番外編 はいはい、巻き付きましたっと
〜ギルド受付嬢・ティナのとある一日〜
ギルドの朝は、まあまあ早い。
いつものようにカウンターに座って、依頼の張り出しをしていたティナは、
今日も思った。
「⋯⋯はぁ。あの子たち、ついに巻き付きましたねぇ〜〜〜!!」
彼女が掲示板の前でニヤニヤしているのには理由がある。
そう、昨夜――受付に回ってきた「部屋割り報告」にて、
《フィリアとエリオンが、同室で一夜明かした》という未確認情報が入ったのだ。
(いやさ、もう隠せてないのよ、エリオンくん⋯⋯
あたし、尾で絡まれてたフィリアちゃん見ちゃったし)
窓の外で尾がピクピク揺れてるの見た瞬間、彼女の中で何かが確信に変わった。
「まーたレイくんが死にかけてたし。ほんと学習しない子ね〜」
ティナは書類の端に、
【巻き付き警戒レベル:最大】とメモしておく。
「んで〜〜、今日は誰が最初に茶化すかなぁ〜。
あ、ジークくんは苦笑いして黙ってそう、リリィちゃんは“ようやく”って顔してるし⋯⋯」
ふふん♪と鼻歌交じりに仕事をしながらも、耳は敏感だ。
すると――
「うわっ、なにこの空気!? てかエリオンが機嫌よすぎない!?」
案の定、レイが入ってきた。
「ほらね」
ティナはにやりと笑いながら、コーヒーカップに口をつける。
「おはよう、レイくん。あれ? 死にかけた顔してるけど」
「し、してる!?? やっぱ!?!?」
「うんうん、目の下のクマが“巻き付き圧”って感じ」
「“巻き付き圧”ってなんだよそれ!?!?」
「まあまあ。フィリアちゃん、幸せそうだったよ?」
「⋯⋯うぐっ⋯⋯それ一番刺さる⋯⋯」
レイがカウンターに項垂れてる間、
奥のテーブルでは、ジークが静かにエリオンに水を渡し、
リリィが「⋯⋯おめでとう」とぽつり。
「うん、いいねぇ。青春が、ギルドを潤すねぇ〜」
ティナは微笑む。
そしてこっそりと、新しい掲示板を用意する。
【非公式掲示板:銀月の恋愛記録】
巻き付き事件:確認済
本人たちの気づき:たぶん半分
尾の暴走:1件(レイ被害)
次の進展予想:手つなぎ or キス(あれ?まだしてない?)
「ふふふ⋯⋯この目と耳と舌で、今日もギルドを回すのよ、ティナちゃんは」
――ギルドの裏番・受付嬢ティナ。
今日も彼女は、銀月の帳の恋愛模様を監視しているのであった。
「次は誰が巻かれるかな〜〜♡」
※主にフィリアが(愛されて)巻かれる予定




