■22 ローレンス君
今日もいい天気。採取するのにとってもピッタリな日だ。
早く準備してギルドに行こう、そう思っていた時。
コンコンッ
「たのもー!!」
元気な少年が訪ねてきたのだ。15~16くらいの子だろうか。どこかで会ったこと……いや、ない。……と思う。じゃあ、どうしてここに??
「どなたでしょう?」
「俺、あ、僕はローレンスです。凄腕錬金術師の方ですよね? 僕を弟子にしてください!!」
……ん? 弟子??
キラキラした目で此方を見てくるローレンス君。まるであの王宮術師さん達みたいな。期待したような眼で見ないで欲しいな。
「私は、弟子を取るほど優れた術師ではないの。ごめんね」
「いえ!! モルティアートを救ったって聞きました!! すぐに原因を突き止めて素晴らしい錬金術を駆使して解決されたとか!! ぜひ弟子にしてください!! お願いします!!!」
こ、困ったなぁ……
と、とりあえず中に入れるか。このまま話してたら近所迷惑で目立っちゃう。
「ごめんね、水しかなくて」
「ステファニー様からお水を貰えるだなんて嬉しいです!!」
……どうしよう。困ったな。帰って、というのは可哀想か。
「あの! 僕の錬金術を見て頂けないでしょうか!」
素言いながら持っていた袋から出してきたのは錬成陣紙。そして、ミルド石。
『我に蓄積するエネルギーよ_____』
『大地を照らす火よ』
『構築せよ。______錬成』
ミルド石と、火魔法を組み合わせ浄水で飲み込ませる。出来上がったのは、カルト石。白と赤の縞模様の石だ。うん、上手くできている。そして、
『大地を駆ける風よ』
『構築せよ。______錬成』
次は緑色のトルガ石。先程錬成させたカルト石と風魔法で錬成し作り出したものだ。そして次は、
『大地を潤す水よ』
『構築せよ。______錬成』
シガド石。水色の石だ。次は、
『大地を作る土よ』
『構築せよ。______錬成』
最後には、モルラ石。土魔法と合わせて錬成し出来上がったものだ。
どうでしょうか!! と出来を聞きたいようだ。
「上手くできていると思うよ。けれど、時間がかかりすぎだね。もっと自身の中にあるマナを意識していけると上手くできると思う」
「意識、ですか」
「どこにマナのコアがあって、マナが自身の身体を通っていって、杖から陣に流れていくか。それを理解しなきゃ」
「な、なるほど……!!」
「あとは……魔法だね。魔法が不安定で弱い。ローレンス君の場合錬成までの時間が長いから、錬成がちゃんと完了するまでの時間、ちゃんと維持できるようにしなきゃ」
「は、はいっ!! でしたら、まずは魔法をという事ですか」
「うん、魔法が維持できなかったら錬成も上手くいかないから」
「分かりました!! ありがとうございます!!」
この年齢でここまで出来るなら、将来が楽しみだな。
そんな時、
コンコンッ
またまた来訪者。
「やっと見つけましたよ!! 坊ちゃま!!!」
「うげぇ」
白髪の、70代くらいの男性。坊ちゃま、というのは……この子は貴族なのかな。この様子からすると……抜け出してきたのかな?
「申し訳ございませんでした、坊ちゃまが……」
「い、いえ、そんな事ないですよ」
坊ちゃま!! 帰りますよ!! と言いながらローレンス君の腕を掴み強制送還。いやだいやだと言われながら玄関前に停まっていた魔鉱車に乗せられて行ってしまった。何とも騒がしかったな。
けど、楽しい時間だった。頑張ってね、ローレンス君。
と思ったら。
「こんにちは! ステファニー様!」
2日後に来たローレンス君。ニコニコ顔で家に入ってきた。
「まさか、抜け出してきたの?」
「大丈夫ですよ。それより、聞きたいことがあるんです!」
「な、何かな……?」
言わずもがな、今回もこの前のお爺さんが迎えに来た。ガミガミ怒られながら。
それは、3回も続いた。根気強く抜け出してはここに来るローレンス君。それだけ、錬金術が好きなのだろう。ちょっと嬉しい。
コンコンッ
あ、来たかな。そう思ったけれど、違う人が立っていた。
「毎回お世話になっております、ケルトニア伯爵邸で執事をしている者です」
いつも連れ戻しに来るお爺さんだった。
話があるみたいで、中に招き入れた。
「毎度毎度坊ちゃまが申し訳ありません。何か粗相をしてはおりませんか?」
「全然、むしろ錬金術の話が出来て嬉しいです」
「そう、ですか……」
ん? 何だろう、困った顔だ。視線を下に下ろしてしまっている。何かマズい事でもあるのだろうか。
「坊ちゃまは、嫡男でありこれから御父上様の後を継がなくてはなりません。その為に、今のうちから教育を受けて頂かなければいけないのですが……」
あぁ、毎回毎回サボっては抜け出してここに来ているって事か。それは、申し訳ない。
「私にその話をするという事は……」
「……はい、お願いいたします」
ここに来ても帰るよう言ってほしいという事か。もう来ちゃダメとも。
ん~~~。錬金術が好きなのはよく分かる。けれど、やらなければいけない事をほったらかしにして好きなことだけしかやらないというのは駄目だ。しかも、彼は16歳。色々と学ばなければいけない。
「分かりました」
そう、答えた。
「こんにちは!!」
次の日、またもや来たローレンス君。
「ローレンス君、今日も授業サボったの?」
「……じいですか?」
「駄目だよ、やらなきゃいけない事をほったらかしにしちゃ。好きなことだけやっていいことは無いんだよ」
「……」
分かっているけれど、でも錬金術がやりたい。もっと知りたい。そんな気持ちが見て取れる。
『展開』
「えっ!?」
錬成陣を展開。
〝ケシャロールの種〟
『Aqua』
〝ワロドーラの種〟
『Lux』
『Creare』
陶器の鉢に、〝ティフォラシーラ〟という植物が植わっている状態のものが出来上がった。
細く茶色い幹が私の腰の高さくらい伸びており、葉と花はついていない状態の植物だ。
「す、ごい……魔法混合錬成……しかもこんなに組み合わせているのに、凄く精密……!」
そして、隣にコラミア石を静かに置いた。
「ローレンス君、君は賢いから分かるはずだよ。これは君が持っていってね」
「!?」
「それと、今君が使っている錬成陣紙。それを使っていても成長はしないよ。――じゃあ、バイバイ」
『Ventus』
「うわぁぁぁぁぁ!?」
風魔法で、錬成したものと一緒に彼を外へ。とりあえず、君は出禁だ。
頑張ってね、錬金術師くん。
君ならわかるはずだよ。ティフォラシーラと、コラミア石を渡した理由が。




