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雑魚魚に転生した私、進化したら人魚になったので海の頂点を目指します  作者: MagicFactry


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第25話 グラドとの再邂逅

第25話です。

青。

海は、静かだった。


戦いの余韻はもう消えている。

だが、水の奥には確かな緊張が残っていた。


胸の奥の熱が、ゆっくりと脈打つ。

尾をひと振りするたび、水がわずかに応える。


海は、以前とは違う。

いや――違うのは、自分の方だ。


水の流れを感じながら、ゆっくりと岩礁の影を抜ける。

光は上から差し込み、青い柱のように海底へ落ちている。


その光の境界で、影が動いた。


大きい。


だが、恐怖ではない。

むしろ、どこか懐かしい感覚。


影が、ゆっくりと姿を現す。


鋭い背びれ。

重く太い尾。

そして、海域を震わせるほどの存在感。


グラド。


以前戦ったあの魚だ。


だが――違う。


一目でわかった。

体が、変わっている。


鱗は厚く、光を鈍く反射している。

尾の筋肉は以前よりさらに膨れ、動くたびに水が押し返される。

そして、目。


あの荒々しい目が、今は静かにこちらを見ている。


警戒。

だが同時に、理解の色もある。


「……」


言葉はない。

水の中では当然だ。


だが、不思議なことに伝わる。


お前も、変わったな。


そう言われた気がした。


こちらも、尾を止める。

距離は十分。

今なら、戦える。


だが、どちらも動かない。


胸の奥の熱が、静かに脈打つ。

同じだ。


グラドの体からも、似たような気配が漂っている。

以前とは違う、重く深い圧。


進化。


お互いに、それを感じ取っていた。


グラドがゆっくりと近づく。

水は荒れない。

威嚇もない。


ただ、確かめるような動き。


数メートルの距離で止まる。


鋭い牙が並ぶ口。

巨大な体。

海域主と戦えるほどの力。


それでも、今は静かだ。


こちらも、尾を動かさない。

ただ水に漂う。


沈黙。


しかし、それは敵同士の沈黙ではない。


強者同士の、静かな時間。


やがて、グラドが尾を振る。

水が、ゆっくりと流れる。


だが、攻撃ではない。

ただ、水を動かすだけ。


まるで、試すように。


その水流が、こちらに届く。


反射的に、体が反応する。

尾を少し動かすだけで、水流の軌道が変わる。


グラドの水流が、横に逸れる。


一瞬。


グラドの目が、細くなる。


理解した。


お前も、水を使うのか。


そんな視線だった。


こちらも動かない。

ただ、水と共に漂う。


争う理由は、ない。

少なくとも、今は。


グラドが、ゆっくりと体を回す。

背びれが、光を切る。


そして、こちらを横目に見た。


その目は、以前の敵意とは違う。


評価。


そういう視線だった。


尾を一度、大きく振る。


水が、震える。


だがそれは、攻撃ではない。

むしろ――宣言に近い。


次に会うときは、戦うかもしれない。


だが、今は違う。


グラドは、そのまま泳ぎ出す。

巨大な体が、青の奥へ消えていく。


その背中を見送りながら、思う。


……強くなったな。


以前のような、ただの捕食者ではない。

進化の気配をまとった存在。


そして、それは自分も同じだ。


海は広い。

この海域だけではない。


もっと奥。

もっと深い場所。


進化の先には、必ずまた出会う。


その時は――


戦うかもしれない。


あるいは。


同じ場所へ向かう者として、並ぶのかもしれない。


青い海が静かに揺れる。


尾を一振りする。


水が、静かに応える。


グラドの残した水流は、もう消えていた。


だが、確かに感じた。


この海には、自分以外にも進化する存在がいる。


孤独ではない。


だが、仲間でもない。


ただ――


同じ高みを目指す者。


胸の奥の熱が、わずかに強くなる。


青。

海は、まだ広い。

お読みいただき、ありがとうございました。


グラドにまた会いたい方は、ぜひリアクションお願いしますϵ( 'Θ' )϶

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