第63話 ファイナル作戦会議
「第一回デュラハンを確実に絶対倒すための作戦会議!」
「イエーイ!!」「イ、イエーイ……。」
先ほどまでの命がけの作戦会議が嘘のように、場違いなほど明るい声が、薄暗い建物の奥へ軽やかに響いた。チャムは両手を振り上げ、迷いのない笑顔で元気よく応じる。対照的に、ツボミの声はどこか引きつり、明らかにその空気についていけていない。そんな二人の温度差など意に介さず、マサトは小さく咳払いをして場を引き締めた。
「さて、説明がてら今の状況を振り返ってみましょう……。『デュラハン倒さないとここから出られない』以上。」
何の補足もなく、乾いた音を立てて掌を打ち鳴らしたマサトに、チャムは一瞬きょとんとして首を傾げた。そして、しばらく間を置いてから勢いよく手を挙げた。
「リーダー質問!」
「何だ?」
「何でデュラハン倒さないといけないの?」
当然すぎる疑問に、マサトは面倒くさそうに顔をしかめ、頭を掻きながら説明を始めた。
「この結界の媒体は『一番魔力の多い物』に憑依するらしいんだ。で、この建物の中で一番魔力が多いのがデュラハンだから、倒すって流れになってるの……。で!お前が暴走したらデュラハン倒したとしても、お前に乗り移る可能性があるから早く倒さないといけないの!!」
半分八つ当たりのように一気にまくし立てるマサトの言葉を、チャムは気にも留めず、腕を組んでフムフムと咀嚼する。
「じゃあリーダー、バイタイ?が乗り移っちゃうならさ。倒してすぐに外に逃げないと出られないんじゃない?」
「…………確かに!?あ、でも待てよ。ツボミの影移動使えば簡単に出れるんじゃ――」
「リーダーさん、ごめんなさい。魔力切れでもう使えなくなっちゃった。」
「終わった!!」
隣で申し訳なさそうに肩を落としたツボミが、弱々しく首を振る。それを見たマサトは、状況が想像以上にひどいことを悟り、絶望に顔を歪めた。もはや気力さえ尽きたのか、マサトは力なく壁に背を預け、ずるずるとその場に崩れ落ちた。
「もう無理や〜ん!!倒すのと同時脱出とか絶対無理や〜ん!!てか、デュラハンの種族アンデッド系統
や〜ん!!そもそも勝てないや〜ん!!!………チャム、お前デュラハン倒せな〜い?」
八方塞がりになりヤケクソになったマサトは、ゴロゴロと床を転がりながらチャムに無茶振りをしたが、きっぱりと否定された。
「オイラじゃ無理だよ。パンチしかできないし、今お腹空いてるから腕伸ばせないもん。ユーリンなら倒せるんじゃない?」
「いや、そもそもユーリンがいないから困って……チャムホぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!」
マサトは藁にもすがる思いで懐からチャムホをひったくるように取り出した。
デリシャシア・寿司屋前――
「…………またシチューに毒キノコ入れてやろうかな。」
街の喧騒の中、ユーリンは不機嫌そうに仲間の帰りを待ち佇んでいた。すると、彼女の手元の通信機が騒がしく鳴り響く。
「あ、やっと繋がった。マサトさん今どこにいるんですか?あの後、全部私が食べた分の仕事をしたんですからね!」
受話器から漏れるユーリンのドスの効いた声を完全に無視して、マサトは食い気味に用件を切り出した。
『そんなことよりユーリン!!お前の雷霆ってアンデッドにも効くか?』
「はぁ?……まぁ、はい。一応属性無視の防御貫通なんで、聖なる魔法には属さないですけどダメージは入りますよ。何ですか急に?」
『ややこしいから後で説明する。とにかく、近くの山の上に廃墟になった豪邸があるからそこの前で俺が合図するまで雷霆準備して待っててくれ。間違っても絶対敷地内に入ろうとするなよ!!』
「あ、ちょっと話はまだ――!!…………フゥ~、覚悟しとけよ?」
一方的に通信を切られ、ユーリンは通信機を握りしめた。その周囲に、怒りに呼応するかのようなパチパチとした静電気が走り始める。
再び、廃豪邸――
マサトは通信機を仕舞うと、腕を組んで唸るように言葉を絞り出した。
「倒せはしそうだけど、問題はどうやって外まで連れ出すかだよなぁ……。黒龍化しても流石にお前ら担ぎながらデュラハンから逃げるのは無理だぞ。」
「じゃあ、ツボミとチャムさんは家の外で待ってるってのはどうかな?最後だけリーダーさんが運んでくれればチャムさんもすぐに結界の外に出れると思うよ。」
少しでも力になろうと、ツボミは必死に知恵を絞って提案する。だが、マサトは首を横に振り、渋い顔のままだった。
「……いや〜厳しいかも。確かにそれなら追いつかれずに済むかもしれないけど、ユーリンが攻撃当てるために俺が避雷針にならないとだから、そんな余裕多分無いんだよなぁ……。一応帽子取れば当たるらしいんだけど、タイミングよく帽子を脱ぎつつ10秒未満で標的合わせて、大技撃つなんてほぼ無理だと思う。」
解決策が見つからず、再び八方塞がりの泥沼に頭を抱えていると、チャムが隣でどこまでも呑気に、独り言をつぶやいた。
「オイラが高速移動できたらいいのにね。」
「そんなことできたら、お前の抱えてる大部分の問題が解決でき――あ。」
チャムの冗談を鼻で笑い飛ばそうとしたその時、マサトの脳内に電撃のような閃きが走った。彼はゆっくりと顔を上げると、先ほどまでの絶望が嘘だったかのように、いつもの確信に満ちた悪役のような表情を浮かべた。
「チャム、今のうちにお別れしとけ。」
「え?」
「思いついたぜ。デュラハンを倒せて、かつ即座に全員でここから脱出する方法。」
今年のGW短くね?
気のせい?




