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ふたりの世界が触れる場所 ―世界の違うふたり、そのあいだに立つ少女―  作者: SHIRUSHI08


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25/25

第25話

「ちぃと、そこのソース取ってくれんか。」

誠一がソースを要求した視線の先にソースがあるのだが、

残念ながら一番近いアイサは、そのことに気付かない。

「おーい!愛沙。ソースや。」

誠一は少し声を強める。

好みの問題だが誠一はソース派である。

それはどうでもよいが、アイサにはわからなかった。

「え、えっと..(...ソース?)」

ソースと醤油の容器の上で愛沙の手が迷う。

「あんた、自分で取れるだがな。」

それを見たばあちゃんが、

誠一に向かって少し呆れたように言う。

「誠一、自分で取ったらええがな。

あんたの手ぇも届くとるだが。」

誠一は「お、おう」と苦笑いしながら自分で取る。

その様子を源治と、美和は黙って見ていた。


食後

「愛沙。洗い物手伝ってよ。」

美和は使い終わった食器を台所に運びながら声を掛ける。

「はい。」

「じゃあ、そっちで洗ったものから濯いで。」

美和はそう言いながら、水道の栓を開き蛇口をアイサの方に押す。

アイサは、蛇口から流れる水を見つめ、

美和はその様子をちらと見てから洗い物を始める。

「今日はどうしたん?

楓ちゃんのとこで、なんかあったん?」

アイサは驚いたように思わず美和に振り向く。

美和は視線を動かさず洗い物を続けている。

「ううん。何もないよ。」

首を横に振りながら否定する。

「ほんなら、学校か?」

アイサは答えず黙って首を振る。

「...そうなん。」

美和はそこで初めてアイサの方を向いた。

「今日は朝から様子が違うけぇね。

……なんかあるんなら、ちゃんと言いんさいよ。」

その声には、

本当に心配する母の気持ちがこもっていた。

「......はい...。」

アイサはうつ向いたまま小さく答えた。



源治は自室で銃の手入れをしていた。

銃口を通しながら、付着した鉛などを落とし、油を注す。

(しかし……今朝の愛沙はどうしたんじゃ……)

猟から帰ってからも、

ずっと愛沙の今朝から様子が気になって仕方がない。

普段なら...何も言わんでもさっさと血抜きをして...

罠を点検して掛け直して...

それが今朝は......(全部、わしが言わんと動かんかった。)

ふと楓の言葉を思い出す。

(……そういや、出る時に妙なこと言っとったな……

『降りる時はここ引くんだで。そしたら開くけぇ』……

なんのこっちゃと思ったが……)

源治は携帯を手に取った。

(楓は……何か知っとるんか?)

楓に電話をかける。

数回の呼び出しの後、

『通話中』の表示とともに、電話口から楓の声が聞こえた。

『お早うございます。どうかしました?おじいちゃん。』

いつもと変わらぬ元気な声。

源治の緊張がフッと少し緩む。

「あー お早う。さっきの今で済まんが、今日時間とれるかいな?」

『...』

すこしの間が開く。

『……え、えーと……そ、それって……急ぎなん?』



一方その頃、美和も電話をしていた。

「もしもし?みさこさん。」

『はい?どうしたの。美和さん』

「いえ、昨晩は急に愛沙がお邪魔して……

その、お礼を言おうと思って。」「いいえ。昨晩は急に愛沙がお邪魔して...」

『ふふふ。ええのよ。お互いさま。

昨晩はね、部屋で何やら遅くまで二人でやっとったみたいで。』

「...夜遅くまで。」

『なんかクラブのことで話し合いがあったみたいよ。』

「クラブ? ...って弓道部の?」

『そうそう。

でね、なんか二人ともそわそわしてて、落ち着かん感じでねぇ。』

「...落ち着かない。」

『それで今朝は早くからおじいさんが来て……猟だったんよね?

大丈夫だった?』

「ええ……さっき戻ってきて。

なんか疲れてるのか、ぼーっとしてるみたいで。」

『そういや夕べもね、なんか話が噛み合わんかった気がするんよ。』

「...」

『あ、ごめんね。

ちょっと普段と違うなぁと思っただけで。』

「いえ……そうでしたか。

それじゃ、またよろしくお願いしますね。」

『はい、いつ来ても大丈夫よ。

それじゃあね。』

「こちらこそ。失礼します。」

電話を切った美和の視線は、

静かに愛沙の部屋へ向けられた。


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