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神話世界  作者: おかしくらげ
3/8

ふぁあ、と俺は欠伸をした。

はぁ、とため息をする。

今俺は、気の上に登って枝の上でくつろいで自慢のふわふわな黒い尻尾を梳かしていた。

何億年も前にエデンの園から追放されたかの有名な極悪非道と言われている蛇は俺だ。

名前?

適当にリン、とでも呼んでおけ。

まだエデンの園にいた時、そう呼ばれていたから。

しかし今思い出しても腹が立つ。

別に、悪戯で果実を食わせたわけじゃあない。

妹の為だ。

妹が、禁断の果実を見た時、あれを食べたい!と言うのでやめとけ、と言うも好奇心旺盛な可愛い可愛い妹はどうしても言うことを聞かない。

しかし俺は義妹とはいえ、物凄く可愛がっていたから、あれを触るな、食べるな、と言っていた上司(神様の中の偉い人)に言われていたがそれを全て無視して、手に入れることにした。

そんでもって妹に食べさせるわけだから、危険なものはあげられない。

なら、とあの人間を利用して使っただけの話だ。なんで追放されなきゃ駄目なんだ。

腹立つ、とため息をつく。

そして、追放された妹は俺を地上まで追いかけて、それで……。

「……。」

俺は、あいつを、きっと殺してしまった。

思い出して吐き気がする。

やめよう。

もうやめよう、今はこんなこと考えたってだめだ、と俺は首を横に振る。

この森の中、何千年と暮らしてきたがとても住み心地がいい。

食べ物にも困ってないし、体を洗うためのとても綺麗な湖も中にある。

この森はとても大きい。

ここは、俺の場所だ。

森の生き物達もそれを分かっているのか、俺が通るとどんなに人間が凶暴だという熊や狼ですら俺に道を譲るのだ。

悪い気はしないが、森の王が何故か俺になっていることにちょっといけ好かない。

俺は神様だぞこのやろー。

元々だが、神様なんだから見えないふりをしていて欲しい。

人は神様が見えないのと同じ扱いにして欲しかった。

俺は1人の空間が好きだからだ。

と、そんなことを考えながら鼻歌を歌っていると、ぴく、と固まる。

「……。」

何か甘ったるい、匂い。

その匂いを感じ、俺は理解すると目を見開かせがく、と枝から落ちそうになる。

なぜ、この匂いが、今更するんだ。

ここは地上だぞ?

地上に逃げる際嫌がらせでもうひとつ盗んだ果実はとうの大昔に捨てたはずだ。

なのに、なぜ、こんなにも禁断の果実の匂いがするんだ。

その匂いに嫌な思い出が蘇り、鳥肌がたつ。

「…………っ。」

果実の匂いが分かるのは、この世界でも天界でも地獄でもたった俺一人。

なにか、嫌味なやつが来ているんだな?

いいだろう。

最近喧嘩も殴り合いもしてなくてストレスが溜まっていたんだ。

「やってやろうじゃん。」

俺は黒くて長い尻尾をゆらゆらと揺らしながらなんとか口元をにぃっと上にあげた。


────

──


「ねっねぇ、ほんとにここであってるのぉ?」

エマは泣きそうになっている。

当たり前だ、今は森の中。

正直、わたくしも死にそうになっている。

だって方舟で大陸の向こう側には行ったのはいいものの、何時間も歩き続けている。天界の人たちだって、人間の知る神話の人達だって、疲れてしまう時は疲れてしまうのだから。

