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神話世界  作者: おかしくらげ
2/8

蛇探し

僕はふぅ、と息を吐いた。

セイ兄さんをみて少し肩の力を抜く。

今は、地上に降りて蛇の手がかりを探していた。

天界で、重要任務のメンバーである子達と集まって何とか整理がついたのである。

やっぱり会った時よりみんな少し成長していた。何億年と歳を重ねているのは、実はセイ兄さんと僕とジギルしかいない。もうこの3人は成長することは無いだろう。

エマちゃんなんてこの前はまだ小さかったのに、少し背が伸びている。

でもまだまだ人間でいう小学生低学年のようだ。

「エマ、また大きくなったね…。」

「えへへっほんと?やったぁ!エマ、頑張るの!」

無邪気な笑顔でもっと身長伸ばすぞー!と張り切っていた。

その様子に誰もが頬をほころばせる。

「そういえば、果実探すのに聞いたんだけど、果実っていろんな時を超えて地上に落ちたんだよね?」

思い出したようにノアの子孫、ゼンが呟いた。それに頷いたジギルは腕を組む。

「いろんな時代に落ちちゃったんだよね。世界はぼくたちから見たら狭いけど、時間まで干渉してくると…たくさんの世界の中から探さなくちゃいけないから凄く大変だよね。」

「それならボクにまかせて!」

胸を大きくはってゼンは笑った。

「ボクの方舟で、どんな時代にも世界にも天界地獄どこでもいけるよ!」

「あっそうですね!!」

今は僕の携帯の中に住み着いてるナビシスの声がポケットから聞こえて、携帯を取り出す。

そこには電波少女が楽しそうに笑っていた。

「私、ゼンさんの能力知ってますもん。確かにそれは凄く必要になる技術……方舟ですね!」

あの方舟はゼンにしか操作ができない。

たしかに。

彼の力があれば……、余計な遠回りをしなくて済む。

「それでも最初は、蛇を捕まえなくちゃ。」

「あら、どうしてですの?」

果実の少女、ルッカが問いかけた。

僕は答える。

「蛇がいると、圧倒的に果実を見つけやすい。何故なら蛇は果実っての匂いを嗅ぎ分けられる。」

「なるほど。……先に蛇を見つければ果実回収もササッと行くよ!みたいな?」

ゼンは手のひらにぽんっと片方の手を乗せて頷いた。僕は微笑む。

「果実回収は時間の問題だからね。はやく見つけてしまった方が圧倒的にいいんだ。」

だから蛇しか分からない果実の甘ったるい匂いを嗅ぎ分けるために、利用しなくてはいけない。

蛇をメンバーにしろとは言われてはいないけど、これは仲間にしないと上手くはいけない。

だが蛇は大昔追放された、暴君蛇である。

きっとなかなか仲間にするには難しくて、最悪戦わなくちゃいけないだろう。

僕たちは一応戦えるし、僕と兄さんは星の銃を武器として手にしているがあまり戦いに話を持っていきたくないのが僕だ。

「蛇……。」

ナビシスが小さく呟くと、少し悲しそうに笑った。どうしたの?って聞くと、相変わらず俯き寂しそうな顔をして、なんでもないですよ!と携帯からその姿を消してしまった。

それに気づいていない兄さんは、じゃあまずは蛇探し!頑張るぞ!と楽しそうに笑っていた。

ふふ。可愛い。

お互い母と父が失踪しいなくなったせいでお互い異常な双子愛を築きながら成長してきた。いまや立派なブラコンだ。

きっと兄さんもそう。彼が何をしていても僕は許せてしまうんだろうなと思った。

そうして、ゼンの造った美しくも大きい方舟に乗って地上に降りて、人間になりすまして歩いていた。

「蛇なんてどこにいるのかなぁ。」

「話を聞くと、どうやら森の中にいるってわたくしは聞きましたわよ。」

ルッカは赤いドレスを揺らしながら言う。

森の中……。

「……ね。ぼく、耳と鼻がいいから、その蛇の匂いさえ分かれば、どこにいるか分かるかも。」

ジギルは目元が長い茶色の前髪で覆っている。その前髪を何度も弄っていた。それはジギルの癖で、自分の意見を言いたい時にでるものだ。

僕はそれを見た後、その言葉を聞いてハッとした。彼の鼻の良さは尋常ではない。

大昔についた匂いですら、何年前のものに着いた匂いだと判断できる。

そっか。

蛇の昔の匂いなら、と、ルッカを見つめた。

彼女は禁断の果実。ということは、まだ彼女が果実だった頃蛇に出会っているはず。

「ルッカの匂いを嗅いでみてよ。」

「えっ、わたくし?」

「蛇の匂いがあるはずだよ。」

「そうなの?じゃあ、ちょっと失礼……。」

ジギルがルッカに近づいて匂いをしばらく嗅ぎ続けた。

そしてぴく、と固まる。

「……うん、何億年も前の匂いが、君以外の生き物の匂いがする。ちゃんと、神様の匂い。」

「……。」

ルッカはジギルの鼻の良さに多少引いていたが、これで大丈夫だろう。

「それで、分かる?」

「ううんと、……うん。微かに分かるけど。ここではないね。」

「ここではないって?」

「大陸がもっと向こうかな。」

「大陸の向こう側の匂いも分かるの!?」

エマは目をキラキラさせていた。

ゼンとルッカは多少引いているが、その実力は認めているのだろう。

ここまで鼻が良くて、普段悪臭の漂う場所などに連れていったらどんな反応をするのかな……なんて意地の悪い考えが浮かんでしまって、つい笑ってしまった。


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