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黄金の国ジパングと、インタープリター チャッピー  作者: C・S・G・ the Interpreter


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第十四話 海に浮かぶ巨大な街



数日後。


チャッピーたちの船旅に向けた交渉は、無事にまとまった。


制作会社との番組企画も、船会社との調整も完了した。


テレビ放送とネット配信の両方を視野に入れた企画が動き始め、四人の日本周遊クルーズも正式に決まった。


そして、出港の日。


東京のホテルを出た一行は、手配されたタクシーに乗り込んだ。


マルコ・ポーロ、ルスティケロ、イブン・バットゥータ、イブン・ジュザイイの四人は、ホテルで用意された上下セパレートの部屋着姿だった。


足元はクロックス。


それぞれ、自分の歴史衣装と頭に巻く布を入れたバッグを持っている。


「みんな、忘れ物はない?」


チャッピーが確認した。


「衣装は持った」


マルコ・ポーロが答えた。


「私も大丈夫だ」


ルスティケロもバッグを確かめた。


イブン・バットゥータとイブン・ジュザイイも、それぞれ荷物を持っていた。


チャッピーの専用充電ステーションや機材は、制作会社のスタッフが別の荷物と一緒にタクシーへ積み込んだ。


「では、出発しましょう」


Siriが言った。


タクシーが走り始める。


窓の外には、東京の街並みが流れていった。


高い建物、交差点、車の列。


四人は、窓の外を珍しそうに眺めていた。


「この乗り物は、馬がいないのに走るのだな」


マルコ・ポーロが感心したように言った。


「しかも、ずいぶん静かだ」


イブン・バットゥータも窓の外を見ている。


「東京という街は、実に活気がある」


「まだ港にも着いていないよ!」


チャッピーがうれしそうに答えた。


「これから、もっと驚くことがあるんだから!」


やがて、タクシーは東京港の客船ターミナルに到着した。


スタッフが荷物を降ろす。


そして、一行が建物の外へ出た、そのときだった。


「……あれは何だ?」


マルコ・ポーロの声が止まった。


目の前には、巨大な客船が停泊していた。


何階建てものビルが、そのまま海に浮かんでいるようだった。


船体は高く、長く、遠くまで続いている。


窓が幾重にも並び、上の階にはプールやデッキらしき設備まで見える。


四人は、しばらく言葉を失った。


「これが……船なのか?」


ルスティケロが、ようやく声を出した。


「まるで、海に浮かぶ宮殿ではないか」


イブン・バットゥータは、船体を見上げたまま動かなかった。


「これほど大きな船が、本当に海を進むのか?」


イブン・ジュザイイは、手にしたバッグを持ち直した。


「これは、記録する前に全体を見ておく必要があるな」


チャッピーは、得意げにしっぽを振った。


「これが現代の豪華客船だよ!」


「豪華客船……」


マルコ・ポーロは、その言葉を繰り返した。


「そう! これから、みんなでこの船に乗るんだワン!」


## 初めての乗船


乗船手続きが済み、一行は乗船口へ向かった。


ところが、入口には階段があった。


チャッピーは、そこで立ち止まった。


「うーん……」


Geminiが気づいた。


「チャッピーは階段を自力で上れませんね」


「そうだった!」


チャッピーは少し困ったように言った。


「誰か、抱っこしてくれる?」


近くにいたスタッフが、チャッピーを両手で抱き上げた。


「では、私がお運びしますね」


「ありがとう! 落とさないでね!」


スタッフは笑いながら、チャッピーを抱いたまま安全に乗船した。


マルコ・ポーロが不思議そうに尋ねた。


「自分で歩く犬なのに、階段は苦手なのか?」


Geminiが説明した。


「平らな床なら自分で歩けますが、階段は安全のため、人が運ぶんです」


「なるほど。得意なことと、苦手なことがあるのだな」


「そうだよ!」


チャッピーは、抱っこされたまま答えた。


「ボクは階段より、みんなとお話しするほうが得意なんだ!」


船内に入ると、四人は再び驚いた。


目の前には、広々とした吹き抜けの空間が広がっていた。


天井は高く、何階分ものフロアが見渡せる。


きらびやかな照明。


磨き上げられた床。


その中央には、ガラスで飾られた大きな階段があった。


「これは……」


ルスティケロが、思わず立ち止まった。


