■86 年初めの会議
厳しい寒さが少し落ち着き、昼間が暖かくなる時期。そして、1年が終わり新しい年となる年初めに王宮には大勢の貴族達が赴いていた。
その理由は、これから新しい年の始まりを祝うためのパーティーで陛下にご挨拶をし、その後に上位貴族の者達と王族の者達とでの会議があるためだ。
王太子である私と国王陛下は、今から会議の会場となる部屋に向かっていた。
「さて、初めての会議だからな。ステファニー殿はいじめられていないだろうか」
「陛下、彼女は貴族になりたてですがそんな事でくじけるような者ではありませんよ」
「はっはっはっ、フレッド、お主の言う通りだな」
確かに、これは王族と上位貴族が集まる会議だ。彼女は賢者ではあるが、男爵でもある。きっと、錬金術に長けているだけの下位貴族が来る場所ではないと思う貴族も多々いるだろう。
だが、味方となっているアスタロト公爵やモルティアート侯爵もいる事だ。何かあれば助け舟を出してくれるだろう。
さ、早く行ってやらんとな。と陛下は楽しそうだ。
もう既に、着席している貴族達。叔父上も、伯母上も揃っているようだ。我々が最後か。
今日の議案は多々ある。建国記念日、陛下の生誕祭、そして私の成人の儀もある。その他にも、色々とイベントが待っている。
そして、各地に散らばっている王宮術師達の報告で上がっている問題も多々上がっている。
「さて、海上運搬の件ですが……」
「報告は受けている、出たのだろう」
「はい、リヴァイアサンが」
最近出没してきたリヴァイアサンと呼ばれるモンスター。
出没地が、丁度海上運搬ルートに入っているのだ。そのせいで、多大な被害が出てしまい今は運搬を止めている。だが、貿易を結んでいる島国のミラド王国との貿易が滞ってしまっている状態だ。困ったものだな。
ルートを変えようという案も出たが、リヴァイアサンは巨大な為動くだけで波が逆立つほど。きっと大回りをしたとしても危険なのは変わらない。
「そういえば、賢者殿」
「はい?」
「賢者殿は、ウガルルムを退治したと聞きましたぞ」
「私も聞きました、巨大モンスターをいとも簡単に討伐したと」
「なんと!」
「ははっ、そんな賢者様にこのモンスターを退治してもらえたら嬉しいのですがね」
何とも馬鹿な者達だ、上位貴族が聞いて呆れるな。まぁ、この会議が始まる前からそう言ってくるとは予測していたが。
「リヴァイアサンですか、いいですよ」
その言葉に、周りは言葉を失った。
彼女は確かに言ったのだ、リヴァイアサンを退治してもいいと。
それから、どよめいた。あのリヴァイアサンですぞ! そう確認しても彼女は大丈夫だと言う。
周りの悪ふざけをした貴族達は、後悔していることだろう。あんな化物に賢者が立ち向かうだと? そんなもの、ただでは済まされない。最悪海の底に落とされ命を落とす可能性もある。
大賢者のいないサーペンテインにやっと賢者が現れたというのに、失ってしまえばこの国にとって大きな損失となってしまう。そんな事は意地でも避けなければならない。そう思っているのだろう。
「ハッハッハッハッ!!」
やる気満々となってしまった彼女の態度に隣の陛下は高笑いをして、全員が陛下に視線を向ける。
「さすが、ステファニー殿だ。では、何か必要なものはないか?」
もう既に陛下は許可すると決めたようだ。その質問に彼女は何も要らないと答えた。
「討伐の日は、民に海に近づかないようご配慮して頂ければ」
「よし、分かった」
異を唱えようとしていた者達は、陛下のこの決定に何も言えなくなってしまい黙り込むことしかできなかった。まぁ、彼女がそう言うのなら大丈夫なのだろう、というのが私の意見だ。彼女はいつも思いもよらない事をする。まさかこんな事に了承するとはな。ククッ。
では、すぐにでも取り掛かりましょう、と彼女が答えてこの件は終了した。
そして数日後、まさかと思っていた貴族達は度肝を抜かれてしまったのである。
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