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9話 ポルターガイスト食堂



「“ビストロ・コロポックル”……よし」



 入り口に美味しそうなサンプル料理が飾ってある。

オムライスの上から宙に浮くスプーンでソースをかけていたり、宙に浮くパスタを巻いたフォークだったり……子供のころは魔法かマジックだと思ってたわ。



カラン、コロン。



「こ、こんにちわ~」



「いらっしゃいませ! おひとりですか?」



「は、はい! おひとりです!」



「ふふっ。お好きな所へどうぞ~!」



 腹が減っては宿探しもできませんわ。ということで、まずは食事をすることにした。

前の世界ではインドア病弱ガールだったので、外出中にいきなり体調不良になったりすることもあって、こうやって1人で街を見て回ることはほとんどなかった。



「ごはん屋さん、初めて1人で入っちゃった……き、緊張する……」



 大通りのお店は賑やかで、ちょっと入りずらかったので、少し外れた所の小さな定食屋さんにした。

こういう所の方が知る人ぞ知る店って感じで美味しい気がするし。

……だ、大丈夫だよね? ビストロって、たしか気軽に入れるカフェとか小さな料理屋さんって意味だし。



「だ、大丈夫。美味しい物を食べる時は誰にも邪魔されないことが大事ってグルメ漫画にも書いてあったし、きっとおひとり様ご飯が最強なんだわ」



 こじんまりとした店内に、お客さんはわたしだけ。他にはウェイトレスさんが1人と、料理を作ってる人が1人。

……め、めちゃめちゃ不味くて普通に人気が無いだけのお店だったらどうしよう。



「はい、お冷どーぞ! ご注文お決まりでしたら伺いまーす!」



「あっその……な、なにかオススメとかありますか?」



「ウチのオススメ? そうだなあ……」



 ウェイトレスさんはわたしと年が変わらないくらいに見える、元気な女の子だった。ちょっとだけ話しやすくて助かる。



「オムライスが美味しいよ! ソースも自家製なんだ~」



「それってもしかして、入り口の見本の?」



「そうそう……あ、見本のやつは昔のだからちょっとソースが違うんだけどね。でも美味しくてボリューム満点で食べたら満足間違いなし!」



「それじゃあ、そのオムライスと……このブルーハーブティーをアイスで」



「かしこま~! ちょっと待っててね!」



 うん、すっごいフランクで話しやすいわ。



 ……。



 …………。



「お待たせしました~! コロポックル特製、ごろごろお野菜ソースのオムライスになりま~す!」



「わあ~! とっても美味しそう!」



 普通のケチャップソースがかかっているオムライスを想像してたら、大きめに切った野菜やお肉がたくさん入ったハヤシライスソースみたいなのがかかっていて、なんだかすごく豪華に見える。



「いただきま~……」



「じ~……」



 う……カウンター越しからウェイトレスの女の子にめちゃめちゃ見られてる……



「ぱく。もぐもぐ……ん! とっても美味しい!」



 卵がふわふわのとろとろで、中のチキンライスも甘めの味付けでわたしの好みだわ。そしてこの具沢山ソース……



「野菜もお肉も柔らかくて、幸せな味……」



 こんな美味しいオムライス初めて食べたかも……生きててよかった……。



「そういえばここ最近はずっと味気ない病院食だったわね。余計に美味しく感じちゃう……あら?」



 カタカタ、カタカタと食器が揺れる。



「地震かしら。でもコップの水は揺れてないわね……」



「あっまずい! お客さ~ん!」



 カウンターにいたウェイトレスさんがこっちに駆けよってくる。な、なにかしら。わたしなにか粗相を……?



 カタカタカタ!



「タベテタベテ」



「……えっ? わっ! むぎゅ!」



 えー、今何が起きたか説明するわ。

オムライスが乗ってるお皿とスプーンがまるでサンプル品みたいに宙に浮いて、わたしに無理やりオムライスを食べさせてきたの。

何を言ってるのか分からないかもしれないけど、わたしもよく分かってないわ。



「ウマイ? ウマイ?」



「もぐもぐ……え、ええ。とっても美味しいわ」



「タベテタベテ」



「ちょ、ちょっと待って、もうちょっとゆっくり」



「こら~! 無理やりやめなさい!」



「…………」



 ウェイトレスさんに怒られたお皿とスプーンが大人しくなる。これって……



「もしかして、妖精さん?」



 ……無理やりごはん食べさせてくる妖精?



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