53変換
希少なゴーレムで稼いで、何がしたかったかと言うと何も。
元々、"星薬"時代に稼いだからお金には困らない。自分は。しかし、金の冒険者ライとしては結構な散財をしているので、それ何処から出た金だ、と言う事になる。
やっぱり、魔剣士として〈魔力操作〉で黒に成っとこうか?試験とかで魔力纏うの見た奴らも居るし。
そういえば、ギルド職員が妙に強いのは、地下で訓練しているからだった。冒険者の来る時間帯には波が有るので、合間に訓練するらしい。壁の内で訓練する訳だから、MP切れるまでやっても大丈夫だし、短期間でそこそこまでならレベルを上げられると。
そもそも、ギルド職員は人気の職業で、特に称号持ちや黒の受付に出会いを期待して希望する人は多い。万が一、冒険者同士の喧嘩とか何か有っても身を守れるだけのLvも無いとなれないから受付に成りたいギルド職員の訓練意欲も高い。
「私?私は本が好きだから」
「それでこんな所に」
そこそこ通っていたら、色々話してくれるようになった。
「そうなのよ」
「……今日はHP関係のスキルについて」
「黒に成るのに〈HP回復〉が低すぎなんだっけ」
「速度で回避が多く、レベルが上がらない」
「〈HP回復〉は諦めたら?ソロなんでしょう?HP削るの前提スキルよりもっと、そもそも攻撃を受けないようにするとか」
「ん~。ああ。〈筋力〉か、それともやっぱり〈魔力操作〉か。でも、ソロだからこそ回復は上げたい」
「〈魔力操作〉良いじゃん。やっぱりライはそっち系だって。回復は焦らないで、先黒になろう!」
「……そうする。じゃあ、HP、MP関係のどこら辺」
「どっちも入口直ぐ右の棚からよ」
「分かった」
ある程度自分のスキルはバレるが、それ以上に他の冒険者の傾向が分かる。〈観察〉だけでは分からないスキルのとる順番、上げ方等、他の冒険者の情報収集が捗る。
とりあえず、HP関連スキル一覧。
覚えておいて損は無いからしっかり読み込みメモしていく。
〈HP回復〉
……
〈HP効率〉
効果、HP消費して発動するスキルの消費を抑える。
……
〈HP変換〉
HPをMP等に変える。HP-1→MP+1。
〈変換HP〉
MP等をHPに変える。MP-1→HP+1。
……
〈吸引(HP)〉
他者のHPを自分の物にする。
……
分かっていたけどいっぱい有る。
HPに有る物はほとんど、MPの方にも有る。
これ、〈HP変換〉か〈変換MP〉取れば、部屋でわざわざ自分のHP減らさなくても良いから〈HP回復〉上がりやすそう。しかもMPにすれば、〈錬金〉も捗る。
取り方は、
MP切れた後、無理矢理スキルや魔法を使おうとするとMPの変わりにHPを消費する。それを繰り返す。
どっちが取れるかは、本人の行動に依存か。
〈HP変換〉は疲れて居る時は疲労回復に、お腹が空いている時は満腹度の回復みたいにも出来るとか。
逆に〈変換MP〉は疲れる変わりにMPを回復したり。
本の通りなら自分は、〈HP変換〉になりそう。と言うかステータスに表示はないけど、筋力みたいに疲労度、満腹度みたいな項目は有るんだ。
近くにステータス関連の本が有る。いつかきちんと読もうと思いつつパラパラめくってみる。
満腹度、疲労度、睡眠度、……、疲労時回復度、睡眠時回復度、……、性格に基づくスキルの伸びやすさ、……
うわぁ。
完全に隠しステータスで管理されるのか。神様の人体設計図みたいな。
ふむ。自分の性格は分かる限りでは、臆病。性格臆病は耐性系が取れやすい傾向。好奇心の方が鑑定系ねえ。執着が感知系。
芯の有る人は水属性。
芯の無い人は風属性。
ふっふっふ。面白い。
っと。そろそろ時間が。遅くなると冒険者がギルドに集まり出すからな。
「資料は傷つけて無いですか?」
「ああ」
「……はい。大丈夫です。またのお越しを」
今日は、20日。おとなしくライのまま帰ろう。元々クモは週に3、4日だけど。新しいスキルが面白そう。
「ライさん?」
「……はい」↓
ギルド員さん。
「う。いや、珍しく遅い時間にみたものだから、その、飲まないか?アンネも一緒だし」
「……?」
アンネ、……アンネ?
