第19話 フィーデリアの怒り
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第19話 フィーデリアの怒り
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その日、フィーデリアはいつものようにデルクを迎えにいき、共に学園に通学した。
そしたら、いきなり校舎の三階の一室が爆発し、そこから魔物が溢れ出したのだ。
そのうちの一体が、デルクに向かってきた。慌ててデルクを突き飛ばし、魔物に魔法を放って倒す。
転んだデルクは手を擦りむいていた。これに怒ったフィーデリアは、問答無用で魔物を殺しまくった。
(私のデルクによくも傷をつけてくれたわね!)
突き飛ばしたのはフィーデリアだが、その原因を作ったのは魔物だ。だから、デルクが怪我をしたのは魔物が悪い。
デルクを傷つけたのだから、魔物許すまじ! 魔物デストロイが決定した瞬間だった。
言うまでもなくフィーデリアは魔物を倒しまくって進んだ。
校舎内でもそれは変らないが、悲鳴が聞こえた。助けにいったら同じ魔法科の生徒だった。その三人はオークを前に戦うこともなく、腰を抜かしていた。
(情けない……なんのために魔法科で学んでいるのよ、この娘たちは?)
その三人は抱き合いながらガタガタ震えていた。オークを倒して逃げろと言うのだが、怖くて逃げることもできないと言う始末だ。
優しいデルクが三人を保護し、共に外へと向かった。そしたら、その三人がデルクにしがみついているではないか! メラメラと嫉妬の炎が燃え上がり、その怒りは魔物に叩きつけられた。
(私のデルクに触るな!)
転生者であるフィーデリアは、生まれた直後から魔法を使ってきた。元々神様から魔力上昇の恩恵をもらっていたこともあり、魔力量は無尽蔵といえるほど多い。
しかも、技能に消費魔力低減もあり、本当に魔力が底を尽くことはない。
校舎の外に出ると、先輩の男子生徒がオーガと戦っていた。
騎士科の生徒のようで、剣でオーガと戦っているのだが、さすがに力不足だった。オーガの一撃を受けて吹っ飛び、左腕を骨折してしまったのだ。
すかさずアイスジャベリンを撃ち、オーガを倒す。
その男子生徒は、デルクが助け起こした。折れた左腕は、先ほど助けた三人の女子生徒のうちの一人が回復魔法を使えたので、任せた。
(私のデルクに色目を使って!?)
勘違いも甚だしいが、フィーデリアはやるべきことはしっかりやった。迫ってくる魔物を全て魔法で倒していったのだ。
そうこうしていると、騎士団がやってきて魔物を掃討。校舎の三階の一室がダンジョン化していたことが判明した。
戦いが終わり、デルクが魔物と戦っている雄姿を脳内再生していると、あることに気がついた。
(デルクのあの剣……どこから出したのかな? もしかしたらガチャで得たものかしら? あれは名剣どころものではない。おそらく、この世に二つとないものよね?)
フィーデリアのように時空魔法を持っていると、空間収納が可能だ。デルクのガチャやアイテムボックスのことを知っていることから、そこまで不思議には思わなかった。
だが、魔剣ガルバスの力には興味が湧いた。
そして可愛い顔のデルクが、剣で戦う姿は尊いものだった。フィーデリアにとっては。
フィーデリアは、体をクネクネさせて興奮し悶える。
「はぁはぁ、デルク~♡」
あれから五日、フィーデリアは城に呼ばれた。
あの混乱の中で魔物を倒し、生徒を助けた功績を皇帝から褒められることになったのだ。
謁見の間で皇帝と向かい合うフィーデリア。皇帝は今年四二歳になる、偉丈夫だ。
「フィーデリア・ゲルミナスは混乱の中にあって、よく戦い、多くの生徒を助けた。その功績は極めて大きい。また、第三皇子のグラディック殿下を助けた功績があり、ここに褒め称えるものである」
侍従のバレンサーム(四五歳)がフィーデリアの功績を読み上げた。
オーガと戦っていた先輩は、第三皇子のグラディックだった。その皇子を助けたことで、フィーデリアは卒業後に宮廷魔法使いになることが決定した。
さらに、フィーデリアが家を継ぐのと同時に、ゲルミナス家は伯爵に陞爵させる、と言い渡されたのである。
父のゲルミナス卿は感激し、涙を流していた。
(伯爵になったら、デルクに楽がさせてあげられるわね。フフフ)
そんなことを思っていたのだが、式典の後に皇帝の私室に親子で呼ばれることになり、そこで国を揺るがす一大事が発生するのだった。
「陛下。ゲルミナス子爵家当主アレイウス、及び娘フィーデリア、参上いたしましてございます」
「ここは余の私室であるゆえ、堅苦しい挨拶はよい」
皇帝に促され、フィーデリア親子はソファーに腰かける。そこには第三皇子グラディックもいる。
「ゲルミナス卿、例の話はフィーデリア嬢に言うたか?」
「いえ、これからにございます」
「ならば余から伝えるとしよう」
「恐れ入ります」
何の話か知らないが、早く終わらせてほしい。あれ以来、学園が閉鎖されており、デルクと会っていないのだ。
デルクの匂いが不足している。補充しないと、発作が起きそうなフィーデリアだった。
「フィーデリア嬢、君にはこのグラディックと婚約をしてもらい、フィーデリア嬢が学園を卒業したら結婚をすることになる」
(は? こいつは何をいっているの? 莫迦なの?)
「親の余が言うのもあれだが、グラディックは成績優秀であり、容姿も悪くない。伴侶としてはよい相手であるぞ」
(なんで私がこいつと夫婦にならないといけないのか? 私の夫はデルクと決まっているのだ、頭が腐っているようだ)
「陛下、光栄なことにございます」
(おいおい、あんたまで何を言っているんだ? 現世でたまたま父親になっただけの他人が、ぶっ殺すぞ、テメェ!)
「ハハハ。フィーデリア嬢、君は僕に相応しい女性だ。これまではなんの不運か、あんな凡夫と婚約させられていたようだけど、これからはこの僕が婚約者として君を幸せにするよ!」
(フフフ。デルクを凡夫だと? どうやら死にたいようだな、このクソガキは!?)
「めでたい! フィーデリアもお礼を言わないか!」
「……父上様。デルクとの婚約は……どうなったのですか?」
「それは余から説明しよう。デルク・ナグラーとフィーデリア嬢の婚約は、ナグラー卿に解消するように命じた。子爵に陞爵させてやったら、素直に命令に応じたわ。すでにナグラー卿とゲルミナス卿の間で婚約解消の手続きが行われ、今のフィーデリア嬢は誰とも婚約していない状態だ。安心したまえ」
その言葉を聞いたフィーデリアは、大地の底からこみあげてくるような怒りを感じた。




