世界観の終わり
エマたちは、方舟に乗っていた。
蛇……リンさんがまた果実の場所を見つけたらしいの!
リンさんは凄いね!
エマは方舟の一室で、1人だけのリンさんを見つけた。
どうやら何かを食べてるみたいだ。
「……!わぁ!お菓子!!」
「おっ。ちいせえの。」
「エマ!ちいさいのって名前じゃないのー!」
「あぁそうだ。エマだな。くくっ、食いてぇのか?ならこっち来いよ。」
にっとエマに向かってリンさんは笑った。
初めてあった時とても怖い人だって思った。だってなんだかいつも怒ってるみたいだったし、不機嫌そうだったり、いきなり怒鳴ったり、いつも睨んでるって思ってたから。
仲間になったときも、しばらくは怖くて話しかけられなかった。
でも、そんなある日エマがお腹がすいている時にお菓子をくれたの!
リンさんは怒らなかったし、エマとたくさんお話してくれたから、その日から大丈夫になったの。
そして今もお菓子をくれようとしてる。
「わぁい!」
エマはパタパタとリンさんに駆け寄った。
リンさんと深く関わって気づいたことがある。
それは、みんなの中で1番お兄さんみたいだっていうこと!
そりゃあセイさんもソラさんも、ルッカさんだってみんなエマより大きいけど、リンさんはその中でまるで本当にエマが妹みたいに感じるくらいお兄さんの雰囲気を放っていた。
1度何でかなってリンさんに聞いたら、「妹がいたからじゃねえか?」と少し悲しそうに笑った。妹がいたなんて!
でも、悲しそうに笑う理由がちょっと分からなかったけど、深く聞くのはやめたの。
エマ、深入りしちゃいけないって知ってるから!
「ほら。あーん。」
リンさんはいつもお菓子を口元にこうして運んでくれる。
「あーん!」
エマはぱくっと食べてもぐもぐする。クッキーだっ美味しい!
「あーあー零れてんぞほら。」
リンさんは笑いながら床にこぼれる前にクッキーの欠片を受け取ってくれる。
こういう所が凄くお兄さんっぽい。
口が悪くて、ちょっとおこりんぼだけど。
本当はとても優しいからだいすきっ。
どうして果実なんて盗んだのかな。
本当に悪者として盗んだのかなぁ……。
「……リンさんは、悪者なの?」
「……ふ。ほとんどが俺をそう思ってるだろうな。」
「でも、エマはそう思わないよ!だってエマ凄くリンさんすきだもん!」
「……。お前はちっちゃいからそう思うんだな。」
そう言いながらエマの頭を撫でてくれた。
なんだかその手のひらが寂しそうで、エマはなんだか泣いちゃいそうだった。
「エマ、リンさん悪者じゃないもん。きっとなにか理由があったから、でしょ?」
「……。」
「エマはずっとリンさんの味方だもん。」
皆、リンさんのこと大好きだよ。
そう言ったら、リンさんは目を見開かせて片手で顔を抑えると動かなくなっちゃった。
目が痒いのかな?
って思ったら、静かに泣いてたの。
エマはよしよし、てリンさんの頭を撫でてあげたんだ。
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───
─
目が見えないとあちこちの音の反響を聴きながら歩かなくちゃいけない。
たまにどこかに頭をぶつけるのは、ドジ……とはいわずぼくが高身長だからだと思って欲しい。
ぼくはリンを食事に呼び出そうとしたのだけれど。
どうやらエマちゃんと一緒みたいだ。
中に入ろうとしてやめた。
扉越しに彼から涙の匂いがする。
そしてエマが彼の頭を撫でているようだった。
「……。」
リンがこの中で1番闇を抱えているに違いないのは分かっていた。
ぼくはここはエマに任せようかなって思った瞬間、こちらに向かってくる足音で身を引いた。
ガチャ、と音が聞こえた。
「ぅぉあぁ!?!?っびっ、びびっ、っ、」
「驚きすぎだよリン。」
くすくす笑いながら。
「なっ、い、いつから、……。」
「ん?今来たばかり。」
知らないふりをしよう。
意外と彼は繊細な心を持っている。
実はぼくには匂いでバレバレで、彼からは毎日塩辛そうな涙の匂いがしていた。
きっと何かを思い出しては、夜中に自分の部屋で泣いているんだろう、と思っている。
予想だけどあっているはずだ。
ぼくの鼻は嘘をつかない。
「ご飯できたって。」
「やったぁ!エマ、ルッカさんとセイさんのごはんだいすきなの!」
わぁい!と声がしてパタパタと足音が向こうに消えていった。多分方舟ロビーまで走り去って行ったのだろう。
リンの小さな笑い声が聞こえた。
「いいなぁ、ガキっつーのはよ。純粋でなんも知らねぇんだ。」
「……エマちゃんに何か言われたの?」
「……。別に。」
はっと鼻で笑うとその場から立ち去ろうとする足音に、ついその腕を掴んだ。
「……?なんだよ?」
「あっ、あの……。……、いつも、ありがとう。」
「ふぁ?」
「君のおかげで、果実回収助かってる。」
これは紛れもない事実。
それに、追放された蛇とはいえどもぼく達からすればエデンの園に元々住んでいたというかなりの大物のかみさまだ。
そんな蛇が、こうして一緒にいてくれる、手伝ってくれることに感謝していた。
「なーに言ってんだよ、こっちも意外と充実してんだから。」
恥ずかしくなるような事言うなよ。
と彼は笑いながらその場を今度こそ立ち去った。
あぁ、こういう時目が見えないのが腹立つ。
どんな顔で言っていたのか分からないから。
「はぁあ……。」
ため息を吐くも、ぼくはふ、と微笑んだ。
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──
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果実。
禁断の果実。
人が触れたら、きけんなもの。
探さなきゃ。
ね?
早く探さないと。
まぁだだよ。
はいはいはい!
神話世界はここまで!
世界観表現したかったので、ここまでですが。
番外編でまだまだ書くのでよろしくお願いします!