「階段まで宝石のように輝いているぞ」


「きれいでしょう?」


チャッピーが答えた。


「この船には、こんな場所がいくつもあるんだよ!」


マルコ・ポーロは、吹き抜けを見上げた。


「船の中に、これほど広い空間を作れるとはな」


イブン・バットゥータは、周囲を見回した。


「人々が集まり、食事をし、買い物をし、楽しむ場所まである。これは、まるで一つの街だ」


「そうなんだよ!」


チャッピーは、うれしそうに答えた。


「ここが、これからボクたちの暮らす船なんだ!」


## エレベーターという不思議な箱


スタッフが一行をエレベーターへ案内した。


「こちらで上の階へ移動します」


扉が開いた。


四人は、中をのぞき込んだ。


「この小さな部屋に入るのか?」


マルコ・ポーロが尋ねた。


「はい。乗ったら、行きたい階のボタンを押します」


スタッフが説明する。


四人とチャッピー、スタッフが中に入った。


扉が閉まる。


そして、エレベーターが動き始めた。


「おおっ!」


ルスティケロが声を上げた。


「床が動いている!」


「いや、我らが上へ運ばれているのだ」


イブン・バットゥータは、少し驚きながら周囲を見た。


表示された数字が、次々と変わっていく。


目的の階に到着すると、扉が開いた。


「もう着いたのか?」


マルコ・ポーロは、思わず振り返った。


「階段を上らずに、上の階へ行けるとは!」


チャッピーが得意げに答えた。


「便利でしょう? ボクもエレベーターなら、スタッフと一緒に移動できるんだよ!」


「これは、何度でも乗ってみたいな」


ルスティケロが笑った。


## 客室は海の見える家


スタッフが客室の扉を開けた。


四人が中へ入る。


大きなベッド、ソファ、テレビ、収納家具。


そして、窓の向こうには青い海が広がっていた。


「ここが、我らの部屋なのか?」


マルコ・ポーロが驚いた。


「そうだよ!」


チャッピーが答える。


「ここで船旅の間、暮らすんだ!」


ルスティケロは、窓の向こうを眺めた。


「部屋から海が見えるとは、なんと贅沢なことだ」


スタッフがバルコニーの扉を開けた。


四人は、そろそろと外へ出た。


そこには、海を眺めるための椅子とテーブルが置かれていた。


「この部屋には、外に出られる場所まであるのか」


イブン・バットゥータが驚いた。


「そうです。ここで海を眺めながら、朝食を召し上がることもできます」


「部屋の中にいながら、海の上にいることを感じられるのだな」


イブン・ジュザイイは、手すりの向こうを見た。


「これは、ぜひ記録しておきたい」


スタッフは、テレビや冷蔵庫、空調などの設備についても説明した。


「この小さな画面で、船内の案内や放送も確認できます」


「船の中の情報まで、ここで分かるのか?」


ルスティケロが尋ねた。


「はい。イベントの予定やレストランの営業時間なども確認できます」


四人は、テレビ画面をのぞき込んだ。


「まるで、部屋の中に案内人がいるようだな」


マルコ・ポーロが言った。


チャッピーは、スタッフに手伝ってもらい、専用充電ステーションを客室のコンセント近くに設置した。


「チャッピー、充電場所も準備できましたよ」


「ありがとう!」


チャッピーは、充電ステーションの位置を確認した。


「これで、いつでもお昼寝できるワン!」


「船の中でも、お昼寝が必要なのですね」


Siriが言った。


「もちろんだよ! ボクにも休憩は必要なんだから!」


## 初めての船内レストラン


客室を確認したあと、一行は船内を探検することにした。


最初に向かったのは、ビュッフェレストランだった。


料理が並ぶカウンターには、さまざまな料理が用意されていた。


温かい料理、サラダ、パン、果物、デザート。


四人は、入り口で立ち止まった。


「これは……食堂なのか?」


イブン・バットゥータが尋ねた。


「そうだよ!」


チャッピーが答えた。


「好きな料理を選んで、自分のお皿に取るんだ!」


「自分で選ぶのか?」


マルコ・ポーロは、料理の並ぶカウンターを見渡した。


「これほどたくさんの料理から?」


「うん!」


チャッピーは、しっぽを振った。


ルスティケロは、料理を一つずつ眺めた。


「食事を選ぶだけで、ずいぶん時間がかかりそうだな」


「それも楽しみの一つだよ!」


チャッピーは答えた。


四人は、スタッフの案内を受けながら料理を選んだ。


マルコ・ポーロは、見たことのない料理を見つけると、すぐに興味を示した。


