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異世界で生きていく  作者: ゆう
独りで生きるのは大変
35/156

32温泉郷

長くなった

温泉郷に来た。


ああ、なんて豊富な種類の素材!


いや、薬草等薬の基礎になる素材は薬都の方が多いのだけど、火属性と水属性の特殊な効果を持つ素材が沢山ある。


ああ!薬都で買うと小金貨3枚はするのに、小銀貨5枚なんて。


あっちは、あのLvで大銀貨!

冒険者の質も良いなあ。


そんなぁ。待って、それは薬都ではそんなに知られていないけど熱耐性系の薬の……!火属性地帯に行く冒険者に必須でしょう!?めっちゃまとめ売りされてる。

薬都周辺はのっぺりした気候、暑くもなく寒くもない。『熱中症』にも効くが、必要が無いとあまり作らないよね。




そして逆に魔法薬がとても高い。

冒険者が多く需要は多いのに、薬都よりも圧倒的に薬師が少なく、供給が追い付かないようだ。

薬草も高いが、それ以上に薬が高い。正直ぼったくりだ。


薬師も知識は必要だ。まあ、素材を細かくして混ぜ合わせれば何かしら薬は出来るので、試行錯誤していけば誰に教わらずとも出来るようになるが、それにはお金もかかる。


よって、知識を持つ者で独占してしまえば値段は際限無く高くなっていくだろう。


そして、怠けているのか効果は微妙。一応余りあるお金で高Lv素材を使っているのか薬のLvは高いが、このLvでこの効果は正直無い。さっき大量に売られていたのを使えば効果は上がるのに。


