37求道者
会話のみ。
主人公はほとんど出ない。
「ガアアアッ!」
「……」
「ギッ。……グァァアアア」
「…………」
「ギギャァァ」
「あ、あの」
「大丈夫だ、分かっている。"天邪鬼"だ」
「本当に大丈夫なんですか?いえ、冒険者の皆さんの実力を疑っているわけでは有りませんが……」
「大丈夫だって商人さん。"天邪鬼"はこちらが何もしなければ襲わない。むしろ、街道沿いの魔物を蹴散らしてくれる」
「ええ、噂では知っています。未熟なテイマーが逃がした名を付けた小鬼が出没すると。しかし、人の集団に襲いかかった事も有るようですが」
「ああ、見た目は小鬼、ステータスも小鬼。なのに異常に強いと言うことで、研究者どもがちょっかいをかけた。言ったろ?こちらが何もしなければ襲わないと」
「攻撃をすれば反撃もするという訳ですか。成る程、当然ですね。異常……偽装系ですか」
「ああ。まあ、小鬼何かじゃあねぇな。鬼系ランク4のドッペルゲンガーってのが居るんだが、それじゃあねえかってな」
「ランク4がこんな近くに」
「あまりに街道に近いってんで称号持ちを集めて狩るって話も有ったんだが、人に紛れる名付きの魔物も居るのは知られているし、ここの"天邪鬼"も積極的に人は襲わねえ。他の名付きの魔物を刺激するのも避けたいって手を出すやつは自己責任って落ち着いたな」
「はあ、では求道者と言うのは?」
「"天邪鬼"って言うのは名前であって他の名付きのようにその魔物を端的に表す名称じゃない。だから称号に似た物だ。非正規のな。"天邪鬼"はどうも〈体術〉での真っ向勝負を好む様でな?更に無口だ」
「ああ、分かりやすいですね。どうやら、本当に大丈夫そうです。私達が本当の意味で被害者に成らなければ」
「おいおい。"天邪鬼"の気が変わったらってか?縁起でもないこというなよ。商人さん」
「ははは。すみません。冗談が過ぎたようです。……ところで皆さん、~。~」
~
「……!」
「おーい。"天邪鬼"出てこい!この俺様が勝負してやる!」
ガサッ。
「!……来たか。俺は"軌蹴"のディナン様だ。……お、おう。お辞儀か、丁寧にどうも。……し、勝負だ!」
「……」
「本当に無口だな、名乗りもしないか。いくぞ!」
「……ッ!」
「おらおら!」
「……」
「すばしっこい奴め。だがリーチの差で攻めきれないだろうが!」
「!」
「俺様の称号の由来だ!お前は誘導されたんだよ!俺様の描く軌道の通りにな!」
「!……グ」
「ッチィ。軽い。後ろに跳んだか」
「……」
「まだまだ!」
「……!」
「ぐうっ。重てぇ。筋力幾つだよ!」
「……」
「こいつ!気づいて」
「!」
「危ねぇ!……!はやっ!」
「……!……シッ!」
「があ!……この!っうぐ!……」
「……」
「……」
~
「~。~でなあ。しょ、!……誰だ!」
「……人、ですか?」
「こいつは!"軌蹴"さん!」
「これは酷い。"軌蹴"さんと言えば〈体術〉特に足を使い、長いリーチと先読みの見事さで有名な実力者ではありませんか。これはいけない、HPが危険だ。『骨折』も有るようですし、この魔法薬を」
「商人!ポーションの方はないか?即座に回復させるなら〈錬金〉製の方が良い」
「有りますよ。これもどうぞ」
「ポーションと、気前が良いな。"効薬"製じゃねえか」
「ええ。称号持ちには恩を売っておくべきでしょう」
「そうか……。なら俺も、骨折解除薬。"星薬"製だ」
「おや、ではこの"効薬"製の方は要りませんね。状態は『骨折』と『打撲』位です。"星薬"製とは、珍しい。もう販売されて居ませんよ?売るところに売れば買った時の何倍にもなるのでは?」
「そうなのか。"星薬"のはまあ生きてる頃に買ったからな。称号持ちの薬なんて買えないさ。当時はまだ金なんだ。"星薬"はなあ、俺でも買えたから。多分持ってる冒険者は多いぜ、いつかのためにってな。それに、今は称号持ちに恩を売っておくのが優先だろ?」
「ほう。では、冒険者の方に声をかければ持っているかもしれないと」
「止めとけ。転売する奴ならもう売っているさ。まだ持っている奴はあれだ、愛着って奴だ。世話になったからなあ。黒でも使えるLvだし」
「そうですか」
「……んん」
「お、"軌蹴"さん起きたか」
「ここは……」
「私の魔車です。私はマルギット商会のヘクトールと申します。"軌蹴"さんは道で拾って治しました」
「おう、俺はルッツってもんだ。黒だな。状態は大丈夫か?」
「状態は特に無いようだ。助かった。俺様は"軌蹴"のディナンだ。……"天邪鬼"は俺様に止めをささなかったか」
「おいおい。"天邪鬼"に挑んだってのか?それで負けた?"軌蹴"さんが?」
「それで、無事だったんですか」
「ああ。正面から挑んで返り討ちよ。〈体術〉自体は俺様より下だったな、たぶん」
「商人さん、一応きちんと礼儀を持って挑めば生きたまま街道に放り出されるらしい。〈体術〉はってドッペルゲンガーはステータス器用とMPよりだよなあ」
「それ、今回みたいに誰か手当てしないと死にますねえ」
「本当に助かった。ありがとう。ありゃあドッペルゲンガーでもねえ。ランク5だな。じゃないと俺様が速度に負けたのが納得いかねえ」
「速度ですか、確か擬態スライムが若干速度に寄っていましたね」
「擬態スライムか……それもランク4だな」
「いや、筋力も拮抗……!」
「どうしました?」
「いや、筋力でも思えば負けていた。そうだ、動きはぎこちないと思ったんだ。ありゃあ手加減されていたなあ」
「!称号持ちに手加減って」
「そう言えば、〈体術〉は低いと言っていましたね。レベル上げ、ですか」
「そりゃあ、……まさしく求道者だなあ」
「俺様は練習相手に使われたってか。くそっ!次は負かす!」
小鬼→剣鬼等(人が置いていった道具を使う鬼)→人鬼→ドッペルゲンガー(幻鬼)
人鬼は人に似ているので注意。
スキルに技術系が多い。人鬼が複数の場合、連携してくる可能性あり。
ドッペルゲンガーは実は通称。
幻鬼。幻覚で、自分か親しい人に見える。
幻覚で他の魔物、鬼系に見せる事も出来る。




