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ヒカリを結ぶ〜守るために命を捧げた執事と、その契約の物語〜  作者: HANA


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第5話 動き出す影

第 5 話 動き出した影



 光の届かない部屋だった。


 窓はあるはずなのに、外の気配は一切感じられない。

 重たい空気が、静かにその場を支配していた。


「――報告を」


 低い声が、闇の奥から落ちる。




 姿は見えない。


 ただ、その声だけで、この場にいる全員の背筋が自然と伸びる。


「対象は現在、一ノ瀬邸にて保護されています」


 男は視線を伏せたまま、淡々と続ける。


「護衛には、結誓連盟の精鋭二名。久遠蒼真、黒瀬蓮、ほか数名が確認されています」


 わずかな沈黙。


 空気が、さらに重くなる。


「……そうか」


 たったそれだけの言葉。


 だが、その一言に、場の温度が数度下がったように感じられた。


「発動は」


「確認されておりません」


「まだ、か」


 小さく呟かれたその声には、焦りも苛立ちもない。


 ただ――確信だけがあった。


 “いずれそうなる”という、揺るぎない確信が。


「監視を継続しろ」


「は」


 一瞬だけ、間が落ちる。


「――まだ、壊すには早い、が…」


 その言葉に、誰もが息を呑んだ。


 壊す。


 その対象が誰なのか、ここにいる者たちは全員理解している。


 それでも、口にする者はいない。


 許されていないからだ。


 部屋の奥で、何かがわずかに動いた。


 だが、その姿を視認できた者はいない。


 見ようとした者も、いない。


 見てはいけないと、本能が理解している。


「……結誓連盟の久遠と黒瀬か」


 その名が、ゆっくりと口にされる。


「面白い」


 わずかに、笑った気配。


 それだけで、空気が凍りつく。


「どこまで守り抜けるか」


 低く、愉しむような声音。


 まるで、すでに結末を知っているかのように。


「一度試してやろう」


 その一言で、襲撃が確定する。


「は」


 男たちは一斉に頭を下げ、静かに部屋を後にした。


 誰もいなくなった空間に、沈黙だけが残る。


 闇の奥。


 そこに“何か”がいる。


 だが、それを確かめる術はない。


 ただ一つ。


 確実に言えることがある。


 ――その存在は、すべてを見ている。









—一ノ瀬邸




いつもと変わらない静かな夜に思える。

でも、胸がザワつく…。

眠れない。と私は部屋から出て、水を飲もうとリビングに向かいだした、その時だった。


「陽葵様!」

蓮の声だ。

少し焦りがある。

だけど動きはいつも通りスマートにスっと私の前に現れ、行き先を塞ぐ。

え?と思う間もなく、キィンと音が響く。


音の方へ目を向けると銀色の髪を振り乱し

複数の敵をなぎ倒していく蒼真の姿。


「蒼真、陽葵様から距離を取れ!」

「わーってるよ!」

と叫びながら、敵を圧倒的に押していく蒼真。


強い。

何が起きているのかも分からないけど

蒼真が強い事だけはよくわかった。


そして、同時に背後に暗い気配。

蓮が後ろの気配へすぐさま斬りかかる。


一瞬、蓮の斬りかかった気配は蒼真の対する者達と合流していた。

私は、恐怖で身体が震え、そのまま床に座ってしまった。

身体が動かない。

言葉も出ない。


そんな私の肩をそっと蓮が支えてくれたのは分かった。



「何もんだ、てめぇら」

俺は敵を睨みつけ、刀を構え問う。


少し間を明け、陽葵を襲おうとした奴が喋り出す。


「我は影楼の黒影」

「主の意志に忠誠を尽くす、壊すために選ばれた者」


それだけ言うと奴らは窓を突き破り、逃走していく。


「クソッ!!」

「蒼真、深追いするな!」

追い掛けようとする俺を蓮が引き止めた。

深追いするべきじゃない。

それより今は陽葵だ。

蓮に肩を抱かれ、震えている。


「陽葵、大丈夫か?」

荒い息を整えながら、陽葵に問う。


「大丈…蒼真、血が!」

言われて気づく、自分の身体の傷。

痛みが急激に押し寄せ、床にがくんっと膝をつく。


「…ッ!…心配ねぇよ」

心配そうに俺の顔を覗き込む陽葵。

平気な顔で今は微笑んでやる事しか出来ない。


泣くなよ、平気だ。


微笑みにそう込めた。


「なぁ、蒼真…黒影って…」

蓮が口を開く。

「あいつだろ」

「…だよな。陽葵様、連盟の方には先程、連絡してあります。1度、連盟の屋敷へ避難しましょう」

まだ震えの止まらない陽葵は、蓮と共に連盟へ向かう準備を始めた。



俺は痛みと疲れでそのまま廊下にドカッと座り込んだ。

1人1人の戦力は低い雑魚だったが、数が多かったな…。


「黒影…ねぇ…天音を問い詰めてやる」




—影が動き出し、日常はなくなった。



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