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「おはよう~」
「千香、おはよう。よく寝たな。」
「うん~」
目を擦りながらよろよろ。まだ少し眠たいな。
「千香、昨日叔母さんを呼ぶって言ってたけど、呼べるの!?」
お兄ちゃんが勢い良く聞いてくる
「え1?呼べないの!?」
目がぱっちりと開いた。
なんでそんなこと聞くんだろう?マオちゃんを呼べるんだから、呼べるんじゃないの?
「呼べないのかって聞かれても…分かんないけどさ」
「マオちゃんが呼べるんだから、同じじゃないの?」
「う~~~ん」
お兄ちゃんは頭を抱えた。
「千香はマオさんを『魔王』として召還してるから、葉子叔母さんはそういうのと違うし……」
ぶつぶつと一人呟きながら何やら紙に書き出しているお兄ちゃんを横目に、イチゴジャムをたっぷり塗った食パンにかぶりつく。
甘くておいしい。
※※※※※※※※※※
「ね~、まだ~?」
「もうちょっと、あと三十分くらいよ」
「え~~~?」
お父さんの思いつきでお婆ちゃんのお家に行くことになった。
お婆ちゃんとお爺ちゃんに会えるのはうれしいけど、車で移動するのは嫌い。
「千香ちゃん、翔くんよく来たね」
お婆ちゃんとお爺ちゃんがニコニコと笑顔で迎えてくれる。
「さあ、中にジュースがあるから飲んでおいで」
「やったね、ジュース!!」
靴をぴょんととばして中へ入る
ちらりと後ろを向くとお父さんたちはなんだか真剣に話しているみたい。
※※※※※※※※※※
すこし速い晩ご飯のあと、全員が揃ったリビングで
「じゃあ今から、叔母さんを『しょうかん』します!!」
いつものお絵かきノートとクレヨンを上に掲げると、お婆ちゃんとお爺ちゃんからパチパチと拍手がくる。いつものようにすれば問題ない。
「わたしのねがいをかなえたまえ、いでよ、おばさん!!」
バッと立ち上がって、くるりと回り、床においた魔法陣へ手をおいた。
「………あれ?なんで?」
魔法陣は光らず、なにも起こらない。
「昨日はマオちゃんも呼べたんだよ!本当はできるよ!!」
びりりとノートを破りもう一度今度はもっと丁寧に書き直し、丁寧に舞った。
だが、魔法陣からおばさんがでてくることはない。
「ほんとだもん!できるもん!」
何回書き直しても、何回舞っても、おばさんが出てくることは無かった。
「うえ”ぇぇぇん!!でぎるも”ん”~~~!!」
とうとう顔を上げられずに涙があふれてきた。
みんなに嘘をついた様な気分で、本当はできるのにもどかしい気持ちでいっぱいになった。
みんなが嘘なんて思ってないと慰めてくれるけど、全然涙は止まらなかった。
※※※※※※※※※※
次の日、目をパンパンに腫らせて、お父さんたちが車に貰った野菜を積んでいるところを見ていた。
あれから何回やっても叔母さんが出てくる気配はなかった。
わたしはもう一度考えて見ることにした。
――マオちゃんの魔法陣はマルの中にお星様、じゃあおばさんは…。
ちらりとおばさんの写る写真をみる。お花と一緒に笑顔のおばさん。
なんとなく思い浮かんだ形に魔法陣を描く。
「マルの中には四角…それから三角の上向きと下向き」
――じゃあ呪文は…マオちゃんは『マオー』でおばさんはなんだっけ?『セージョ』だっけ?『ヨーコ』って名前だから『セージョ ヨーコ』で良いのかな?
「おーい、千香帰るぞ~」
すぅっと息を吸って、おばさんを思い浮かべる
「わたしのねがいをかなえたまえ、いでよ、『セージョ ヨーコ』!!」
バッと立ち上がって、くるりと回り、床においた魔法陣へ手をおいた。
怖くてなかなか目が開けられない、すると頭を撫でるやさしい手。
恐る恐る目を開けると、写真でみた見たあの人。
思わずぎゅっと抱きつく。するとぎゅっと帰ってくる。
「来てくれてありがとう!」
「呼んでくれてありがとう!…お父さん、お母さん、お兄ちゃん、里香!ひさしぶり!!」
後日編も書きたい。