「誰だ……。その手に持っている薬買わないなら退いてくれ……」


無駄に広い薬店で、薬を握り締め〈解析〉していたところ、何か、テンションが低い声に振り向く。


「ごめん」

確かに、他の薬は売り切れてこのHP回復薬が最後だ。


「ああ……。店主、これをくれ……」


「まいど、ありがとうございます」


薬の代わりに男をじっと見てみる。くたびれた感じだが良い男だ。自分よりもLvが低いので〈観察〉が通る。


「黒か……」呟いて注意を引いてみる。


「?お前は……」


「ふん。冒険者は実力主義なのだったな。〈観察〉と〈隠蔽〉と言う点で自分が勝っていただけだ。まあ、自分は冒険者じゃないが」


「そうか……。なあ、さっき薬も〈解析〉していた様だが〈解析〉も高いのだろう?視て欲しい奴が居る。対価は払う」


急にずいぶんとしゃっきりしたな。

「視た所で何が出来ると言うわけでも無い」


「それでも、魔法薬や回復属性魔法でぎりぎり命を繋いで居る状態なんだ。俺達の中でもLvが高くて、今、他に視れる奴も居ない。頼む……」


この町には解析系特化の称号持ちは居ないのか。

まあ、どんな状態か分かればそれに合わせて薬は買えるな。

「お前よりもLvが……。称号持ちか」


「ああ。この冒険者が集まる都市に称号持ち冒険者は20人、その中の1人"守壊"だ。だから、」


称号持ちは一般的に憧れられ優遇される。

「自分には望みがある」


1枚の紙を見せながら言う。


「ああ、出来る限りの事はする」


「ん。契約成立だ」


紙、契約書に自動で名前が書かれ、契約は成される。


「え……」


「ふふん。称号持ちの契約書だ。そうやすやすとは破れない」


「いや、称号持ちって、しかも"せい、」


「ここで言うな」

ぼったくりの薬店の中だぞ。


「……そうだな。付いてきてくr……ださい」


「ふん」

称号持ちの立場は分かって居る。馴れ馴れしくするつもりもない。





「ここだ」


「立派な建物だが、丸々ファミリーの物か?」


「ああ。……はい。俺達のファミリーはこの都市でも5指に入る勢力だ、です。称号持ちも3人居ます」


「ほう、黒を使い走りに出来るわけだ」

冒険者が集まると称号持ちも多いな。薬都も薬を求める冒険者で多いのかと思っていたが、流石は冒険者。保険()よりも冒険(危険地帯)に集まるか。


「付いてきてくれ。一応俺もファミリーでは上位だ」


「まあ、80歳でLv90を超えて居ればな。有望株だろうさ」




「……着いた」


まあ、見知らぬ人がファミリーに入り込んだんだ。いくら上位者が連れ込んだとはいえ、弱った称号持ちの前には簡単には近付けない。何人かの冒険者に囲まれ、ついでに〈隠密〉持ちも潜んで居る。


「アイク、本当に大丈夫なのか?」

アイクは自分を連れてきた冒険者。

何人かの冒険者がアイクに話しかける。自分は警戒はされているが放置だ。


「多分。契約もしたから視ては貰えるはずだ」


「契約って、条件は?報酬はどうしたんだ」


「大丈夫だ。ファミリーに迷惑はかけない。─自分の出来る範囲でなんでもする─と」


「はあ?お前、意味分かってんの?このファミリーからお前が抜けると言う迷惑はかかるかもしれないんだぞ!それに……そういう相手にされるかもしれないんだ。あの、ちんちくりんに」


それは聞き捨てならない。

「ほう。この薬都から来た薬師様、それも"星薬"様に向かってちんちくりんとは良い度胸だなぁ?102歳、Lv88、少しの水、回復属性が使える剣士、リュメル君?」


「なっ!ファミリーの中だからまだいい物の大声で言いふらすなよ!この……!」


「止めろ!」


「ハインリッヒさん、起きたらダメです。HPが減り続けているんだから少しでも寝て回復量を増やさないと」


「こんなに騒がしくては寝ていられないな。リュメル、冒険者が力に訴えるのは古いぞ?冒険者は筋力は鍛冶師に劣り、器用は薬師に劣り、MPは錬金術師に劣る。勝るのは魔物を殺す術だけ。それすらも彼らに頼らなくては満足に行えない(死者が増えるだけ)


「……」


「まあ、それは冒険者を貶めすぎだとは思う。職人が必要とする素材は俺達が魔物を殺して得た物だ。しかし、薬師に向けてその殺しの技術を?どうするつもりだった。リュメル」


