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大賢者の弟子ステファニー  作者: 楠ノ木雫


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■39 ドラグラド地方


「分かりました、受注いたします。お気をつけていってらっしゃいませ」


「ありがとうございます」



 今日もギルドの方へ赴くと、指定依頼が入っていた。依頼主は、予想通りマルギルさん。内容は、いつもの採取ではなく護衛だ。珍しい事もあるものだなとマルギルさんの店へ向かったのだ。





「ドラグラド地方ですか、ちょっと遠いですね」


「おう。そっちにあるソビエラを採取しに行くんだが、なんせあの湿地帯に行かにゃならんからなぁ」



 湿地帯のモンスターは、人間を見た瞬間逃げるか襲ってくるかの2パターン。当然、湿地帯の近くには人間は住んではいないから休む事も出来ないし野営なんて出来やしないのだ。



「わざわざマルギルさんが行くんですか?」


「何だい、邪魔だってか?」


「そうは言ってないですよ」


「本来の目的はソビエラだが、あそこの湿地帯には術師にとってのお宝がわんさかあるんだ。何か見つけたら採取しようと思ってなぁ」


「あぁ、成程」


「出発は明日でいいか?」


「構いませんよ」



 そういえば明後日は王宮に行く予定があったな、少し離れた土地だから1日で帰ってこれないな。これから王宮に行って予定をずらしてもらおう。あぁ、あとジョシュアはお留守番かな。ルナンさんにお願いしなきゃ。









「あらあら、どうしたのジョシュア君。ぶすっとしちゃって」


「えぇと、一緒に行きたいってきかなくて……」



 次の日、ルナンさんのお店に。


 昨日の夜から一緒に行きたいって何度も何度も私に言ってきて。でも危険な所だから連れて行けない。ちょっと強引ではあったかもしれないけれど、何とか言い聞かせたわけだ。



「あれ? ステファニーさんじゃないですか」


「こんにちは、アルさん」


「!?」



 アルさんが来たことにジョシュアが反応した。実は、アルさんにはだいぶ懐いているようなのだ。王宮などで何かとアルさんに会うことがあって、慣れたらしい。



「あぁ成程。ジョシュア、ステファニーさん帰るまでちゃーんと待ってような?」


「……」



 お、ばっと顔を上げた。こくっと頷いた。凄いアルさん!



「じゃあ、お気をつけていってらっしゃい」


「気を付けてねー!」


「ありがとうございます」



 3人に見送られながら、マルギルさんの店に足を向けたのだった。


 はやく帰ってくるから、ちゃんといい子でいてね。







「おはようございます、マルギルさん」


「おう、んじゃよろしく頼むぜ」



 いつも見る格好と違った、装備のされた格好に見慣れない。


 お前さんいつもそんなぺらっぺらなので行ってんのかって言われちゃったけれど、まぁ本当の事だしね。装備すると動きずらいし。



「移動は?」


「魔鉱車だ」


「魔鉱車ですか……魔鉱車でどれくらいでしょう?」


「1日っつった所か」



 1日か。まぁ遠いからしょうがないけれど……


 ルシルちゃん、そう声をかけて目線を移すと、理解したのか身体を大きくした。二人の大人が背に乗れるくらいの大きさで。



「おいおい、まさか……」


「ルシルちゃん、速いですよ?」


「ちょっと待て、」







 そうして、1日で着くはずの道のりを、わずか半日で到着することが出来た。


 年寄りになんて事させんだ!! と、いつもなら年寄り扱いすんなって言っている人にそう怒られた。いいじゃないですか、早く着いたんだから。早いに越したことないでしょ。


 それにしても、



「人が少ないですね、ここ」


「まぁそうだな。近くにはモンスターがわんさかいる湿地帯があるんだ。仕方ねぇっちゃ仕方ねぇ」


「どこに行くんですか?」


「ちったぁ年寄りを休ませろやっ!!」


「あはは」



 こっちには人が多いかな、そう思い進んでみるとお店を発見。成程、ここは鍛治が主流なのね。そんなお店が多い。



「そこのお嬢ちゃん、パンはいかが?」


「パン?」


「マコメの入ったパンだよ。どう?」


「へぇ、じゃあ2つください」


「まいど」



 木のお盆にパンがふたつ。たぶん、手で持ってけって事だよね。首都だと紙袋だけれど、紙ってそんなに高かったっけ? でも、言っちゃ悪いけれど売れてそうにないお店だし……



「ここって鍛冶屋が多いんですね」


「そりゃあね。貴方、ここ初めて来たんでしょ。宿とか飲み屋が全然なくて吃驚した?


 ここは湿地帯が近いくせして水が美味しくなくてねぇ。だから向こうの川から水を汲みに行かなきゃいけないんだけど、汲むにしてもお金がかかっちゃうのよ。だから食より鍛冶が主流になってるの。まぁでも、収入はこの町の現状を見れば分かるでしょ?」



 人数からしても一目瞭然。恐らく、ここで作られる武具達は首都へ卸されるのかな。こんなに人がいないんだ、客が直接来るわけではないという事か。



「それに何より領主があんなんじゃぁねぇ」


「あんな?」


「まぁ、簡単に言えば能ナシお坊ちゃんさ。先代はあんなに私達の事良くしてくれたのに、息子が当主になった途端に税金ばかり上げて金取りしてきてね。私らの事なんて何も思っちゃいないのよ」


「その方ののお名前は?」


「ドルード・ドラグラド子爵よ」


「ドラグラド子爵……なるほど、教えてくださりありがとうございます」


「え、ちょっと、代金多いじゃないか」


「教えてもらった分です、では」



 と、その店を後にしたのだった。




「おめぇどこ行ってやがったんだ、探しちまったじゃねぇか」


「あはは、パンを買ってただけですよ、ほら」



 ドラグラド子爵、か。




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