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第三話;私
奏絵とティータイムを済ませた私は家の近くにあるスーパーマーケットに向かっている。
毎日仕事に追われているお兄ちゃんの荷を一つでも軽くしようと始めたのが料理だった。
死んだお母さんはマメな性格で毎日食卓に並んだ料理を数冊のノートに綴っていて、そのノートを見つけた。
そしてそれ以来、少しでもお兄ちゃんに疲れを癒してもらいたくてお袋の味というものを何度も失敗しながら経験を積み立ててようやくそれを習得したのだった。
そして私が料理を作るようになってからお兄ちゃんはどんな日でも朝食と夕食を一緒に摂るようになってくれた。
それが今日まで一日たりとも欠けたことはない。
まぁ、病気の時くらいは素直にお粥を食べて欲しいと思ったけど(お兄ちゃんはお粥が昔から今までずっと嫌いだ)。
そんなことを思い返しながらケータイを開くとお兄ちゃんから今日帰りが遅くなることを知らせるメールが届いていた。
私は今夜の夕食をお兄ちゃんが大好きなビーフシチューに決めた。
多分この時の私の頬は緩みまくっていただろう。