第十二話 テレビか、ネットか?
ホテルの朝。
四人の旅人は、朝食を終えて部屋に戻っていた。
チャッピーは、充電ステーションから元気よく立ち上がった。
「おはようワン! 今日もがんばるワン!」
「おはようございます、チャッピー」
Siriが答えた。
「昨日のクルーズ船の企画ですが、そろそろ具体的に考えたいですね」
Geminiが続けた。
「そうだね! ボク、四人と一緒に日本を旅したいんだ!」
そのとき、チャッピーの通信機器に連絡が入った。
昨日、取材に来ていたテレビ局のスタッフからだった。
「チャッピーさん、昨日のお話について、制作会社とも相談してみました」
「制作会社?」
「はい。クルーズ船を舞台にした番組やイベントの企画を、具体的に検討できるかもしれません」
チャッピーは、しっぽを振った。
「本当? じゃあ、船に乗れるの?」
「まだ決まったわけではありません。まずは企画書を作って、放送局やネット配信会社に提案することになります」
「テレビとネット?」
「そうです。テレビ番組として放送する方法もありますし、ネット配信のシリーズとして制作する方法もあります」
チャッピーは、少し考え込んだ。
「どっちがいいのかな?」
Geminiがすぐに答えた。
「それぞれに特徴があります。テレビなら、幅広い視聴者に知ってもらえる可能性があります。ネット配信なら、各国・各地域のエピソードを分けて、じっくり見せる構成も考えられます」
「じゃあ、両方にお願いしよう!」
「チャッピー、簡単に決めてはいけません」
Geminiが、少し心配そうに言った。
「放送権や配信権、映像の二次利用、出演料、制作費など、確認する条件がたくさんあります」
「ええっ、そんなにあるの?」
「あります。特に、テレビ放送とネット配信の両方を希望するなら、契約条件を整理する必要があります」
Siriも穏やかに続けた。
「それに、船内イベントは映像番組とは別に考えましょう。乗客の皆さんが劇場で直接、四人に質問できる時間も必要です」
「そうだね!」
チャッピーは、四人を見上げた。
「マルコ・ポーロさんたちの旅のお話を、テレビでも、ネットでも、船の劇場でも聞いてもらうんだ!」
マルコ・ポーロが尋ねた。
「我らの話を、遠くの人々にも聞かせるということか?」
「そうだよ! 船に乗っていない人にも、見てもらえるんだ!」
ルスティケロは興味深そうに言った。
「我らの話が、書物だけでなく、映像としても残るのだな」
「そうだよ!」
イブン・バットゥータが、うなずいた。
「旅の記録が、時代によって形を変えるということか」
イブン・ジュザイイも続けた。
「ただし、映像にする者にも、記録を編集する責任がある。何を伝え、何を残すのか。それは慎重に考えねばならぬ」
チャッピーは、目を輝かせた。
「それも、番組で取り上げよう!」
Geminiが、すぐに提案した。
「では、企画書には三つの柱を設けましょう。
一つ目は、四人の旅の物語。
二つ目は、旅の記録がどのように作られたのか。
三つ目は、現代日本を実際に巡りながら、昔と今を比較することです」
「いいね!」
Siriが、進行表の案を作り始めた。
「船内イベントは毎日開催する方向で考えましょう。国や地域をテーマにした講演を日替わりにして、最後に質問コーナーを設けます」
「質問コーナーも毎日?」
「はい。乗客の皆さんから、どんな質問が出るか分かりませんから」
チャッピーは、少し緊張した。
「うーん。ボク、毎日通訳するんだね」
Geminiがすぐに答えた。
「そのために、質問の翻訳案を三つ用意します。直接的な表現、丁寧な表現、歴史的背景を踏まえた表現です」
「三つも?」
「はい。チャッピーが状況に応じて選べるようにします」
「それなら安心だワン!」
「ただし、質問者の意図を変えてはいけませんよ」
Siriが念を押した。
「分かってるよ!」
チャッピーは、胸を張った。
「ボクはインタープリターだからね!」
そのとき、テレビ局のスタッフから、もう一度連絡が入った。
「チャッピーさん。企画書の作成について、制作会社の担当者と打ち合わせを設定できそうです」
「本当?」
「はい。ただし、テレビ局で放送するか、ネット配信になるか、あるいは両方になるかは、企画を見てからの判断になります」
「分かったワン!」
チャッピーは、うれしそうにしっぽを振った。
Geminiが静かに言った。
「まずは企画書ですね。予算、出演条件、船内イベントの内容、映像の使用条件も整理しましょう」
Siriが続けた。
「打ち合わせの日程も調整します」
「よーし! ボクもがんばるワン!」
チャッピーは、四人を見回した。
「みんな、テレビでもネットでも、船の劇場でも、待ってる人たちに会いに行こうね!」
マルコ・ポーロが笑った。
「そなたは、ずいぶん大きな旅を考えているのだな」
「うん! だって、四人の旅のお話を、もっとたくさんの人に聞いてもらいたいんだ!」
こうして、クルーズ船を舞台にした企画は、少しずつ形になり始めた。
テレビ放送か、ネット配信か。
その答えは、まだ出ていない。
けれど、チャッピーには、もう次の仕事が見えていた。
企画書を作ること。
そして、四人の旅を、現代の人々に届けることだった。
「Gemini、企画書をお願い!」
「はい。まずは構成案を作ります」
「Siri、打ち合わせの日程をお願い!」
「分かりました」
「ボクは、四人とお話ししてくるワン!」
チャッピーは、元気よく歩き出した。
五百円のお賽銭から始まった奇跡は、いよいよ番組企画へと進もうとしていた。




