入学
パイシーズ侯爵家の学園、"魔導学園"は試験は無い。貴族が10歳になると入学して、他にはパイシーズ侯爵家から送り込まれた平民が入学するだけだ。
他よりは短いが密度の高い教育を4年間受けてきたルーレシア様と自分は学園生活もそこそこやっていけそうだった。
……あはは
………うふふふ
…………おほほほほ
何て、貴族は優雅に過ごす物かと思っていたが、うん。まあ、優雅では有るが基本的に勉強漬け。普段の生活から振る舞い、仕草までも見張られ評価される。気付かない者も居るが。
「おい!そこの」
「はい」
「お前は何処とも知れぬ下賎な血の者だそうだな」
ざわざわ
「なんだって?」
「ああ。ヤウ嬢は元孤児だそうだ」
「はい」
「ふふん。そんなお前にこの、サジタリアス侯爵家傘下のイーレ子爵家ヨハン様が仕事を命じてやる。こっちに来い!」
今はヤウも同じ子爵令嬢なのですが。えっらそうに。
「お断りいたします。この、ヤウ・メシエはパイシーズ侯爵家令嬢ルーレシア様の命を受けておりますので。では、失礼します」
侯爵家の方が上。その令嬢の命令を子爵家子息ごときが覆せる筈がない。
「ふん!そのルーレシア嬢も孤児の中から拾ったそうじゃないか。本当に貴きパイシーズ侯爵家の血を引くかも怪しい。それより俺の命令がきけないのか」
呆れてものも言えない。いや、ここで何も言わなければ私も不敬が問われる。面倒くさいなあ。同じ子爵家なら多少暴言を吐いてもいいが。
「今の言はパイシーズ家の侮辱でしょうか。この事は報告し、正式に抗議させていただきます。サジタリアス侯爵家傘下ヨハン・イーレ様」
侯爵家から侯爵家へお前の所の配下が侯爵家に暴言吐いたんだけどどういう教育してんの?って伝わる。うん。一大事だな。ヨハンにとっては。
「なっ!こ、こここ、侯爵家は関係無いだろうが!」
ここここ。鳥かよ。
「私の主人であるルーレシア・パイシーズ様を侮辱したではありませんか」
あ。野次馬に平民のが混ざってる。アイコンタクト、これで侯爵家の方に一応報告がいくでしょうが。
「では、これで」
「なっ!おい!待て」
こんなのが、あっちもこっちもそっちでも起こる。大体どんな仕事だ!お前達にも従者は居るだろうが。頭悪い奴の従者は同じように頭悪いって?諫めろよ。
配下を纏めるべき公爵、侯爵家の連中はパイシーズ家の双子とたしか、5つ上にアクエリアス侯爵家の令嬢、7つ上にヴァーゴ侯爵家の子息が居たはず。だが、その4人は12家子息令嬢会議とやらでちょくちょく居ない。
まあ、12家で仲が悪いとなれば国が分裂するし、子供とはいえ些細な喧嘩が学園では大事になったり、交流は大事だが。
お茶会ならヤウが侍女かお友達としてルーレシア様に付くが、会議となればルーレシア様にはきちんと政治的な補佐として、側近の伯爵家の令嬢が付いて居るはず。
ああ。後で会議の内容は聞いて置かないと。ほとんど内容の無いお喋りでもたまに大事な事が紛れて居る。
そして、ルーレシア様と離れて居る間に噂やその事実確認、家への報告書を纏めないと。学園でもヤウはちょっと浮いて居るからこそこそと噂集めをしないといけない。ああ。さっきのバカとのやり取りがもう広まって。雀どもが。
本当に時間が足りない。いや、無駄じゃないけど余計な時間が多すぎる。もっと魔道具達の知識が欲しい。基礎はともかく500年は魔道具を作って来た自分が現代魔道具について10歳と知識がほとんど変わらないって。
少し仕えるついでに貴族を学べればと思っていたが、たった4年なのにとても長く感じる。早く解放されたい。ちゃんと学ぶ所は学ぶが。
ああ。また。
足引っ張りたいのは分かるが、もっとやり方無いかなあ。貴族の癖に。こんなことやらされる使用人の方が可哀想だ。靴箱にスライム。靴は最初の一回以降ルーレシア様の分もインベントリにしまって有るから消化される事はないけど。
ふむ。今度はどんな報復をしようか。前回は消化薬を首謀者の部屋に撒いて部屋を斑に溶かしてやったか。
ああ。取り込んだ方が早いかな。他の仲間が居るかもしれないし、少しでも貴族の考えを知れるかもしれない。
うん。少し騒がしくなるかもしれないが、7年もかけて子供として来たんだ。前回と同じだ。例え疑われたとしても、出来る筈がないと思われるだろう。外部に依頼したとしても証拠は無い。大丈夫。




