貴族
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「御当主様がおいでになられました。ヤウ様もこちらへ」
「……はい」
……何でここに居るんだっけ?
ノック。
「……お連れしました」
応接室?何か豪華な部屋に入る。入室の許可の声は重低音。
「入りなさい」
「失礼します。ヤウ様どうぞ」
「……」
「 」
「……」
やっぱ何か失敗したか?挨拶無しだったから?
だが、こちらは庶民だ。マナーなんて知らない。そっちが呼んだんだろ。
「やーちゃん!」
ルー。どこのお嬢様かと思っていたけど。本当に見た目は深窓のお嬢様なのに。
「……ヤウ。そちらに座りなさい」
団長様、再起動。
「……」
返事でもすれば良いのだろうが、ここは緊張している事にしよう。別にいい加減命令されてばかりで不機嫌なのと関係は無い。
「君がヤウちゃんかね?」
重低音が再起動。
これは、挨拶しろって事か?確か目下の者が先に名乗るんだったか。
「ヤウです。はじめまして、貴族様」
孤児は社会的地位は低く、円滑に事を進める為相手をおだてる話し方、簡単な敬語を学ぶ。
「ああ。私はキャンサー公爵家当主、アクベンス・ゾディ・キャンサーだ。知っていると思うがこっちが嫡子のアルタルフ・キャンサーだ。それから」
重低音。アルタルフ様と同じ赤褐色の髪に深い青の目。ちらっと視た限り85歳、Lv112。魔人種で耳が尖っている。固有能力は【増幅】効果はそのまま振り幅を増加させる。対象は他人も含め感情や音等。煽動向き。
「パイシーズ侯爵家当主、ファルグ・ゾディ・パイシーズです。美しいお嬢さん。こちらが嫡子のアルレシャ、知っているだろうが長女のルーレシアです」
目も髪もエメラルドグリーンの優男。74歳Lv103。闘人種、混人、イルカ。【反響】効果は声をかけた相手の感情理解。
……公爵の方が立場は上じゃないの?何で先に名乗ったの?
次男じゃないの?え?嫡子?
と言うか、Lv100超え?
「やーちゃん。来てくれて嬉しい!私いきなり連れてこられて不安だったの」
どう返せば良いか本当に分からない。お嬢様扱いか、友達扱いか。
「ルーレシア様?」
「……やーちゃん?」
「ほう」重低音。
「これは、これは」
大丈夫なのかダメなのか。不安になる反応止めて欲しいなあ。これだから貴族は。
「シア。僕の所に戻っておいで?」
「アルさま?でも、やーちゃんが……」
アル様は2人居るが、当然ルーレシアの兄の方。1日も経っていないはずなのにさすがは双子。
「……」
「ふむ。ルーレシアもこれまでの生活から引き離されて不安でしょうし、……ヤウ嬢?ルーレシアの侍女として雇われるのはどうでしょう。勿論お給料も出ますs」
「待て!」
「うむ。最初に目を付けたのはアルタルフだな?」
「その通りです。公爵様。許可さえ頂ければ養子にしても良い!」
「なっ!それこそ公爵家のお世継ぎとも在ろう方がそのような。ヤウ嬢も私の娘と仲が良い事ですし、子爵辺りの養子として後の側近とすれば貴族としての重責も軽い物となるでしょうね?」
ううん。公爵様はとりあえず様子見。観察力や経験でアルタルフ様は侯爵様に負け、って所だな。
ヤウが多少なりとも貴族を理解しているとみて、重責云々と孤児には妥当な提案とした。
焦りすぎたアルタルフ様の方はまあ、権力まで持ち出したがその権力者が、奥様も居ないのに跡継ぎが養子、しかも少しも貴族の血をひかない女を何て通るはずがない。
そして、提案とすれば、ヤウの意志が考慮される。自分としても、侯爵の提案の方がまし。
よって、
「ルー、ルーレシアと一緒が良い、です」
アルタルフ様の意見を否定しないように、しかし、侯爵様の提案を受ける意志を示しつつ、子供の意見のように濁して言う。
孤児は大変だ。
ついでに、成り行きを見守っていたルーの機嫌もとれる。
「やーちゃん……」
侯爵様は勝利の笑みを微笑みに隠し、アルタルフ様は明らかに悔しそうだ。だが、ここで伏兵が。
「うむ。ヤウ嬢はルーレシア嬢と共にいられるようで何よりだ。ところで、アルタルフもそろそろ相手を見つけないといけなくてな。私としてはルーレシア嬢など良いと思うのだが」
「父上!?」
「なっ!」
「12家同士であるし、16歳差なぞありふれている。勿論、今は婚約ということで、ルーレシア嬢も家族との交流も有るだろう。結婚はルーレシア嬢が30辺りで」
「……」
公爵の提案は侯爵にとっても良い物だった。
議会で12家に差は無いとは謳っているが、実際は公爵と侯爵には大きな差が有る。6歳まで孤児院で育ち、代々続く呪いにかかり解呪したとはいえ気にする貴族は多い。二度と無い良縁では有る。
「父上!ですが」
「なんだ?好きな女でも居るか?」
「……いえ」
「では黙っていろ。そもそも、事件解決に奔走し、領都から手ずからエスコートしたではないか。これを機に落ち着きを持ったらどうだ」
「……はい」
確かにアルタルフのルーレシアに対しての扱いは貴族にあるまじきものだった。
「……ですが、我々侯爵家はともかく、公爵家に利などありませんよ?それに、失礼ながらご子息は少々自由な方のようだ。婚約した結果、見向きもされない、挙げ句に他に好きな女が、等と。80年程前の傾国を知らない訳ではないでしょう?」
「うむ。アルタルフの信用のなさは貴族として致命的だな。勿論婚約によって、アルタルフの成長を促す目的もある。長男が死んだ以上跡継ぎとして政略を知らなければならん。だが、公爵家は魔導国の"魔工業"、量産計画としてパイシーズ侯爵家の"教育"と提携したい事が有る。今、魔導国では"開発"、"改良"に人が流れているが、市場に出回る紙等が現在の価格を保つには"魔工業"による量産が~」
「要は教育を短期、最低限に絞った専門機関を作ると言う事でしょうか。ですが他家が、~」
「ああ。それについては、~」
~~
結局、侯爵は新しい教育に乗り気になり婚約は結ばれた。
貴族の交渉術は参考になる。自分は基本的に偽って生きて居るから。
こうして、綺麗なお人形の取り合い、高貴な者達の遊戯は結果だけ見ると公爵様の完全勝利に終わった。
ついでに、公爵様によるアルタルフ交渉術の見極めも。
アルタルフは公爵様は忙しいので、領都、第四都市を代理運営する先代様(145歳)、先々代様(200歳)、先々々代様(254歳)にみっちり学ぶ事が決まった。
進化する為、貴族当主の平均寿命は300歳。
ちなみに、結婚適齢期は20~50。
注意。ファンタジーです。
魔導国は12人のトップによる議会制。
議会参加資格(公爵、侯爵家当主)がゾディと言うミドルネーム?を名乗れる。
当主になるのに進化しないといけない。貴族は高Lvな者に教えて貰えるのでレベルアップは速く、まじめに努力すれば70歳前後には進化出来る。ただし、ハードスケジュール。
世界的に見ても、高Lv者が弟子達を育てる。弟子達は高Lvになる。さらに弟子達をとる。高Lv者増える、の繰り返しで昔より進化出来る者は増えてきた。
しかしその分、弟子入り出来た者と出来なかった者、努力しない者と格差は広がった。




