第18話 一一歳のパニック・終息
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第18話 一一歳のパニック・終息
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「奥にまだ誰かいるようだ」
「いく」
「あ、フィーデリア!」
僕はフィーデリアを追って走った。
角を曲がると、そこには三人の女子生徒と、オークがいた。
「ダークバインド」
フィーデリアは迷わず魔法を発動させ、オークを闇で拘束した。
足掻くオークに、僕は切りつける。さすがに体中の動きを阻害されているオークなら、僕の腕でも当たる。
当たったのだけど、斬れ味がよすぎませんか? なんで真っ二つになるの? しかも、ほとんど手応えを感じなかったのですが? これがSSレアの魔剣の斬れ味なのか……。マジ、ヤベー。
「あんたたち、魔法科でしょ。腰を抜かしている暇があったら、戦いなさい!」
フィーデリアは無茶を言うな……。
たしか魔法科も魔物と戦うらしいが、それは二年生の夏季休暇が終わってからだったと思う。
つまり、まだ魔物と戦う授業は受けていない。そんな女子学生にオークと戦えというのは酷なことかもしれないが、僕のような政務科生徒からすれば、少なくとも戦う授業を受けているのに腰を抜かしているようでは、情けないとしか言いようがない。
「そ、そんなこと言っても……」
「そ、そうよ……」
「怖くて……」
「もういいわ、早く逃げなさい」
「「「はい」」」
女子生徒たちはヨロヨロと立ち上がり、三人で支え合って逃げていっ……いかなかった。
「あ、あの……」
「何?」
「無理です。怖くて……」
「あたしたちだけじゃ……」
「また襲われたら……」
僕とフィーデリアは顔を見合わせた。たしかに彼女たちでは、また魔物に出遭っても戦えそうにない。
あんな及び腰というかへっぴり腰では、戦いなんて無理だ。
「フィーデリア、三人を連れていくよ」
「……分かった」
僕たちは三人を守りつつ校舎の外に出た。そこで、上級生が戦っているのが見えた。金髪碧眼のイケメン先輩だ。
イケメンが奮戦している姿は、絵になる。僕は思わず、爆ぜろと呪詛を吐く。
軍服のような制服は、ネクタイの色で判別ができる。緑色のネクタイは四年生のパイセンだ。そのパイセンがオーガと戦っている。
オーガはムキムキの筋肉に目がいきがちだけど、牙が大きい。
「ぐあっ!?」
パイセンがオーガの攻撃で吹っ飛んだ。派手に転がって、ぐったりしている。左腕が変な方向に曲がっている……あれは折れたな。
「アイスジャベリン」
「グオッ……」
オーガの強靭な肉体でさえも、フィーデリアのアイスジャベリンによって腹に穴が開いた。あのアイスジャベリンは……回転していた? 滅茶苦茶貫通力ありそうだよね。
「大丈夫ですか」
「か、可憐だ……」
「はい?」
パイセンは腕が折れたのも忘れてフィーデリアを見つめている。まあ、痛みで泣き叫ばれるよりはいいけど、彼女は僕の婚約者ですよ。
「誰か回復魔法は使えませんか?」
「あ、あの、あたし、回復属性を使えます」
「こちらの先輩の腕を治してあげてください」
「あ、はい」
先ほど助けた三人のうちの一人が回復属性の使い手で、パイセンの治療を任せた。
僕も聖属性を使えるので治療できるのだけど、一応秘密なので。最悪は使うけど、他の人がいるなら任せるのが吉でしょう。
その間もフィーデリアは飛んでいるガーゴイルを撃ち落としている。正確無比な攻撃は、次々に魔物を倒していった。
僕も近づいてきた魔物を魔剣ガルバスで斬り捨てる。オークを斬ってから、なんとなく心が落ちついてゴブリンやオークなら僕でも倒せている。
よく見れば、なんとかなるものだ。
「怪我人はいないか!?」
ガチャッガチャッと鎧を鳴らしてやってきたのは、騎士団だ。
騎士団員はさすがに強く、バッタバッタと魔物を倒している。
二時間後、フィーデリアと騎士団の活躍もあり、ダンジョンフローは終息した。
その後の調査であの三階の開かずの間がダンジョン化していると判明し、これがダンジョンフローと断定された。
今回のダンジョンフローによって、生徒に少なくない被害があった。あの開かずの間を管理していたのが副学園長だった。僕が見た老教師は副学園長だったのだ。どうりでどこかで見た気がしていたのだ。
その副学園長はこの国でも有数の大貴族の叔父で、その大貴族の前当主のゴリ押しで副学園長になったそうだ。
この副学園長は、現在行方不明になっているそうだ。生きているのか、魔物に食われたのか、分かってない。
ここからは高度に政治的な話になるので、僕のような下級貴族の子供が関わるものではない。
父からもこの件には触れるな、と念を押されている。
そして、学園は夏季休暇を待たずに長期休暇に突入した。
こんな事件があったので、原因究明のために休学になるのは仕方がないね。




