向かおうとすると

「少し、話しましょう」

天音は穏やかな顔をしていた。

怒られると思っていたから驚いた。

天音が草むらに腰を下ろし、隣に来いと手招きする。

めんどくせぇな。と思いながらも座ると…


「蒼真、君にはね守る力があるんだ」


「ただ、強いだけじゃない」


「人を守り、そして強くする力だ」


「だから、使い方をちゃんと覚えるんだよ」


なんの事だかよく、分からない。

「へぇー、それよりさ」

なんて答えたらいいのか分からなくて、話題を変えてみた。

「蓮がさ、マヨネーズは正義だ。とかって言ってんだけど、あいつ大丈夫?」

天音は思わず吹き出し、肩を震わせて笑い、落ち着いた後にこう言った。



「蓮は、いずれお前にとって、大切な存在になるよ」


風が吹いた。

俺と天音の髪がなびく。

太陽の光に照らされて、銀色の髪が輝いた。


でも、また、分からない。

この世は分からない事が多い。

まぁ、いいや、忘れてしまえ。

でも…嫌ではなかった。








—それは記憶だ。

サボり魔の俺を連れ戻しにくる天音。

ある日、ここなら見つからないだろうと見つけた木の下だ。


「思い出した。守る力…人を強くするって…」

「蓮が大切な存在って…いや、それはない」

頭を抱えながら俺は呟いた。


ちょっと笑いながら天音は

「今はそれでいいんです」と言った。

今夜はゆっくり休みなさいとひと言残し、天音は部屋から出ていく。


1人になった部屋。

1度寝た事で頭がスッキリしている。


黒影、そして守る力。



「黒影の野郎相手はちと、厳しいな…」



呟きは夜の闇に溶けていった。









—結誓連盟 応接室



暖かいはちみつ入りの紅茶が出されたけれど

いつの間にか冷めてしまっている。

いつも通り、蓮が慣れた手つきで入れてくれた。

でも、蓮は少しソワソワしている。

理由はわかってる。

蒼真の事。



「待たせた」

ノックの音の後、がっちりとした体型の男性が部屋へ入ってくる。

ハッと蓮がその男性に詰め寄る。

「橘さんっ、蒼真は?」

「落ち着けよ。…陽葵様、蒼真の事はご安心ください。今は別室で休んでいます」

蓮よりも先に私へ蒼真の安否を報告してくれた、この人は橘さんと言うらしい。

少しほっとし、喉が乾いていた事に気づいた私は紅茶を口にする。

甘い…けど、冷たい。


「陽葵様、お紅茶入れ直して参ります」

橘さんのひと言で落ち着きを取り戻した蓮は再び紅茶を入れてくれようとする。

「大丈夫だよ、勿体ないもん。それに蓮の紅茶は冷めても美味しいよ」

と伝えると、蓮は少し目を伏せて微笑んだ。


「さて、陽葵様はお疲れでしょう。聞きたい事もあるかと思いますが、今日はお休みください。明日、改めましょう」

橘さんはそう言うと、扉から女性の執事さんが現れ、部屋へと案内してもらう事になった。




—陽葵様が部屋を後にして少しした後、天音さんがやってきた。


「待たせてすまない。さて、蓮」

真っ直ぐに天音さんは俺を見つめた。

「黒影…だね?」

「はい、間違いなく黒影と名乗りました」


黒影…結誓連盟No.2の実力者だった男の名だ。

数年前に天音さんに離反し、連盟を去った。

その男が何故、陽葵様を襲って来たのか…。

そして…


「影楼とも名乗ったと言うことは組織的に動いていますね」

「部下も引き連れていました。部下の実力は問題ありません。が、黒影となるとまた1対1での戦闘はこちらが不利になります」

俺でも蒼真でも黒影には勝てない。

2人でかかっても正直、厳しい。

黒影に勝てるのは天音さんだけだろう。


「蓮は正直者ですね。己の力をしっかりと見極め、その上で守る事を優先して考える。…そうですね、橘、奏を呼んでください」

言われると橘さんは部屋から出ていくと外から声が聞こえた。

「おまっ、休んでろよ!」

「寝れん」

と、橘さんと入れ替わりで蒼真が部屋へ入ってきた。


「あれ?陽葵、居ないの?」

キョロキョロと部屋を見渡す蒼真。

「陽葵様なら、休んでもらったよ。」

優しい口調で天音さんが告げる。


「あーまあその方がいいわ。泣かれそうだし」

「そりゃ、お嬢様なんだから、血なんて見たら泣くだろ。お前も血だらけで陽葵様に近づくんじゃねぇよ」

「いや、お前がちゃんと守ったのか不安じゃん。確認だよ、確認」

「てめぇは1回、死ね」

口喧嘩をする俺達を天音さんが笑う。

「影楼については監察部隊に探らせましょう。襲撃で負傷したもの達も補充し、強化しましょう。そして、陽葵さんの身辺警護人として、奏を配置します。いいですね」


「失礼します」

とタイミングよく奏が部屋へと入ってきた。

「奏なら、俺は文句なし」蒼真が言う。

「まぁ、奏なら。言うこと聞くなら」

天音さんがパンっと手を叩いた。

「決まりですね、奏は基本的に執事業務はなしとします。敷地内の見張り達の統括をし、有事の際は蓮、蒼真に合流しなさい。…蓮、奏と喧嘩しないでくださいね」

釘を刺された…。

「蒼真も、蓮と奏の2人が居る事を忘れず、飛び出し過ぎないように」

信頼しなさいとばかりの言われ方だ。

「へ〜い」

ダルそうに蒼真が返事を返した。



—守る。

決意は変わらない。

だが、守るだけでは終わらない。


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