■11 北の森
「ステファニーさん、指定依頼が来ていますよ」
「指定依頼、ですか?」
「はい。依頼主からステファニーさんにと」
こちらをどうぞ、と依頼書を渡された。
内容は、採取依頼らしい。って、依頼主の名前の欄に知っている名前があるじゃないですか。
「マルギルさんじゃないですか」
「知り合いですか?」
「はい……えっ」
依頼内容、採取するのはあのミラノルキノコ。これは採取困難なもので、しかももう一つのラミラキノコと間違えやすい。これは意地悪か。
「これは、直接納品という事になっていますのでよろしくお願いしますね」
「あ、はい。分かりました」
倍にして持っていってあげようか。それくらいやってもいいよね。何か言われたとしても、私が使えばいいだけだし、
あと、忘れずに討伐の依頼も一緒に受注しギルドを後にした。
特定ポイントに到着し、ずらっと並ぶキノコ達を発見。木の根本に大量に生えていた。
色や形が似ている為に鑑定スキルを発動。ついでに似ている方も採取して、こっちは錬金術の素材として集めておこう。
「ミラノルキノコって言ったら、錬金術では布や装飾品として使うことが多い素材ね」
未開拓地で、自分の服を作るのに錬成した事を覚えてる。針仕事には苦戦したけれど、まぁ腕は上達したと思う。これをマルギルさんのお店で注文した方は、きっとそういった関係の仕事をしている人なんじゃないかな。
さぁ、これで最後ね。丁度いいタイミングでルシルも帰ってきて。そんな時、大きな地響きが森中に響き渡った。
とても大きな地響きだ。
「この方向は、北の森かしら」
確か、北の森は立ち入り禁止区域に指定されていたはず。瘴気が濃くなってしまっていたから。
こんなに大きな地響きがするという事は、それだけ大きなモンスターが暴れてしまっているという事。すぐにルシルの背に乗り向かった。
等間隔で埋め込まれた橙鉱石で作られた結界で封鎖されていたけれど、魔法で穴を開けて侵入。ちょっと悪い気にはなったけれど、仕方のない事だ。
見えてきたのは、大きな獣。あれは、ウガルルム。暑いと思ったらお前か。
ウガルルムとは、炎を纏った巨大な獅子の獣だ。だけど、何だか興奮状態のように見える。この瘴気が原因だろうか。
そして、周りにも小さめだけどモンスターが複数。数は……6体か。
その中に、モンスターの周りに人が見える。あれは、王宮騎士団!? しかもアルさんがいる。という事は、王国第二騎士団か。
『展開』
手には、〝カヴェアの種〟
『Terra』
そして、
『Creare』
杖を地面に強く突く。そして、地面から伸びてきたのは、太く長い鉄縄。それは、ウガルルムを、そしてモンスター達を突き刺していく。
それに驚いたのか騎士団の皆さんがこちらに視線を向けてきた。
「えっ」
「じっ、地面から、鉄……!?」
「直ちに後退しろッッッ!!」
皆ボロボロ、怪我人多数。この指示は正しい。
私に気が付いたアルさんがこちらに駆け寄ってきた。彼もモンスターから攻撃を受けたのかボロボロではあるけれど、血は出ていない様子だ。
「ステファニーさん!!」
「早く下がってください」
「でも、」
「いいから、ここから退散してください」
「……分かりました」
何かを言いたそうなアルさんが、皆を後退させる。
人払いが済んだところでモンスター達に目をやると、周りの小さなモンスターは先程突き刺した鉄縄で息絶えていた。けれどやはりウガルルムはそうはいかないらしい。
『Terra』
土魔法を展開。ウガルルムを囲う。
一番厄介なウガルルムは炎の属性、なら対極にある水魔法が効果的だ。
〝カヴェアの種〟
『Aqua』
『Creare』
〝積乱雲〟
瞬時に出現させた積乱雲から、大量の聖水の豪雨を降らせウガルルムの炎を消し始める。