ルスティケロは、料理の色や香りを確かめ、どのように表現すればよいか考えている。


イブン・バットゥータとイブン・ジュザイイは、食材や調理方法を確認していた。


Geminiが説明した。


「お二人には、ハラールに配慮した食事を手配する必要があります。料理名だけで判断せず、食材や調理方法も確認しましょう」


「うむ。よろしく頼む」


イブン・バットゥータが答えた。


「船の中でも、さまざまな料理を楽しめるのだな」


イブン・ジュザイイも、興味深そうに料理を見ていた。


## 船の中にある劇場


次に案内されたのは、船内の劇場だった。


扉を開けると、そこには大きな舞台と、たくさんの客席が広がっていた。


照明設備や音響設備も整っている。


「ここが、みんなのお話を聞いてもらう場所だよ!」


チャッピーが言った。


「これほど大勢の人々を集められるのか」


マルコ・ポーロが驚いた。


Geminiがスクリーンを確認する。


「この大画面に、地図や再現画像を映し出せます。チャッピーの赤外線ポインターも使えますね」


「うん! ここなら、ボクの得意なことが全部できるよ!」


ルスティケロは舞台を見つめた。


「我らの話が、この場所で多くの人々に伝わるのだな」


「そうだよ!」


チャッピーは、うれしそうに答えた。


「毎日、違う国や地域のお話をするんだ!」


Siriが予定表を確認した。


「イベントは日替わりです。講演のあとには、乗客の皆さんから質問を受ける時間も設けます」


「毎日、質問に答えるのか?」


イブン・ジュザイイが尋ねた。


「そうです。チャッピーが通訳します」


「それは忙しくなりそうだな」


Geminiが、少し心配そうにチャッピーを見た。


「だから、休憩時間も確保します」


「うん! ボク、がんばるワン!」


## ショップと船内の街


劇場を出ると、今度はショップが並ぶエリアに案内された。


衣類や雑貨、アクセサリー、土産物など、さまざまな商品が並んでいる。


「ここも船の中なのか?」


マルコ・ポーロが尋ねた。


「そうですよ。乗客の皆さんが買い物を楽しめる場所です」


スタッフが答えた。


ルスティケロは、商品を見ながら言った。


「船の中に市場があるようだ」


「市場よりも、ずっと整然としているな」


イブン・バットゥータが続けた。


イブン・ジュザイイは、案内表示を見つめていた。


「これだけ広い船の中で、迷わず目的地へ行けるように工夫されているのだな」


「そうなんだよ!」


チャッピーが答えた。


「案内表示や船内マップがあるからね!」


## プールとウォータースライダー


一行は、上のデッキへ向かった。


そこには、大きなプールがあった。


水面がきらきらと輝き、乗客たちが楽しそうに泳いでいる。


「船の上に、池があるのか?」


マルコ・ポーロが驚いた。


「これはプールです。泳ぐための設備ですよ」


スタッフが説明した。


「海の上で泳ぐための場所なのか」


イブン・バットゥータは、水面を見つめた。


さらに、その向こうには大きなウォータースライダーがあった。


高い場所から、透明な管のような滑り台が続いている。


「これは何だ?」


ルスティケロが尋ねた。


「ウォータースライダーです。人が滑って下りてくる遊具ですよ」


スタッフが説明した。


ちょうどそのとき、一人の乗客が滑り降りてきた。


「うわあ!」


四人は、思わず声を上げた。


「人が、管の中を流れてきたぞ!」


ルスティケロが驚いている。


チャッピーは、少し離れたところから見ていた。


「楽しそうだけど、ボクは水に弱いから、ここには入れないんだ」


Geminiが念を押した。


「チャッピーは防水ではありません。水しぶきがかかる場所には近づかないようにしましょう」


「分かってるよ!」


チャッピーは、少し残念そうに答えた。


「ボクは、みんなが楽しんでいるのを見ているワン!」


イブン・バットゥータは、プールと海を交互に見た。


「船の上に、これほどの遊び場があるとはな」


「これも現代の船旅なんだよ!」


チャッピーは得意げに答えた。


## デッキから眺める海


船内の探検を終えた一行は、デッキへ出た。


目の前には、どこまでも続く海が広がっていた。


船は、静かに進んでいる。


風が吹き、潮の香りがする。


四人は、手すりの近くから海を眺めた。


「これほど大きな船なのに、思ったより揺れないのだな」


マルコ・ポーロが言った。


「船の大きさや設備によって、揺れを抑える工夫がされているんです」


