31旅行
130歳の頃、風の噂で"天眼"のルーカスが死んだと聞いた。
クラウは喜んだ。
人の死を喜ぶの最低とかは気にしない。
例えるならば、
家にGが発生して、いくら退治しようが何度も出る。
引っ越ししてGは出なくなったが、またいつ発生するか分からない。
ある日、Gは絶滅したと聞いた。
ああ、この喜びが分かるだろうか。
今まで、何となく出歩きたく無かったのが一新した。
薬都の周辺は素材や、取り込み用の魔物が欲しいので出るが、外で冒険者には合わないようにしていたし。
薬都の中でも冒険者ギルド、神殿にはほとんど行って居ない。ましてや他の町に何て、弟子の独立の時に飛び出した勢いで魔導都市に行ったきり。
魔導都市にはもう一度行きたいな。あそこは機械的と言うか、機械が多く動いていた地球に似ているので、神子が沢山居る。
神子は世界生まれと少しズレた考え方をする。そのズレから生み出されるアイデアがとても革新的だ。
薬にも応用出来るはずなのに、薬都の連中は本当に頭が固い。この考え方も地球出身特有のズレかもしれないが。
そう言えばエーミルは進化したが、やはりユーリカとカールはまだ進化して居ない。後30年もすれば、進化か老衰か結果は出るだろう。魔導都市へは30年後か。
でも、1年程度なら離れても大丈夫なはずだ。薬都の薬師としても"万薬"は居なくなったが、"宝薬"と"効薬"のエーミル、"蝕薬"が居る。"星薬"が引き留められる事は無いはずだ。
エーミルは低レベルながら様々な魔法属性付与でよく効く薬を売る。"蝕薬"は毒とかそっち系だが多くの種類の薬を作る"万薬"もそっちだった。
何処に行こう、ここまでテンションが上がってしまえば旅行して発散するしかない。
香味都市も良いなあ、でも最近取り込みし過ぎて食べる必要性と言うか、味が分からなくなって来ているから。なんか塩くどいとか分かっても問題なく食べられるせいで3年程前に弟子達が悲鳴を上げるまでどんな酷い味になっていたか気が付かなかった。
温泉郷もなあ、火山と湖からとれる色々な素材は興味がある。
学園都市時代のゆきの顔を知っている人は居ても、クラウの顔は"星薬"としてしか知られていない。もう一度行くのも良い。
海の方でも良い。海の底に谷のある場所の名前からとった海溝都市。
浮島は本当に浮いている島で、島に行く為には魔法か魔導具が要る。楽しそう。
迷う。今まで行けなかった分、沢山行きたい。1年じゃなくて10年は行きたい。
「クラウさん旅に出るんですか?」
「何処から聞いた、エル」
「クラウさん、"宝薬"さんの次に古い称号持ちの薬師でしょう。しかも、何処の権力者にも付いていない庶民派。薬都一の注目の的ですよ」
「注目の的……。商人が洩らしたか?」
「何処に行くんですか?ハヤテファミリーが護衛受けますよ」
「言うわけ無いだろう。護衛はいらない」
「ええ!危険ですよ」
「それより、シュウは?」
「シュウは子供が出来まして、レン君との子供何ですが、~」
レンはメインパーティーの神子。
「そうか、もう昼だ。自分は忙しい帰れ」
「ええ!そう言えばお弟子さんは」
「昨日来た。忙しい。帰れ」
「う。旅の準備ですよね。アドバイスとか、」
「いらない。帰れ」
「……はい。では、また」
旅に出ると言う情報は伝わっている様だ。
ならもう連絡は良いだろう。
……部屋に忘れ物は無し。と言うか、部屋に私物は無し。鍵は開けておく。メモだけ置いていく。
─旅に出る─
そのまま、午後の素材集めに行くふりして門から出る。
人目が無くなる夜まで歩いて、道から外れて【キャラクター】で今成れる一番速い魔物、ランク3の馬になる。
オーソドックスな黒で角が一本の。また、貴族の魔車を牽くのは馬なので、見られてもまだ見慣れている魔物だろう。
万が一貴族の所から逃げた物でもまあ危険なので討伐されるが。
馬になって駆ける。薬都から離れると魔物の種類が変わる。まだ取り込んだ事の無い魔物は積極的に襲う。街道からそれほど離れなければランク1や2しか居ない。
薬都の周辺の魔物はあらかた取り込んでしまった。やっぱり、鳥は地球の物理法則で飛んでいる訳ではないので全く同じ様に羽ばたいても飛べなかった。
また、擬態スライム人なので、魔物化してから別の魔物に擬態する事で、見つかったとき初めての魔物で身体が動かない状態から逃げられる様になった。
但し、【キャラクター】と違ってステータスの偽装までは出来ないし、取り込んだ者の姿しかとれない。つまり、魔物は分からないが、人も取り込んだ人の容姿まで同じものにしかなれない。
歩いて行くよりも魔車で行くよりも速く目的地へ到着した。それでも2週間かかった。
馬で走ったのを見られて居ても、馬に乗って来ましたとか言っておけば良い。馬はって聞かれても殺しましたって言える。インベントリに入っているので。よし。
「〈調教〉はして貰ったが、調教師が居ないので言うことを聞かなくて仕方なく殺しました」
「そんな危険な事を?職人の称号持ちなのですからもう少し自分を大事にして下さい。"星薬"様」
「そんな事していては、進化は出来ませんよ。では、門番さん」
「ははは、手厳しい。ようこそ温泉郷へ。ゆっくりして行って下さい」
温泉だぁ!
薬都。
「"星薬"様が出ていったらしい」
「何だって、今度は何処へ実験に?」
「たまにふらっと消えるよな"星薬"様」
「それが旅に出るって噂が有ったろ?午後に外に出たきりで、お弟子さんが"星薬"様の部屋を訪ねたら、鍵は開いているし、旅に出るって書き置きだけが残っていたらしい」
「本当に旅に出たんだ」
「最近妙に薬が出回らないの、やっぱり本当だったからなんだな」
「ああ、今回は何年か帰らないらしいし。すでに、"星薬"様の薬が高騰し始めたって噂も聞くな」
「ええ!俺も普段使いはしないけどインベントリに取ってある」
「まじか。俺も何か有ったら困るから今の内に買って置こうか」
「"星薬"様の薬は頑張れば俺達も手が届くからなぁ。他の称号持ちのは無理だけど」
「買うなら早くしとけよ」
「ああ、そうする」
最後のは、中位(銅、銀、金)の人達。
しかし、"星薬"の薬を主に買うのは高位(黒)なので、本当の混乱は商人と黒の冒険者達だったり。
数や価格、安定性以外、効果だけ見れば他の称号持ちの方が高いので称号持ち冒険者は"星薬"の薬はあまり買わない。