「……すみませんでした」


「謝るのはそこの薬師に向けてだよ」


「…………すみませんでした」


「ふん。その謝罪は何についてだ。まあそれはどうでもいい。とりあえずそこの……ハインリッヒこれを飲め」


「すまない。飲もう」


「ハインリッヒさん信用するんですか?」


「危険です。薬師と言っていました。後でどんな対価を要求されるか。アイクは身体を……」


「アホなことを言うな。何でもすると確約をさせただけだ、身体の要求なんてするわけない。見殺しにするのもあれ何でな、HP回復薬だ」


「本当HP回復薬……」


わざわざじっとり〈解析〉して確認する冒険者ども。


「チッ。そっちにも称号持ちが居るからって舐めすぎだろ」


「お前達!下がっていろ!アイクは残れ。~!ファーザーである、"守壊"からの命令だ!行け!~。」


〈隠密〉は残る様だが、視線を感じる。


「~、本当、申し訳ない。しかしそちらも内の陣地で挑発し過ぎだ。……!これ回復量が凄まじいな。一体Lvは……」


ファミリーのトップはファーザー、もしくはマザー。ファミリーが大きく成ればさらにグランドファーザー(マザー)が上に居て数人のファーザー(マザー)をまとめる。


自分をじっと見つめてくる。

「〈観察〉するな。お前ではまあ何日かかければ見えるかもしれないが」


「そこまで。Lvが高いのか〈隠蔽〉が高いのか。どちらもか」


「……さて、お前の状態だが、『飢餓』だな」


「はあ!?ステータスの状態は過剰活性と各種ステータス上昇(バフ)呪い(まじない)(永続)しか付いていない」


「後で説明する、回復薬は1時間持つ特別製だが時間は無い。その中の過剰活性と呪いが原因だ。呪いの方が付いた状況を説明しろ」


「あの回復量で、1時間。やっぱ称号持ち職人は出鱈目だな。……呪いか、1週間前に俺達はいつも通り火山で魔物と戦ったんだ。で、ちょっとしたミスで(バフ)と回復もいける魔法使いがやられちまった。運が悪かった。その魔法使いは最後の最後まで、パーティーの為に、俺にかかったバフが切れないよう自身の命を対価に俺に永続をかけた」


「ふん。で、その呪いがかかった時魔物の攻撃で『過剰活性』が付いていたと」


「お前なぁ、ちょっとは感傷に浸らせてくれ。……だから俺のこの状況が呪いのせいだと言うことは絶対に無い」


「回復薬があるからって余裕だな。さっきの薬の請求書だ」


「な!……安!な、なぁ。もう5、いや10本くれ。買う。くそう、もう2人のファーザーが帰ってこればファミリーの金使って買えるのに」


「さっきのは勝手にやっただけだから原価だな。静かな話し合いもしたかった事だし。薬都で作った時の薬だから安いのもある。追加で作れってなら、大金貨10枚って所が妥当か」


「それ、黒どもの2年分の収入……」


「称号持ちなら余裕だな。話を戻す。命が対価に(永続)とは、そいつは何歳何Lvだった?」


「……確か、100歳は超えてLv93位」


「曖昧だな。ならお前の状態はあと40年程って所か。生きていれば」


「!治せないのか?」


「ふん。過剰活性が呪いで状態に固定されている。過剰活性は本来ステータスを上げる代わりに貯蓄魔力を消費する。急激に腹が減る状態だ。その後、MP、HPと減り始める。状態自体も飢餓とかが付かない。良かったな。40年は老化もしないな」


「なに!老化はどうでもいい。呪いは、解けるのか?……いや、あいつが命を対価にかけた呪いだ。解いてしまうのも」


「……ハインリッヒさん。あの人もハインリッヒさん達に生きてほしくてその呪いをかけたんだと思います。解いて貰いましょう」

アイク!無口だな。居るの忘れてた。


「アイク……。そうだな、"星薬"?頼む。あ!過剰活性だけ解くとかは」


「無理だ。まずその命を使ったがっちがちに強固な呪いを何とかしなくてはいけないし、自分は薬師だ。呪いは阻害属性魔法使いの専門分野だな」


「そんな……!」


「なに!契約を結んだのでは無かったのか」


「契約したのは、視る所だけだな。良かったな原因が分かって」


「アイク?」


「……はい。対価は俺です。そう契約しました」


「まあ、契約時には自分が薬師だと知らなかったんだ。知識豊富な薬師に視てもらって懇切丁寧に教えてもらえて良かったな」


「……」


「……お前!」


「悲劇ぶるんじゃない!自分は事実を言っただけだ。薬師だけでは呪いは、ましてや命なんて使った呪いは解けない!」


「……」


「……。すまない。八つ当たりをした。無理を言ったな」


まあ、回復師の回復で間に合うとはいえ、HPが減り続けているんだ。HP削られる痛みも有る。それでも、自分に関係は無い。


「ふん!気分が悪い。アイクへの対価に1年の条件付きで冒険者付きになれる所を探させようとしたが、まあいい。さっきの薬の金だけ払って二度と関わるな。これを持ってアイクとの契約を完了とする」

永続の呪いのせいで、状態が固定、『飢餓』が付かなかった。飢餓でHPが減ることは無いし、腹が減ると感じても支障は無い程度だった。

HPが減っていたのは過剰活性のせい。


しかし、一般的な飢餓状態と同じような症状である為、クラウは分かりやすく現状は飢餓だ、と表した。

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