■45 アスタロト公爵家
とてもいい天気の朝。
昨夜、何かがあったのかは知っているけれど、本当にあったのかが分からないくらい部屋から出ても変わったところが見つからなかった。
――公爵様に会うまで。
ジェフリーさんに、昨日皆で夕食を取った部屋に案内された。中に入ると席に座る公爵様。だけど、他の人がいない。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。よく眠れたか?」
「はい、まぁ……」
「そうか、ジェフリーが何か粗相をしでかしてないか心配していたが、安心したよ」
「公爵様」
ジト目で、笑顔の公爵様を見るジェフリーさん。とても仲良しらしい。
「さて、何か聞きたそうだな」
料理が並べられ、食べ始まる。
聞きたい事。沢山あるけれど、今一番気になっている事、それは……
「……子爵様達は?」
「本来いるべき場所にいる」
本来、いるべき場所……?
「君なら分かると思うのだが」
「……?」
「ここの地域を見た者になら」
「!?」
高すぎる税金、捨て子の多さ、中々改善しない町の現状。
「牢屋、ですか」
「あぁ、正解だ」
「……」
「人身売買の件、君が解決したと聞いた。あの子供達は子爵に引き取られたことになっている」
「え……でも、」
「子爵は、子供達の養育費を横領していた」
孤児院を設立させている最中だという理由で引き取ったらしい。その件に関わった役員の中に、子爵が金を掴ませ味方につけていた者がいて決定となってしまったらしい。
養育費をぶん取って後はポイとか、酷すぎる。
「その他にも、違法な取引が数々あった。あのモノリア伯爵の偽装硬貨の件にも関与し受け取っていた事もある。そしてその件に、夫人や令嬢達も関わっていた。皆仲良く牢屋行きだ」
「もしかして、公爵様はそれが目的でここに?」
「あぁ、王からの命だ。私はアスタロト公爵だからな」
王からの命。という事は、それがアスタロト公爵家当主であるこの方の役目だという事か。
「これから、私の部下達がここに到着する。後はその者達に任せて私達は一足先に首都へ帰ろうか。これから首都でやる事が増えた。あぁ、あの子供達はとりあえず私が保護しよう。だから身分証などの件は任せてくれ」
「分かりました、お願いします」
「あぁ。ではすぐに帰る準備をしようか」
そうして、私達は食事を済ませた。準備と言っても、私の荷物は全て収納魔法陣の中だからもうすぐにでも帰れるのだけれどね。
用意された魔鉱車に乗せてもらえることになり、公爵様とご一緒することになってしまった。
ここから首都まで一日か。そんな長い時間ずっと公爵様と一緒だなんて。乗せて頂いている身でなんてこと思っているんだと頭の中からすぐに消し去ったが。
「……あの、」
「どうした」
「ドラグラド領は、これからどうなるんでしょうか……」
「そうだな、とりあえず王宮の管轄となるだろう」
「そう、ですか……」
「君はこの領地の現状を知っているから、そう思うのも無理はないな。人口もあの者が当主となってから急激に減っている。高すぎる税金のせいで領民には金もなく、湿地帯があるお陰でモンスターも出没することも多い。食事も、水が良くないせいで食事をする店もなくあまり人が立ち寄らない。
まぁ、これ以上言ってもきりがないな。それ程問題を抱えているという事だ」
「……」
こんなに苦しんでいる人達が目の前にいたら、自分に出来る事は少ないけれど手を貸したいと思ってしまう。
マルギルさんは、手を出していい所といけない所があるだろと言っていたけれど、自分で出来るところが少しでもあるのなら……あの人達の役に立ちたいという気持ちが抑えられない。
「助けたいと思うか」
「……はい」
「少々骨が折れそうだが、それでもやりたいと思うか」
「はい」
「そうか」
公爵様は、そう言い微笑んだ。
一体、どう思ってそんな顔をしているのだろうか。




