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プロローグ 師として、そして親として①

 ふと目が醒めた。

 薄暗い空間に肌寒い空気。鼻をつんざく刺激臭が俺の心を酷く不快にさせる。

 路地裏。そう呼ぶのに相応しい場所だ。華やかな街中とうってかわって不気味で寂しい裏側。しかし、今となっては表側も地獄そのものなのだから、むしろここは天国なのか?

 そんなひっそりとした路地裏の隅で疲れきり眠ってしまっていたらしい。


「これから、どうすればいいんだ」


 建物と建物の隙間から見える月を見上げて呟く。

 どうしたらいいのか。

 行く場所もない。帰る場所もない。助けてくれる人もいない。俺の居場所はどこにもない。

 手足の震えが止まらない。寒さだけが原因でないことは明白だ。俺の身体はとうに憔悴しきっているのだから。

 このままだと生きていられるのも時間の問題。追手に襲われでもしたら今度こそ俺の命はない。


「……」


 どう考えても生き延びる方法が見当たらない。


「このまま死ぬのかな」


 はは、と苦笑する。こんなことを考えて何になる。まだ諦めるなよ、と自分に活を入れる。


「それにしても……」


 暗闇の向こうからジャリ、と足音が聞こえた。

 それは静かに忍び寄る異形の存在。明らかに人ではない四足歩行の何か。暗闇に光る真紅の双眸。グルル、と唸るそれはまるで餓えた獣のようだった。


「どうしてもあいつらは、俺を始末したいんだな」


 立ち上がる。ただそれだけの行為が苦痛となり、ギシギシと身体の軋む音が聞こえてる。

 逃げないと。力の限り走る。路地裏の奥へ。暗闇の向こうへ。

 しかし、


「あなた、まだ生きてたんだね」


 行く手を遮るように立ち塞がる一つの影。

 そこにいたのは白い髪に蒼き大剣を携えた死神の如き少女だった。

 つい数時間前に俺に致命傷を与えたあの少女が再びその剣を振るう。

 瞬間、俺は死を覚悟した。

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