39移動
移動しよう。
最近、人が増えた。
ここに来てからどれくらいか。
ステータスの年齢を見れば分かるが、実感としてとても短いように感じる。
ここでは、他者との関わりが戦闘以外に無い。
それ以外の時間が圧縮されたようだ。
独りと言うのが、どれだけ意味の薄い事か分かる。
それでもやっぱり、人は怖い。
たまに思う。
魔物は同種を襲わない。
ならば、自分もきちんと人になれば、襲われないのではないかと。
人に殺されかけたのは、自分が人では無いからだ。……と。
人はどうやって、警戒しなくて良い相手を見極めるのだろう。何人もの記憶を得ても分からない。
そうだ。前に、海溝都市に行きたいと思ったんだ。都市はともかく、海溝。海の中の土属性地帯。面白い魔物がいそう。
〈水泳〉とらないと。後は、〈水呼吸〉。人種は水中では呼吸でのMP回復ができないから、スキルで水からMP回復をしないと。火や風、土からのMP回復はそれぞれ〈○呼吸〉。魔法使いでこの呼吸系をとっている人が居るらしいけど、土や火を口から入れるのか?
〈水泳〉は泳げばとれる、〈水呼吸〉はどうやるのか。
ここは温泉郷の近くで、湖も有る。小鱗とかの記憶で〈水泳〉はもうレベル5だが、〈水呼吸1〉。
どうしようもなくなって、水に漬かって居たらとれた。
地球じゃないので、呼吸が出来なくてもMPが回復しないだけで死にはしない。但し、あらゆるスキルを使うのに普段は回復速度が上回る物も負担になる。感知系が代表だ。魚の魔物が来て、戦闘になれば、〈体術〉とかであっという間にMPが尽きる。
そうなれば、『MP切れ』でHPが減っていく。
[魔法]は、HPを消費して使うことも出来るが、スキル自体の効果は無くなってしまう。
一度〈水泳〉で潜って居たらMPが無くなって、HPは減りはしないが感知無しで魔物から奇襲され放題。〈水泳〉効果も無く、水面に上がれなくなった。
この時に〈水呼吸〉がとれて本当に良かった。また、数年水中暮らしになる所だ。
【キャラクター】で透明になって。透明ならば感知を持たない敵の襲撃が減る。
水中に[水壁]を横に置いて、足場にしての戦闘方法は……。MPが、まだ〈水呼吸〉が低く、そう長持ちはしない。
それに、〈水呼吸〉をとって、スキルの性質も分かった。
ここは湖だ。〈水呼吸〉の効率が良い。
海溝は海の中だが、土属性地帯。海なので〈水呼吸〉は使えるが〈水呼吸〉よりも〈土呼吸〉の方が効果が有るようだ。
土か。地面の中?しかも、土属性地帯でもないから〈水呼吸〉の時よりも時間がかかる。
……〈水呼吸〉もっと上げよう。
せめて、水中で〈隠密〉を使い続けられる程度に回復しないと。〈隠密〉が有れば、透明なのも相まって、敵の目もそらせる。人も魔物も。
そうしてやっぱり数年後、海!
海って何か生臭いからそんなに好きでは無いけど。
新しい素材や魔物を求めて!
どっかの森の近く。
「何!"天邪鬼"が消えた!?」
「はい。ここ最近、見た者は居ません」
「新しい開拓村がこれからって時に……!」
「どうされますか?微々たる物ですが"天邪鬼"が魔物を減らす事によるこの辺りの安全化、求道者"天邪鬼"との戦闘目的の実力者が集まり、その繋がりを求めて、商人が集まる。すべて、"天邪鬼"が居なければ成りません」
「しかし、その実力者はすでにこの出来つつある村に集まって来ている。どうにかしなければ」
「商人さん、猛者が集まるなら、闘技場とかどうっすか?」
「闘技場か……」
「闘技場ってこの世界に無いんすか?」
「神子殿。闘技場は200年程前までは有りましたよ」
「そうだ。神子殿、"天眼"が壊してしまったがな」
「"天眼"が壊した……。もしかして、この世界で闘技場って有ったらダメなんすか?」
「いいえ。昔私が生まれる前、冒険者達の中ではダメージを与える事が重要だったそうです。しかし、"天眼"が索敵や補助、回復魔法使いの重要さを訴えました。その時、その武力のみを競う闘技場を建築師達に壊させたそうです」
「今は逆転して、隠密と術式の町、忍者郷になっている所だ」
「ああ!あの。じゃあ、闘技場はダメっすねえ」
「いや、良いアイデアだ。それにしよう。"天邪鬼"が居なくなったのなら、森も切り開き闘技場を作れ!施設のアイデアは神子殿に任せる!今度こそ実力者が居る内だ、時間との勝負だ」
「はい」
「ええ!でも、問題が有るから闘技場を壊したんすよね」
「"天眼"は短気な男だ。八つ当たりも有っただろう。それに、"天眼"が死んでまたバランスが崩れつつ有る。昔とは逆に直接魔物と殺り合う者を脳筋と蔑む風潮だ。闘技場で派手な試合を見せればちょうど良い」
「成る程、分かったっす。血沸き肉踊るコロッセオ風闘技場、アイデアは任せるっす!」
この世界は平面で、神様の気分で幾らでも土地は増やせる。資源(魔物)も尽きない。
開拓は推奨され、人を増やし、栄える事こそ神殿の有力な教えだったりする。
神様が人贔屓。




