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講師達の期待を裏切り一つずつ学年を上がっていく。なぜかそれも「基礎を大事にしているのか」と高評価。
図書搭は最近は片っ端から読むのではなく〈鍛冶〉と他のスキルを中心に進めている。特に〈結界〉と言うのが有るらしい。
実際に身体の周りに魔力を張って少し離して維持。
……これ〈魔力操作30〉無いと無理じゃない?なんとか習得は出来たが。
〈結界〉はレベルで範囲が変わる。個数、形は範囲内なら自由。おもしろいスキルで、結界の他のスキルによって様々な性質も持たせられる。〈回復属性〉で結界内はHP回復とか。〈魔力操作〉か〈盾術〉で結界強度上昇とか。その分MPはがっつり減っていくが。
自分の〈結界〉自体はレベルが低いが、〈魔力操作〉のお陰で自分だけなら早々攻撃は通らない。但し結界の場所は動かない。
問題は慣れてきた5年の時に起きた。
中等と呼ばれ、学園も意識しているのかその最初の学年、5学年はまず初等のおさらいから入る。だから、ここから学園に通う人も居る。
その中に神子の子供が居る。
神子の子供特有の(普通の子供と違う事から目を反らす為)鈍感で(仲間外れを認めたくないから)空気を読まない、面倒くさい子供。
しかも、大体親の成功を見ている(失敗した神子は死んでる)ので何故か自信満々。元の世界の影響か、神子は教育熱心なので、地味に優秀な子供だ。
別に関わらなければどうでも良いが、がっつり絡まれた。
「あなたがサニーと言う人ですか?」
「……すみません。図書搭に行きたいの」
「質問に答えて下さい。あなたはサニーさんですね?」
断定。
「……そうだけど」
「心配性のパパが教えてくれました。あなた優秀何でしょう?僕と組みませんか?」
あるある。神子の子煩悩。正確には自分の思い通りになるオモチャって所か。
確か自分達の次が外国の小企業の従業員とその家族(20歳以上の人は成人したてに若返る)100人程、その次、一番最近の召喚者は確かまた日本人中学生同学生100人程だったらしい。
神子は精神的な成長はよほどの事が無い限り成長しないらしい。精神中学生が子供を持とうが父性何て無いだろうに。
「……あなた誰なの?」
名乗りもしないで組みませんか?って。
「おっと。申し遅れました。僕は慈慰救と言います。字はこう。両親が優しい子に育つようにと名付けてくれました。よろしく。サニー」
……慈慰救って。ジーク君11歳。黒髪黒目、いや、紫の目。まあ、美少年?ではある。が、Lvも自分より圧倒的に低く魅力的には感じない。Lv差って残酷。
まだ組むとも何とも言っていない上に勝手に呼び捨て。
別に同級生だし呼び捨てが失礼だとか言う気は無いけど何かイラッとする。
そもそも組むって何?将来優秀な人の確保?ファミリーへの勧誘?
まじか。
「……」
「ま、待って。どこ行くの?君に紹介したい人が居るんだけど」
はあ?
「図書搭行くの」
何かわーわー言ってるけど無視。
何あれ。あれがクラスメイト?うわぁ。
技術部門の何処の科だろうか。自分を誘うって事は少なくとも鍛冶科では無いな。
このクラスは成績優秀者のクラスだから優秀何だろうけどなあ。
ジークは錬金科だった。しつこいが、かわしていればそこまで強引ではない。
一応今までの学園生活で一緒に進級した人はサニーが筋力一番高いと知っているからしつこいジークをそれとなく引き剥がすまでする。ジークは何だかんだ悩みを抱えた相談できない人を助けるのは上手だから人気は有る。
何故そこまで自分に構うのか?
ジークの親を調べてみたが、思わぬ事が判明した。
技術部門のサニーと言う美少女は天才だ、と。
何せ凄い少女だと言う類いの噂が広まりきっていた。
まず自分は基本図書搭にこもり、たまに暇つぶしにこっそり外へ狩りに行く生活。長期休暇も親役を頼んだルベルト達に会わなくてすむよう他の町に行く名目でサバイバルしたり、鍛冶師の所へ短期で見学兼ねた手伝いに行ったり。
そういえば、自分が情報収集している時も思ったな。子供はお喋りだって。だが、ただのボッチがそこまで噂になるとは。
サニーは情報を集める時、基本悪評にしぼる。例えば、悪い講師、いじめとか。しかもたった5年でそう変わらないだろうと、取り込んだ講師の記憶を当てにし過ぎた。その上、蔵書の数に圧倒され焦り図書搭にかかりきりになっていたのもある。
後、推察通り子供からは遠巻きにされていて、噂は手伝いに行った鍛冶師や講師からだったりする。だから嫉妬とかからくる悪評は少なかった。
噂の中に称号持ち確実だろうとか、聞いたことくらいはある称号持ち鍛冶師の隠し子だとか噂は有った。ただ、赤い髪と目はそこそこありふれていて特定されなかった、若干の都市伝説ちっくになっていたからそこまで煩いのは来なかったようだ。
と言うか、噂を真に受けた煩いのが今回初めて来たようだ。
どうする。"星薬"時代は称号持ちなのを良いことに力ずくで追い払っていたが、非力な少女がそんなこと出来るわけも無い。一人平穏に学園を過ごすつもりが。学園に入るだけの財力と実力は多少注目されてもそれだけ、ただの一学生でいくつもりが。また、見通しが甘かった。
人と接する訓練も大事か?いや、そんな非効率な事。
そんな練習すると、数年何も出来ないで終わる。何だかんだこの5年で学園には慣れたんだ。大丈夫だろう。
何か勘違いした子
「……」
「そんなに考え込んでどうしました?」
「ジーク?」
「……ああ。サニーがどうしたら心を開いてくれるか考えていたんだ」
「むっ。……サニーですか」
「どうしてそこまできにかけるの?」
「あの子は……。いつも一人で過ごして居て、寂しくないはずはないのに強がって……、昔の僕を見ているみたいなんだ。昔の僕も一人だったし……」
「ジーク君は優しいですね……」
「ジークが昔は一人ボッチ!?考えられない」
「うん。お母さん達が僕を心配して集めてくれた情報でも、親は居るらしいけど長期休暇にも会わないし。虐待されてるかもって。もしかしたら僕の妹になるかもしれないし」
「ジーク君の妹さん……」
「じゃあ私にとっても妹みたいなものだね!」
「ありがとう。皆で仲良くしてあげよう」
実際、サニーは急遽親役を得なければならなかった為見た目は儚げな美少女。元の顔に儚げ成分と色を付けただけ。
端から見ると両親が兄ばかり気にして、かえりみられる事の無い少女が関心を得るため必死に努力して天才と言われるように。友達を作る余裕もなく、家族も会わない、独りぼっちの女の子。
当然ながらルベルト達はサニーに避けられているだけ。
後、図書搭の本の多さに焦って居るのが、必死感に拍車をかけている。




