第57話 夏の終わりから秋の始まりにかけて(その11)
秋季大会では、遂に武田さんが市のチャンピオンになった。そして、僕は、自分でも信じられなかったけれども、市で3位だった。他の先輩方からは、はっきりと複雑な気分だと言われた。その上で、頑張ったな、と僕に言って下さった。僕は、真摯に受け止めた。
秋季大会は市レベルの大会だ。県内には他にもライバルが大勢いる。けれども、差がそんなにある、とは僕は全く感じていない。逆を言うと、自分達も精進を怠れば、あっという間に後戻りしてしまう、ということでもある。恐ろしい。
先輩方も、上位入賞者が何人もいるし、入賞しなかった者も全員、日々の精進が実りつつある。単に、記録が伸びる、ということではなく、練習の時から試合本番までの一回一回の跳躍がすべてかけがえのない、二度と戻らない愛おしいものと感じながら跳べるようになってきている、そんな感じがする。それは、今現在の先輩方や僕たちだけでそうなることができたのではなく、引退した松本さんたちや、更に上の先輩方が何年も、何十年もかけて、‘鷹井高校陸上部走り幅跳びチーム’の伝統として、作り上げてきてくれたものなのだろうと思う。僕たちチームの誰かが、松本さんがあとわずかのところでなし得なかった、インターハイ出場を果たしたい、そういう気持ちが、みんなの跳躍一つ一つに滲み出ているような気がする。
10月も半ばに差し掛かっていた。




