■38 ジョシュアの鍛錬開始!
「よし、そろそろ錬金術の実技の練習をしようか」
「いいの!?」
「うん、もう殆ど回復しているからね。始めても大丈夫でしょう」
やったぁ! と、とっても嬉しそう。今まで知識ばかりを教えていたからね。ここまで喜んでくれるとこっちまで嬉しくなっちゃう。
「じゃあ、私からプレゼント」
「?」
手渡したのは、細長く彼の身長より少し低い棒のようなものが入った布の袋。何が入っているのだろうかと考えた様子の彼が取り出すと、入っていたのは……
「杖……?」
「そう、今まで使っていたのはジョシュには合っていなかったからね。これからこれを使ってくれると嬉しいな」
「うん!」
うんうん、喜んでくれているようで良かった。私も、このお師匠様が用意してくれた杖を貰った時の嬉しさは今でも覚えている。これは、お師匠様からの初めてのプレゼントだったからね。今でも大切に使わせていただいています。
さて、ジョシュアはどこまで理解しているかな。
彼は、間違いなく錬金術の天才。けど、その力を今回のように悪用されてはいけない。
だから私は、この子に錬金術の正しい使い方を教えていかなければいけない。それが私の義務だ。
確か、あの錬金術師に教えてもらったって言っていたよね。なら、無難な所から行こう。
……と思ったら。
「待って、錬成で必ず使われるこの液体は?」
「……お水?」
「……魔法の基本である四大元素と呼ばれる物質は?」
「……?」
「な、るほど……」
「?」
何となーくでやっていたらしい、初級とかぜーんぶ飛ばして偽装するために必要なことだけ教えていたという事だ。何という教え方。
というか、それであそこまで精密に作り出せていたジョシュアは本当に天才ね。
「じゃあ、最初から教えるね。錬金術とは、物質に変化を持たせて違う物質を作り出すこと。これは分かるね?」
「うん」
「この世の全ての万物は、もとは同じ物質だったの」
「ぜんぶ?」
「そう、全部。錬成では、万物を浄水でその物質に戻してから、全てを混ぜ合わせ新しい形へ再構築させるの」
「さいこうちく……」
「そう。形を変えて新しく作り替えるという事よ。けど、戻すのは簡単。でもまた作り出すのは難しい事なの」
再構築させるために必要なものは、その材料となる素材とマナ、陣を上手く結び合わせる事。これに失敗すれば爆発するか、全く違う失敗作が生まれるか。
でもこの子はちゃんと理解していないまま複雑な物達を結びつけることが出来た。
だけど、それはあの直接手の甲に刻まれた陣が無理矢理引き出していたからでもある。
陣とは自身の中にあるマナを外に出す出口である。あの陣は私が塞いだから、これからは自分で開いて外へ放出させる練習をする必要がある。
「さ、基礎から行こうか」
「はいっ!」
うんうんいい返事。教えがいがあっていい。
さて、私はお師匠様に教えてもらった時のことを記憶から捻り出していこう。
けれど、それは750年くらい前のことだ。それにお師匠様の教え方は、何というか、うん、雑だった。
『こんな事も出来ないのか』が口癖。『説明せずとも一度見ればできるだろう』もだったな。いやいやいや、そんな無茶な。といつも思っていたかな。懐かしい。
まぁ、教育には厳しさも必要なのはわかる。けれど、心をズタボロにされるのはだいぶ辛い。
「じゃあこの陣から行こうか」
「はいっ!」
だから、私はよく出来たらちゃんと褒めることにした。
やっぱり、そっちの方がいいよね。まだこんな年齢だし、今まで貰うはずだった愛情をちゃんと与えてあげるべきだと思うしね。
因みに、この国の術師達は陣の書で陣を使用するけれど、私は頭に覚えさせられた。頭で想像しマナで作り出す。これが基本だった。
紙を使うのは実に簡単だとは思うけれど、頼っていては上達するのには難しいからね。慣れてしまっては直すのが難しい。
「さっき聞いた四大元素の物質。それは、火、水、風、土の四つとなっている。
そしてそこから、雷だったら氷だったりと変換させていくの」
『展開』
そう唱え陣を掌に。
『Ignis』
『Aqua』
『Ventus』
『Terra』
四大元素である四つを出現させた。
それを見たジョシュアは、両手の掌を上にして出した。
『我に蓄積するエネルギーよ_____』
『火よ』
『土よ』
『氷よ』
私に習ってジョシュアも展開させていく。けれど、これは恐らく偽装技術で使用したものだけなのだろう。
「氷は、水から変換させたもの。それが出来るなら水の状態で出現するのは簡単だよ。水を想像して」
私は目の前に水を出現させジョシュアに見せる。
『水よ……!!』
すぐに出現することが出来た。うん、優秀ね。頭を撫でてあげるとすごく嬉しそう。
「さ、今日中に四大元素はクリアしようか」
「うん!!」
この子が基礎からきちんと学び錬金術をモノにした時、恐らく彼は偉大な錬金術師となるだろう。
私は、そう悟った。




