表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑魚魚に転生した私、進化したら人魚になったので海の頂点を目指します  作者: MagicFactry


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/31

第26話 海の歌

第26話です。

青。

海は静かだった。


だが、静けさの中に、微かな揺れがあった。

水流でもない。

生き物の動きでもない。


自分の胸の奥から、何かが震えている。


熱だ。


少し前から続いている、あの熱。

だが今は、ただ熱いだけではない。

脈を打つように、一定の間隔で揺れている。


呼吸に似ている。


鰓の呼吸とは、違う。

前世で感じていた、肺の呼吸にも似ている。


吸う。

吐く。


そのたびに、胸の奥で小さな振動が生まれる。


尾を、ゆっくり振る。

水が、揺れる。


その瞬間だった。


「……?」


小さな音が、水の中に広がった。


音。

だが、言葉ではない。


声とも違う。


ただの震え。


それなのに、水が反応する。


自分でも気づかないうちに、喉の奥から微かな振動が漏れていた。


――ゥ…………


低い。

とても低い音。


しかし、それは海の中で遠くまで広がる。


水が、わずかに震える。


そして。


小さな魚が、一匹、動きを止めた。


さらに一匹。

もう一匹。


気づけば、近くにいた小魚たちが、次々と動きを止めている。


逃げるわけでもない。

捕食者を警戒する動きでもない。


ただ、こちらを向く。


胸の奥の振動が、もう一度起こる。


――ゥゥ…………


音が、海に溶ける。


水流が、ゆっくり変わる。


さっきまで乱れていた流れが、一本の道のように整う。


そして、小魚たちが動いた。


整列する。


まるで、合図を受けたかのように。


群れがゆっくり形を変え、弧を描くように並ぶ。


……なんだ、これ


自分の意思ではない。


命令したわけでもない。


それなのに、水が、魚が、反応している。


もう一度、胸が震える。


――ゥゥゥ……


今度は少し長い。


その瞬間、水の流れがはっきり変わった。


遠くの海藻が揺れる。


砂が、微かに舞い上がる。


小魚たちは一斉に方向を変え、同じ速度で泳ぎ出す。


まるで、一つの生き物のように。


群れが波の形になる。


その波が、自分の周りをゆっくり回る。


海が、呼吸しているみたいだった。


……海の歌、か


言葉は、水に溶ける。


だが、感覚として理解する。


これは、ただの声じゃない。


海そのものに響く振動。


共鳴。


以前に聞いた言葉が、頭をよぎる。


支配。

同調。

共鳴。


これは、命令ではない。


魚を従わせたわけでもない。


ただ、海と同じリズムで震えただけ。


それなのに、海が応えた。


胸の奥が強く脈打つ。


もう一度、音が漏れる。


――ゥゥゥゥ……


今度は少し高い。


水が震える。


群れが広がる。


小魚たちが一斉に円を描く。


流れが渦になる。


海全体が、わずかに変化する。


その瞬間。


遠くの水が、急に重くなった。


「……」


嫌な感覚ではない。


だが、明確な圧。


この海域で、その圧を持つ存在は一つしかいない。


海域主。


姿はまだ見えない。


だが、気配がある。


水の奥から、確実にこちらを見ている。


警戒している。


今までは違った。


以前の海域主は、ただの捕食者だった。


強いものを襲い、弱いものを食う。


それだけの存在。


だが、今は違う。


警戒している。


“何か”が起きたと理解している。


胸の振動が止まる。


小魚たちの動きも、ゆっくり元に戻る。


整列していた群れが崩れ、普通の群れへ戻っていく。


水流も静まる。


だが、海域主の気配は消えない。


むしろ、さらに濃くなった。


こちらを見ている。


確実に。


青い海の奥から。


「……気づいたか」


自分でも、理解する。


今のはただの音じゃない。


海を震わせる声。


海と共鳴する振動。


海域主が警戒する理由も、わかる。


これは。


この海の“支配者”が使う力に、近い。


胸の奥の熱が、ゆっくり強くなる。


尾を一度振る。


水が応える。


海は静かだ。


だが確実に、何かが変わり始めている。


そして、思う。


――まだ、無意識だ。


もしこれを、意識して使えるようになったら。


海は、どう反応するのか。


青。

海は、静かに揺れている。


だがその奥で。


確かに、歌が生まれ始めていた。

お読みいただき、ありがとうございました。


海の歌ってなに?と思ってくれた方は、ぜひブクマしてお待ちくださいませϵ( 'Θ' )϶

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