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俺のとある休日

 昼前に起きて、そのままベッドでゴロゴロと漫画を読む。

 俺はアニメはほとんど見ない。限界オタクの性でアニメ化されるようなメジャーな漫画よりも誰も知らないような漫画を探すのが好きだからあまりないことだが、好きな漫画がアニメ化されても見ない。

 なぜなら、スピード感が合わないからだ。遅い。俺が読むスピードの方が速い。

 ただ、某超能力者の高校生が災難に遭うアニメだけは俺が漫画読むのよりもセリフも速いし展開も速いから大ハマりした。あれだけスピード感あったら楽しく見れる。


 いいかげん蓮がいるなら昼飯作んなきゃな。お兄ちゃん、ごはんはー? って言って来ないってことは、遊びに行ってる可能性大だけど。


 自分の部屋から出て、階段を下りて1階に行く。蓮は家にいる時はたいがいゲームしてるからリビングに行ってみるも、誰もいない。


 母さんがいないのは夜通しネトゲしてこの時間は睡眠中だから。

 親父は週末は帰って来ないことが多い。客が自主的に帰るまで店を閉めない主義なので、客が飲み続ける限り親父も店にいる。そのプロ根性と体力と肝臓がすごい。


 ホストなー。小さい時から俺は長男だから将来は俺が跡を継いでホストになって、親父が築いた地盤を守るんだと思ってたけど、比嘉に言えないような職ってのも、どうなんだ。


 親父は尊敬してる。プロだなって思うから。家でもマメに客に電話したりメッセージのやり取りしたりしていて、24時間365日休みらしい休みはないのにそれすら楽しんでる。それに、こんなデカい家に住めるくらい稼いでるのが男としてカッコいい。親父の自慢の車も憧れる。

 だがしかし、俺にホストへの熱意は全くない。そこは親父と大いに違う。


 昨日のお兄さん、ぶっちゃけすげーカッコ良かったな。声は変だったけど、ビシッとスーツ着て、困ってる女子高生には笑顔で手を貸してやって。何気に俺のことも気を付けて帰ってねって、心配してくれてた。すげー紳士だった。


 俺も、ホストよりもあんな立派なビジネスマンになりたいかも。何より、比嘉に堂々とビジネスマンっす! って言える。


 ……あれ。ビジネスマンって、高校生の下校時間に焼肉食いに行くかな。普通に仕事中な時間じゃねーの。


「ただいまー!」

「ただいま」


 蓮と母さんの声がして、リビングを出て玄関ホールへと行ってみる。二人が靴を脱いで上がってくる所だった。


「おかえり! あれ、学校だったの?」

「土曜授業で参観だったんだよ!」

「そうだったんだ? 俺も見に行きたかったなー」

「ボクも来てほしかったー」

「次は俺も行くよ」

「絶対だよ、お兄ちゃんー」


 あー、蓮がかわいい。蓮の授業受けてる姿、俺も見たかったのに参観の手紙を俺には見せないで隠しやがったな、花恋ママ。平日は行けないから、土曜授業の時しか見に行けないのに。


 当の花恋ママは、澄ました顔でリビングへと入って行く。階段を上る音がする。


「……蓮。母さん、あの服装で参観行ったの?」

「そうだよ」


 そうだよって蓮は笑ってるけど、家にいる時と同じセクシーなキャミソールワンピースにセットのツルツルした素材のカーディガンを羽織った格好で子供の参観に行くって笑えねえよ。何考えてんだ、花恋ママ。

 蓮ももう5年生だぞ?! クラスメートの中には早くもいやらしい目で見る男児がいるかもしれねえ。そうすっと、お前の母ちゃんエロいーとかって攻撃されるのは蓮だ。


 ひと言言ってやるか?!

 ……いや、今日の参観はもう終わってしまったんだから、今言う必要はねえか。次の参観の前に言おう。うん、そうしよう。

 今はとりあえず、昼飯作んなきゃなんないし。


 簡単に残ってたごはんとベーコンでチャーハンを作って蓮と食べ、洗濯に取りかかる。蓮はそっこーでソファに行く。ゲームする気だな。


「蓮! 体操服出てねえぞ!」

「あ! はーい、持って行くー」

「お前今週給食当番だっただろ? 給食着も出せよ」

「はーい」


 洗濯機にポイポイと入れながら、給食ナフキンも出てないことに気付く。


「はい、お兄ちゃん。体操服と給食着」

「蓮、給食ナフキンも出てねえよ」

「あ、忘れてた」

「ゲームするなら、ちゃんとやるべきことを先にやってからにしろ」

「はーい。すぐ持って来る!」


 テテッと小走りに去って行く。毎週このやり取りしてる気がするんだけど、素直にすぐ取りに行くからこれ以上強く言えない。だって、蓮かわいいんだもん。


 洗濯機を回してる間に、掃除しとくか。

 階段下の大きな収納から掃除機とコロコロを出す。この収納の2枚の扉は壁と同じ白がいいと言う花恋ママのこだわりで茶色だったのを白にした特注品だ。花恋ママが掃除することなどないのに。


「蓮、ゲームの合間でもいいからソファコロコロしといて。終わったら物入れに戻しとけよ。母さん掃除道具が出てるの嫌がるから」

「分かったー」


 蓮にコロコロを渡し、リビング、キッチンと掃除機をかけていく。コードが届かないから、一端コンセントから外して廊下のコンセントに差し、廊下と玄関ホールもキレイにする。


 ついでに、蓮が脱ぎ散らかした靴を靴箱に入れる。玄関に靴があるのを花恋ママは嫌がる。


 大物の洗濯物を干し、小物を乾燥設定してリビングに行くと、ゲームの途中でトイレにでも行ったのか蓮がいない。ゴミ箱にコロコロの粘着シートが捨てられてるから、ちゃんとやってくれたらしい。よしよし、さすが蓮、いい子だ――ん?


 コロコロしまっとけって言ったのに、ソファとソファの間のセンターテーブルに置きっぱなしになっている。もー、しゃあねえなあ。

 ちゃんとやってくれたからこれくらいはいいか。コロコロを物入れにしまって、考える。


 晩飯、何にしようかなあ。

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