さぁ、最後だ。
『Tonitrua』
積乱雲からウガルルムに向けて放たれた黒い雷に撃たれ、奴は息絶えたのだった。
「大丈夫ですか!!」
少し離れた場所で騎士団達が固まっていた。怪我人多数だ、火傷多数で瀕死の兵達もいる。
収納魔法を展開。中から大量のポポルコ草をどっさり取り出す。
「えっステファニーさん!?」
『展開』
『Creare』
大量のポポルコ草、そして大量の浄水を混ぜ合わせてHP回復上級ポーションを大量生成。
「アルさん、怪我人の口を順番に開けてください」
「えっ!?」
「このまま突っ込みます」
周りの兵士さん達も吃驚顔で戸惑っている、そりゃそうだ。まぁちょっと強引だけど薬瓶生成して詰めてなんてやってられないんだからこれの方が効率的。
お願いしますと頼むと動ける軽症の騎士さん達が協力してくださって適量を風魔法で突っ込んでいって。当然皆さん咳き込んでいたけれど、許してください。
そんな時に私より一番遠くで寝かせられている、とある怪我人の周りに群がっていた人達を発見。
団長! 団長! と呼びかけている人だかりだ。
直ぐに行くと火傷の跡や腹の切り傷が酷い事になっている人が寝かせられていた。
「錬金術師様ッ!! 団長をッ!!」
隣にいた兵士は、俺のせいでと嘆いている。
これは、上級ポーションでは無理だ。そう思いながらポポルコ草、そして収納魔法を展開させて取り出したメノウ鉱石を取り出す。
水魔法_______
『Aqua』
『Creare』
出来上がったのは、最上級HP回復ポーション。それを、団長さんの口に流し込んだ。
見る見るうちに火傷の跡や切り傷が治っていき咽だした。良かった、効いた。
反対側にいた先程まで嘆いていた兵士のお兄さんは、涙を流していた。何度も何度もありがとうございますとここにいる全員にお礼を言われ、他の怪我人にも回っていないからとその場を抜けた。
団員さん達にとても慕われている団長さんなのだろうね。治せてよかった。
「……あら?」
「え?」
「どうかなさいましたか?」
「……あの人、甘党お兄さん?」
「甘党?」
「あ、いえ、アルさん次は?」
「あ、まだこっちに……」
団長さん、って言われてたよね。あの人。
まさかこんな所でまた会うとは。甘党のお兄さんに。
そして、動けるようになった人達で皆を王宮へ運ぶことが出来た。被害は出たけれど、死者は出なかったらしい。良かった。
アルさんから、王宮にと言われたが、私はただの通りすがりの錬金術師だと言っておいてくださいと一言残し、依頼されたマルギルさんのお店に直行したのだ。
「何だい、ボロボロじゃぁねぇか。何か出たんか」
「う~ん、巨大なのと出くわしましてね」
「巨大ぃ? 何と出くわしたか知らねぇが生きて帰ってこられて良かったじゃねぇか」
「そうですね。はい、依頼されたキノコですよ」
「なっ!? 何だこの量は!! 二倍じゃねぇか!!」
「大量に生えてたんで、たぶんラミラは混ざってないと思いますよ」
「まさか鑑定持ちか!?」
「あ、はい。というか、持ってないと思ってこの依頼私に仕向けたんですか? 鬼畜ですね」
ちっ、と言いたそうな顔をするマルギルさん。やっぱりいじめか。
「他のやつに頼めば確実に半分はラミラ混ぜてくっからな。でもまさか鑑定持ちとは大したもんだ。これじゃあ何かあった時にはお前さんに頼むことにするか」
「ちゃんと報酬払ってくださいね」
「そりゃ当然だろ」
流石薬草店の店主だ。
そしてちゃーんと報酬を貰って宿屋に足を向けたのだった。というより、こんなに貰っちゃっていいのかな? 今までやってきた依頼の中で一番高い報酬なんだけどなぁ。それだけ難しいものだった、とは言い難いし。あ、鑑定スキルがあったからかな。




