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月影浴1 おつきさま  作者: @naka-motoo
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第63話 初めての冬へ(その6)

 古い木造のおばあちゃんの家が無くなり、お地蔵さま・お不動さまもおられなくなっていたことを、僕は、お父さんとさつきちゃんだけに話した。お母さんには話すことはできなかった。

 さつきちゃんは、僕の話をじっと聞き、俯き加減の目に涙を浮かべているのが、僕にははっきりと分かった。因みに、建設会社に勤めるさつきちゃんのお父さんからさつきちゃんが教えて貰ったところでは、一軒の家を壊してコインパーキングを作る工事には三週間ほどあれば十分なのだそうだ。

 僕のお父さんは、こんなことを言った。

「おばあちゃんの家にあった、仏壇や神棚はどうなったのかな」

 お父さんの言葉はなんだか唐突な感じがしたけれども、確かにそう言われたらそうだ。

 僕は、自分が、祠の辺りの雪をよかすときに、素手でよかしたのを思い出した。

 もちろん、そんなことはないのだろうけれども、おばあちゃんの家が更地になるとき、重機で家の壁や柱と同じに粉砕して、仏壇や神棚もいっしょくたに瓦礫になってしまったのではないか、という錯覚に陥った。

 仮に、工事の前に搬出して、何らかのお祓いのようなことをしたのだとしても、もし、あのおばあちゃんの後に、花や榊を新しくしたり、ごはんやお菓子をお供えして毎朝・毎夕、お参りする人が誰もいなくなってしまったのだとしたら。それは、究極的には重機で粉砕して廃棄するのと同じことではないのだろうかと、恐ろしくなった。

 僕が素直に、怖い、というと、お父さんは、こんな言葉を返してくれた。

「仮に、わたし(お父さん)が、どんなに心から家の神棚や仏壇に向かって、供養したとしても、自分が死んでその後誰もいなければ、とても申し訳ないことだし、せいぜい自分の寿命がくる何十年かの間しかそれができないのは残念なことだ。人間が儚い、というのは、命が短いとか弱いとかいうこととは全く別次元のことのような気もする。それは、決して変わらず存在し続けるものがあるのに、自分はその永遠に存在し続ける‘何か’と一緒に添い遂げることができない、ということだと思う」

 ああ、僕の漠然とした不安は、こういうことだったのかな、と、お父さんの話を聞いて少しそんな気になった。だからと言って、それを取り除く方法は誰も示せないし、僕も考え着くことがないけれども。


 おばあちゃんはどうなったか。お地蔵さま・お不動さまはどこに移られたか。

 どこかの誰かに訊けば、分かることではあるのだろうけれども、訊かないままにしておきたい。自分の心の中で消化・熟成させ、自分の想像が事実とイコールになるような、そんな生き方を少しはしていきたい。


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