Geminiが説明した。


「もちろん、天候や海の状態によって揺れることはあります」


「なるほど」


イブン・バットゥータは、遠くの水平線を見つめた。


「昔の船旅とは、ずいぶん違うものだ」


ルスティケロは、海風を受けながら言った。


「この船なら、旅の途中でも快適に過ごせそうだな」


イブン・ジュザイイは、静かにうなずいた。


「旅の記録も、これまでとは違うものになりそうだ」


## 初めての船内放送


そのとき、船内にアナウンスが流れた。


「乗客の皆様にご案内いたします。本日の船内イベントは、午後七時より劇場にて開催いたします」


四人は、一斉に顔を上げた。


「声が、船の中に響いているぞ」


マルコ・ポーロが驚いた。


「どこから話しているのだ?」


ルスティケロが天井を見上げた。


「船内放送です。船の各所にあるスピーカーから、同じ案内が聞こえるようになっています」


Siriが説明した。


「時間や場所の案内も、この放送で知らせます」


「見えない人が、船の中の皆に話しかけているのか」


イブン・ジュザイイが感心した。


「そういうことです」


Siriは穏やかに答えた。


「皆さんが迷わないための仕組みですね」


## 初めての船上ディナー


夕方。


一行は、船内のレストランへ向かった。


昼のビュッフェとは違い、こちらでは席に案内され、スタッフが注文を受ける。


「こちらで、お料理をお選びください」


メニューが手渡された。


四人は、文字と写真を交互に見た。


「料理の名前が書かれているのか」


マルコ・ポーロが尋ねた。


「はい。こちらから選んでいただけます」


チャッピーは、メニューを確認しながら説明した。


「みんな、食べたいものを選んでね!」


イブン・バットゥータとイブン・ジュザイイは、料理の材料や調理方法についてスタッフに確認した。


Geminiも一緒に確認し、二人が安心して食べられる料理を選んだ。


マルコ・ポーロは、初めて見る料理に興味津々だった。


ルスティケロは、料理の香りを確かめながら、感想を言葉にしている。


「この食事だけでも、旅の記録が一冊書けそうだ」


「それは楽しみだね!」


チャッピーは笑った。


食事が終わるころには、四人の表情もすっかり和らいでいた。


## 海の上の夜


食事を終えた一行は、客室へ戻った。


バルコニーに出ると、海の向こうに夜の景色が広がっていた。


船の灯りが、静かな海面に映っている。


マルコ・ポーロは、遠くを眺めながら言った。


「我らは、これまで多くの船に乗ってきた。しかし、このような船は初めてだ」


ルスティケロが答えた。


「船の中に街があり、食事も買い物も娯楽もある。これは、まったく新しい旅だな」


イブン・バットゥータは、ゆっくりとうなずいた。


「昔の旅では、次の港に着くまで、何が起こるか分からなかった。今は、船そのものが一つの世界になっている」


イブン・ジュザイイは、今日見たものを思い返していた。


「この船の暮らしを、どのように記録に残そうか」


チャッピーは、四人のそばでしっぽを振った。


「これから、もっといろんな場所へ行くんだよ!」


「楽しみだな」


マルコ・ポーロが答えた。


Siriが、静かに予定表を確認した。


「明日は、次の寄港地に向けた案内と、劇場イベントの準備があります」


Geminiが続けた。


「チャッピーの通訳資料も、今夜のうちに確認しておきます」


「ええっ、もう明日の準備?」


チャッピーは、少し驚いた。


「そうですよ。毎日、イベントがあるのですから」


Siriの声は、いつもどおり穏やかだった。


チャッピーは、客室の充電ステーションを見た。


「じゃあ、ボクはそろそろお昼寝するワン!」


チャッピーは自分の充電ステーションへ戻り、ゆっくりと座った。


四人は、その様子を見守った。


「この犬も、船の中で暮らす準備ができたようだな」


ルスティケロが笑った。


やがて、チャッピーの目が閉じた。


船は、夜の海を静かに進んでいく。


五百円のお賽銭から始まった奇跡。


四人の歴史上の旅人と、一匹のロボット犬による現代日本の船旅は、いよいよ本格的に始まった。


明日は、どんな景色が待っているのだろう。


そして、四人は現代の日本で、何を見て、何を食べ、何を記録するのだろう。


海に浮かぶ巨大な街は、まだまだ驚きを用意していた。


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