「だいじょーぶ?ボクがおぶってあげる?」

ゼンがそう言うと、エマは顔を真っ赤にして大丈夫!と断った。

「じゃあオレがおぶってあげよーう。」

セイは笑いながらエマが返事する前にをよいしょっとおぶってやった。

「えっ、ボクってそんなに嫌!?」

「ちっ違うのー!せっ、セイさんのばかぁ!」

「あはははっ。」

なるほど。

エマは、ゼンに好意を抱いているらしい。

たしかに歳は近いし、彼は優しいから純粋な乙女心を持つ幼女なら恋に落ちるだろう。

わたくしは微笑ましくてクスッと笑った。

「ん、匂いが近いなぁ。」

ジギルがぴた、と足を止めた。

「……いるってこと?」

「……。」

ジギルは何も言わず黙っていると、牙をむき出し爪を長くさせる。

「……くるっ、」

「────っ、」

突然目の前から電光石火のような速さで何者かがジギルに向かって上から飛び出してきた。

「っっ、!」

ジギルはさっとその爪と右腕で攻撃を受け流して後ろに飛ぶ。

それと同時に何者かも向こう側に飛んだ。

ジギルはさっと顔を上げて、その姿を確認する。暗い森の中、光る赤い目。真っ黒な髪。

そして黒い尾が、ふわふわと動いていた。

噛まれば肉がえぐれそうなくらいの牙。ジギルと同じくらい牙は鋭かった。

わたくしは目を見開かせ呟く。

「あれ、が……蛇……!」

何故だろう。

あの蛇の姿がやけに懐かしい。

まるで久しぶり、とでも言えるくらいの懐かしさに胸が締め付けられた。

「おいおい……。勝手に俺の森に入ってきて、物騒だなぁ。」

「それは君だろう。」

ソラが静かな声で言った。

確かに、攻撃を仕掛けたのはこいつだ。

でも蛇はくつくつ笑っていた。

「お前ら、天界の奴らだな。神様の子供ってやつだなぁ?」

蛇は世界の始まりからいた。

たしかに、ここでは最年長のジギルよりも、誰よりも歳上のかみさまだ。

の割には、だいぶ……背が小さくて華奢な男の子だな……とわたくしは思った。

そしてどこか色気のある雰囲気を纏っていた。

「おい、天界の野郎が何の用だよ?つか、どうやってここ分かったわけ?そこの犬か?」

「……ご名答。」

ジギルはため息をした。

するとわたくしの懐がぶぶ、と震えた。携帯だ、多分ナビシスだろう。

取り出すと、ナビシスは「大丈夫ですよっ彼なら何とか仲間に出来ますから」と何故か自信ありげに微笑んでいた。

「……君が盗んだ果実で、エデンの園の果実が全部下に落ちてしまったんだ。」

ゼンがじっと蛇を見つめてそう言うと、蛇は「はっ?」と目を丸くした。

「な、んでだよっ俺は…知らねぇよ!あんな果実!!」

「な、っ何いきなり、」

「俺に果実の話を持ちかけんな!!あんなのとうの昔に捨ててやったよ、俺は追放されて、人間の玩具にされてっ、やっとここで落ち着いた暮らしができてんのにっ!」

人間のおもちゃ?捨ててやった?

それぞれ眉を顰めるが、青ざめて取り乱している所を聞くなんてできない。

どうやら果実により、追放された後かなり痛い目をみたらしいが、痛い目とは言いきれない、トラウマ沙汰な事があったようにも見える、

それほど蛇は青ざめていた。

これは余計に刺激してはいけないやつだ。

「っ、……どうしよう。」

エマは心配そうに見つめている。

とりあえず落ち着かせなくては。

「……っ、蛇さん。落ち着いてくださいまし。」

「……お前、果実自身だろ。めちゃくちゃ甘ったるい匂いがしてんだよなぁ……、なあ、俺になんの仕打ちをしにきたんだ?」

「……えっ?」

仕打ち?

何の話だ?

「……追放される時、お前は何億年も罪を受ける、て言われて、散々受けてきたぜ。この体も心もボロボロだよ。それでも、まだ俺に罪を与えに天界からわざわざきたのか?」

「……言ってる意味がわからないですわ。」

「とぼけんなよ、女。」

蛇は悲しそうに笑っていた。

まるでお前にゃ意味なんて分かるわけがない、分かってたまるか、と言うような笑みだった。

「わたくしたちは、貴方に助けを求めてここまで来たんですわ。」

「……は、たすけ……?」

「先程も言いましたように、果実が全て地上に落ちてしまいましたの。それも、あちこちの時の流れをバラバラにしながら。果実の匂いがわかるのはあなたしかいませんわ。」

だから、果実探しに協力して欲しい。

蛇は目を見開かせ固まっていた。

そこで、セイが口を開いた。

「……協力してくれれば、君の罪は無くなるよ。」

「……!!!!」

「もう罰を受けることもないよ、蛇。」

なんだその話は。

わたくしはセイを見ると至って真面目な顔をしていた。

その話が本当なのかは分からないが、明らかに蛇の気持ちが揺れているのが目にわかる。

「ねっ。一緒に協力してほしい。あれが地上で人の手に渡るとやばいんだよ。」

「……。」

「"リン"。」

セイの言葉の後に、ソラがそう呟いた。

それは、蛇の名前か?

「な、っ。」

ソラを見ると、携帯に耳を当てていて、どうやらナビシスが耳元で彼の名前を囁いたらしい。

何故知っているのかはわからないが、ソラはその通りに呼ぶと蛇……いや、リンは、はぁあ……とため息をついてしゃがみこんだ。

「……わぁったよ……。」

「えっ、」

「協力してやるって言ってんだよ!おい、本当に罪がなくなんのか?」

「うん。無くなるよ。」

セイはクスッと笑った。

リンはさらにため息を吐いた。

完全に諦めたらしいため息だったが、その瞳には微かな光が宿っていた。

「……。分かったよ。」

「ほんと?やったあ!」

エマはセイの背中で嬉しそうに笑った。

戦い沙汰にならなくて良かったと思う。

それほど、あの双子の言葉が効いたのだろう。

わたくしは、ほっと胸をなでおろした。

「それじゃあ、これからもよろしくね!」

リンはゼンの言葉を頭をボリボリ掻きながら聞いて目を逸らすと少し頬を赤くして「わぁってるっつーの。」と乱暴気味に呟いて、わたくしはそれを見てふふっと笑を零した。

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