10話 食器の妖精?
「ゴメンねえ。ウチの食器がちょっと暴走しちゃって……はい、これブルーハーブティーのアイス。ミルクとお砂糖はいる?」
「い、いえ。このままで大丈夫です」
とりあえずお茶でも飲んで落ち着こう。
「コクコク……ん! これ美味しい!」
見た目がブルーハワイみたいな真っ青なアイスティーでちょっとびっくりしたけど、飲んでみるとすごく爽やかで良い香りが鼻から抜けていく。
「それ美味しいでしょ! お父さんがやってる薬草園で作ってるんだ。リラックス効果もあるから、寝る前とかに飲むのもオススメだよ」
「そうなんですね。あ、それでその、この子たちって……」
「ゴハンゴハン」
「タベテタベテ」
「う……やっぱ気になるよねー。ずーっとカチャカチャ鳴ってるでしょ」
ええ、めちゃめちゃ気になるわ。他の人にはカチャカチャ鳴ってるだけに聞こえてることが。
「タベテタベテ」
「じ、自分のペースで食べるから……ね?」
わたしの注文したオムライス……が盛り付けてあるお皿と、わたしが使ってるスプーンはどうやら妖精さんだったらしい。
なんか久々に会った親戚のおばちゃんくらいごはんを食べさせようとしてくる。
「えっと、この子たちはね……」
「私から説明するわ」
いつの間にかキッチンにいた女の人がこちらにやってきていた。
「あ、お母さん」
「ビストロ・コロポックルの店長兼調理担当のタイムです。こっちは娘のホップ。この度はウチの食器がご迷惑をおかけして申し訳ありません。本日のお代は結構ですので」
「い、いえいえそんな! わたし妖精さん大好きなので、むしろ可愛いっていうか」
「寛大なお心使い、感謝します」
いや全然そんなんじゃなくて、本当に妖精さんが好きなだけなんだけどね。
「この子……私たちは“食器の妖精”って呼んでるんですが、少し前からお店に現れるようになりまして……」
タイムさんの話によると、この食器の妖精さんはお店で使用している食器に化けて、料理を提供されたお客さんにいたずらをしているとのこと。
「いたずらっていっても、注文した料理をひたすら食べさせようとするってだけなので、怪我なんかの被害はないんですが」
「噂が広まって、お客さんが気味悪がって来なくなっちゃって……今じゃあ昔からの常連さんと、一部のオカルト好きの人しか来ないの」
「まあ、いきなり食器が話しかけてきたらびっくりしちゃうものね……」
食器の妖精さんは1人(1組?)だけで、気分次第では現れない日もあるとのことで、どうやらわたしは運悪く当たってしまったらしい。いや、むしろ運が良いのかも。
「ウマイウマイ?」
「ん? オムライス美味しいかって? ええ、とっても美味しいわよ。妖精さんも好きなの?」
「ウマイウマイ」
「そうなの。お客さんが美味しそうに食べてるのを見るのが好きなのかしらね」
「……あ、あのっお客様!」
「はい? あっすいませんわたしだけ名乗ってなくて。わたしはベルベルといいます」
「ベルベルさん、可愛い名前……って、そっちじゃなくて! 今、妖精さんとお話ししてたように見えたんだけど……」
「あーそっちね、そうよね! えっとね、わたしは『フェアリー・テレパス』っていう、妖精さんの言ってることが分かるスキルを持ってるの。それでこの子たちが言ってることもなんとなく理解できるのよ」
まあそれでもふわっとこんな感じかな? くらいなんだけど。なんだろうな、海外の子供がしゃべった言葉を翻訳した内容の字幕が頭の中に入ってくるみたいな。
「それって……すごい! そんなスキルを持ってる人なんて聞いたことない!」
「え、そうかしら? 他の人には役に立たない能力って言われたんだけど」
「そんなこと全然ないよ! ……ねえ、ベルベルさん」
「ん、な、なにかしら?」
ホップちゃんが前のめりに手を握ってくる。な、なんだか距離が近いわね、この子。
「ウチ、前みたいにお店をもっと繁盛させたいんです! でも妖精さんをどうにかするのも違うかなって思ってて……」
「そう……」
たしかにここのお店のオムライスは絶品だ。妖精さんの事でちょっと怖がられてるのかもしれないけど、もっと人気になって繁盛しても良いはずだわ。
「だからその……妖精さんとお話しできるベルベルさんに助けてほしいんです! ウチのお店のコンサルティングをお願いします!」
「えっ……!? わ、わたしがお店のコンサルタント!?」
「タベテタベテ」




