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ミニチュア・ピンシャーとロシアンブルー~チャラい男子高校生が初恋に本気出したら、クズな賢者になった  作者: ミケユーリ
神様は平等に

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俺の警戒心MAX

 比嘉の様子がおかしい。って、あいつしょっちゅうおかしいな。


 日直なのは俺なのに、なぜか比嘉が黒板を消してくれて、今も踊ってるつもりなのか不規則に体を揺らしながら黒板消しをガーッとする機械にかけている。


「比嘉、なんかあったんかね」

「すっごくご機嫌だよねえ」


 曽羽も聞いてねえのか。このド天然なら理由を知ってたら聞きだそうとせずとも勝手にしゃべってくれるだろうに。

 曽羽から比嘉に目を移すと、黒板消しを置いてこちらに小走りして来る。


「はい! 日誌も書いといたわよ」

「なんで比嘉が書いとるんじゃい」

「じゃあ、私帰るわね」


 よいしょっと、パンパンに膨れたカバンを比嘉が勢いをつけて持ち上げ、肩に掛ける。


「えらい重そうだな。何入ってんの?」

「選択授業の教材をもらったの。私選択美術だから、美術セットをね」

「ああ、なるほど」


 ヒョイと比嘉の手からカバンを奪ってみると、大して重くない。見かけ倒しだな。これをあんなに重そうに持つなんて、コイツどんだけ力ないんだ。


「門まで持ってってやるよ」

「え。あ、ありがとう」

「その代わり職員室寄るの付き合えよ。じゃあなー、充里、曽羽。また明日ー」

「明日は土曜日ー」

「あ、そうだったー。また来週ー」

「また来週-」


 手ぶらで身軽な比嘉は、廊下に出るとスキップでもしてるつもりなのか左左、右右と不気味なステップを踏んでいる。

 何かあったのか聞いてみようかな。でも、コイツ私のことバリバリ意識してんじゃん、とか思われねえかな。


「カバンありがとう。じゃあ、また来週」

「あー、うん。また来週」


 結局聞けんかった。仕方なく門の前でカバンを手渡す。揃って左に行くが、すぐに俺は右に曲がる。しばらく歩いて振り向くと、比嘉がヨロヨロとカバンを担いで歩いている。


 ……もー。しょうがねえヤツだな、全く。


 回れ右して比嘉の後ろ姿を追いかける。結構学校から家まで近いようなこと言ってたし、カバン持ってってやるか。


 俺たちが右と左に分かれた学校脇の十字路に差し掛かった時、黒いスーツを着た黒髪の男が比嘉に近付き、話し掛ける。


「ジャンピングニー!」


 頭で考えるよりも先に体が動いた。得意の瞬発力で一気に男に駆け寄り、思いっきり跳んでその背中に膝を入れる。

 膝蹴りはなかなかの威力を誇る技だが、俺の体重じゃ183センチある充里くらいデカそうな男に大したダメージは与えられなかったらしい。おっとっと、と2~3歩よろめいた程度だ。


「この変質者が! JKに声掛けてんじゃねーよ! 警察呼んでやろーか!」

「君こそ、いきなり暴力振るっておいてよく言うね」


 やっぱり変質者だ! すげー変な声!


 男が呆れ顔で振り返る。え、めっちゃイケメンじゃん。

 短髪で爽やかな印象かつ、黒ぶちメガネで理知的な大人の男って雰囲気。声は変だが、およそ変質者には見えない。


「ナンパか! いい大人が女子高生ナンパしてんじゃねえ!」

「決めつけがひどいな、少年」

「違うわよ、入谷! この人はカバン持つよって言ってくれただけ!」

「え?」


 男が比嘉からカバンを受け取り、比嘉がすみません、と頭を下げている。


「簡単に渡してんじゃねーよ! こんなどこの馬の骨か分からんような男の言うことは信用ならん! 下心があるに決まってる!」

「ひどい言われようだなあ。彼女が重そうに荷物を持ってるから、手伝いを申し出ただけだよ。僕子供5人いる既婚者だから安心して」

「失礼よ! 入谷!」

「うー。じゃあ、俺が持つからいい! 見ず知らずの人にお手数おかけするのも悪いんで!」

「気にしなくていいよ、僕もこっちに用事があるからついでだよ。君はあっちに行くんだろ? 僕だって、ついでじゃなけりゃわざわざカバン持つなんて言わないよ」

「え……」


 そんな風に言われたら、俺が反対方向なのにわざわざ比嘉のカバン持ちたいみたいになるじゃん。

 男は善意の塊のような笑顔で優しく俺を見ている。全くもって、いい人そうだ。


「君も気を付けて帰ってね。行こうか」

「本当にすみません、ありがとうございます。入谷、バイバイ」

「あ、おい……」


 たしかに、あの男善人にしか見えねえけど、いい人すぎて逆に怪しい。通りすがりの女子高生が重そうなカバン持ってるからって手伝おうとするか? 普通。

 大人から見たって比嘉は超美人だろう。絶対、下心があるに決まってる!


 二人に見つからないように、隠れながら後をつける。なんか俺、ストーカーみたいなんだけど。

 男が怪しい動きを見せたらすぐに飛び出せるように、気は抜かない。


 二人は一軒の家の前で立ち止まると、カバンの受け渡しを行い、比嘉がその家に入って行く。

 男は笑顔で手を振ると、更に5分ほど歩き、焼き肉屋に入って行った。


 本当に、焼き肉食いに行くついでに女子高生の荷物を持ってあげただけの声が変な紳士だった! 蹴った上に疑ってすんません!


 ただ、比嘉はもっと警戒しろ! あっぶねーよ、あんな顔しておいてノー猜疑心なのは!


 あー、いらん寄り道した。帰るか。


 また比嘉の家の前を通る。うん、普通の小さいいいお家だ。高貴な雰囲気醸し出してっけど、ごく普通の家の子みたいだな……うち、比嘉家の倍以上ありそうなんだけど……家の話題には触れないように気を付けよう。うん。決意。

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