容姿
ヤウは上街に来ていた。ここでの上街は貴族やそれに類する者、称号持ちが住む区画をさす。
反対にそれ以外の区画はまとめて下街と呼ばれる。
ちなみに、下街=下町=花鳥。その対として上街=風月と呼ばれる事もあり、庶民を花や鳥、称号持ちを風、貴族を月と称する事も有る。ちょっとした言葉遊びだな。
現実逃避はここまでにして。
「……」
「そこまで怯えなくとも、昨日の事情聴取とかだけですよ」
「詰所……」
3歳の時に保護された時は下街の詰所だった。しかもどうしてえらい人の側近っぽい人が来ているのか。
「今回は少々公に出来ない事も含まれています。昨夜はあなたの体調も加味して孤児院に預けましたが、口止めの為にも早朝に既に事情を知る人間が迎えに来る必要があったのです」
口止め……。
「……」
「ああ。いえ。口止めと言っても契約書にサインして頂くだけですよ。それに、あなたはルーレシア様が侯爵の人間だとご存知でしょう?」
まあ、あの人さらいが大騒ぎしていたから。
「……ルー」
「……あなたと仲が良いと聞きました。ルーレシア様は貴族。お互いもう会うことも無いでしょう」
キャンサー公爵家の家にやって来た。
が、
「アルタルフ様がルーレシア様を伴って第一都市へ?……!(あんのバカ主がルーレシア様は餌か)」
「……ルー。……第一都市って」
選ばれた者(金持ち)しか入れないという、総魔道具仕掛けの都市か。
「……ヤウ殿も行きませんか第一都市へ。(正直ヤウ殿の容姿は貴族の目を惹きすぎて危険なのですが)」
Lvが高ければ容姿は良く見える。しかし、見る側のLvも高ければ所詮地の容姿に左右される。
だからLvの高い者程最終的に地の容姿を重要視する。
そして貴族は幼い頃から高Lv者から教育を受けるので若くとも高Lvな者が多い。だからこそ、ヤウの容姿(実際はアホ程Lv高いだけ)に惹かれる。
貴族は相手が孤児ならあんまり遠慮しない。神殿に目を付けられない程度に強引に、子供相手に〈話術〉で言いくるめてでも連れ去られる可能性は高い。
「……」
第一都市、いつか行ってみたいと思っていた、魔道具の都市の頂点。特にゴミの変換魔力化処理施設が。
「……はあ。では、準備を。……ああ、お前。孤児院へ連絡を、~」
第一都市アリーズは魔導国の首都であり、魔導国成立に当たり作られた世界最大の魔道具である。第二~第五都市はかつての魔導都市の衛星都市で、第一都市より1日の距離だ。
魔導都市自体は第一都市をすぐそばに作った為、魔物と人口の関係で第一都市が完成次第解体されたようで、跡形もない。それどころか、完成された第一都市をみて魔導都市を旧都とまるで黒歴史であるかのように恥じ隠したらしくどこに有ったのかも分からないそうだ。
1日かけての魔車での移動中、貴族についての注意を受けていた。
「ヤウ殿、貴族と言うのは要するに偉いのです。だから、命令する権利がある。勿論それに伴う様々な義務も存在します。むしろその義務は魔導国というものに非常に重要なもので、~。だからこそ権利というものが、~」
~~
「……」長いなあ。
「~はっ。……ごほんっ。とりあえず、キャンサー公爵家とパイシーズ侯爵家の客人であるあなたに手を出す者は居ないでしょうが、なんだかんだいちゃもんを付けて連れて行かれる可能性があり、それに身分が孤児であるあなたは逆らえません。私達から離れないようにして下さい」
「はい」
「来たか!」
「来たか。では、ありません。アルタルフ様。この都市は国中の貴族だけでなく国外からも貴族や称号持ちの方々が観光に多く訪れます。そんな所へヤウ殿を来させるようなまねをされて何を」
「分かってる。ヴィル、心配するのも分かるが、話が長くなる。まずは中へ。父上がもうじき帰る」
「……。かしこまりました。ヤウ殿は」
「ああ。伝えてはある。……とりあえず、侍女に」
「身を清めてさせていただきます。お着替えもご用意しております」
「ええ。頼みます。ヤウ殿はそこの侍女に付いていって下さい」
「……うん」疲れた。
って身を清めるってシャワーか!
孤児院の時は水浴びして[クリーン]で終わりだった。
嫌!そんな他人の居る所で無防備過ぎる。
「や~!やだ~!」
「ヤウ様。これから御当主様に会うのですよ。大人しく、ちょっ」
「[クリーン]。これで良いもん!」
「……分かりました。今回は時間がありません。一応[クリーン]。次は服を……」
「自分でする!」
「まあ、子供らしく簡単な物ですが、ボタンは」
「大丈夫!」
「……こちらです」
「あっち向いて!」
「はい」
着替えた後は問答無用で髪を整えられた。
本気でミナゴロシニシテヤロウカと思ったが、どうにか我慢。
そもそも自分(976歳)の十分の一も生きていない相手(80歳)だ。自分のLvなら単体で勝てる人は居ない。ここで殺して集団と敵対する方がまずい。
と言うか、700年のボッチ生活と3年の自由な子供生活で殺意の沸点?が低くなってるのを自覚した。殺意って冷たいイメージだから凝固点?
つらつらと無駄な事を考えながらちょんとソファーに座って呼ばれるのを待つ。一応緊張して居るのかぴんっと背を伸ばして身を硬くしている目の死んだ美少女はまるで着飾られたお人形だった。
基準の問題。
低Lvの容姿の人がちょっと容姿の良い人を見る。
「かわいい~」とか「かっこい~」とか
高Lvの容姿の人がちょっと容姿の良い人を見る。
「普通」「自分と同じくらい」
みたいな。
今回
高Lv(Lv100)の人(貴族)の誰より高Lv(Lv400)な人(孤児)
反応が子供っぽい主人公。対人関係を放棄、又は心のこもらない演技ばかりして来たせいで、まるでそこら辺が成長して無いんだなと憐れんで下さい。
後は、知識や情報を求めるならともかく、元々あんまり人の話は聞かない。