「え。忘れた?試験の時ついってったギルド員だよ」
「……ああ」
「酷いです、リーデは覚えていたのに」
「リーデ……」
「……私の名前も忘れていたの。まあ、いいや。飲も」
「ライさん、行きませんか?」
「……分かった」
「別に無理して来る必要はないわよ」
「いや、無理して無い。ちょっとやりたい事あったけど今日じゃなくて良いし。美人2人のお誘いを断るのも……」
周囲で聞き耳をたてる冒険者の反感を買う。
「……。ライさんってば」
「……び、美人……」
「?そう言えば、もう一人は?」
「……ごほんっ。メルトさんね。別にいつも一緒に行動しているわけじゃないの」
「め、メルトはたまたま!一緒に試験の監督をしたでけで!べべべ、別に、そんな!」
「リーデ……」
「ふーん?……で、何処の酒場に?ギルド?」
「いえ、よく行くバーが有ります。ギルドからも近く、と言うか向かいの3階ですね」
「ギルドからも近いから、昔から私達だけでも良く行ったの」
「オレも行って良いの?」
「別に、お店は女子だけってわけじゃないから」
「~、でね……!」
「リーデは飲み過ぎだ」
「あはは。一応時と場合は選ぶし私と居る時しかここまで飲まないですから」
「直ぐそこがギルドとは言え女2人は危ない」
だからこそ自分も、男の格好を選んだ。
「大丈夫ですよぉ。秘密ですが、冒険者に会わない職員用階段も有りますし。心配してくれるんですかあ?」
アンネも酔ってるじゃないか。
「はあ。もう、付き合いきれない。帰る」
「待ってください。マスター、お勘定」
ここは、最後に纏めて支払う。
「ああ。マスター、これで足りるか?」
「大丈夫です。今、お釣りを」
「釣りはいらない。ほら帰るぞ、アンネ、……リーデはダメだな」
とりあえず、担ぐ。
「ライさあん」
「チッ」
アンネも担ぐ。
「じゃあ、マスター騒がしくしてすまない」
「い、いえ」
「きゃあ!……アンネ!リーデ!」
「ああ、知り合いか。持ってけ、はい」
「あわわ、何?何で?」
「なんだ!どうした!……お前……動くな!」
「チッ。酔い潰れただけだ」
「おい!」
「アンネ、リーデ?」
騒ぎだす。よっぽど、どっかに捨てて来ようかとも思ったが一緒に飲みに行くのも見られている。何か有っても困る。
「待て!……すまん。どう見ても酔い潰れて居るが、一応こっちに来て貰えるか?」
冷静そうなのが来たが、
「はあ?ここまで運んでやったのに何故?」
「お前!何かしたんだろ」
「待ちなよ。ちょっと……」
「……本当にすまん。騒ぎが落ち着くまでの休憩とでも思ってくれ。これ以上大きくはしたく無いだろ」
「……分かった」
「2人はあれでも黒の受付なんでね。経緯を聞いてこうか……」
~
「……じゃあ、酔い潰れた後は直ぐギルドに来たんだ」
「……そうだ」
「オッケー、酔うまでの事はお店の方にも確認したが、大丈夫だった。後で2人にも向かわせるが、詫びに俺の取って置きを出そう」
「……酒」
皮肉か?
「ははは。それ1本で大金貨7枚する本物だぞ」
「さすがだな、称号持ちは」
称号持ちとは分かるが、誰だろう?
「……おっと。紹介が遅れたな、サブマスの"賢隠"アドラだ。よろしくな'月'のライ」
サブマスはギルマスの欠点を補うのが選ばれる。そしてここのギルマスは脳筋。しかも、暗殺者タイプ、苦手だ。
「よろしく。じゃ、帰る」
「ええ?ここで飲んでかない?」
「さっき十分飲んだんで」
「ライは全然素面じゃないか」
「疲れた。帰る」
「ええ~。取って置きのをせめて一口~」
「オレのだ!」




