第17話 一一歳の学園パニック
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第17話 一一歳の学園パニック
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錬金術とモデリングのおかげか、僕の魔法陣固定の精度がありえないほど上昇した。
おかげで炊飯器の魔法陣が、いい感じにできてしまった。
米と水の分量さえ間違わなければ、最高の銀シャリが食べられます!
その銀シャリを使っておむすびを握り、弁当として学園に持っていくのが今のマイブームです。
「美味しい。今日は牛しぐれ煮なんだ♪」
フィーデリアは僕の握ったおむずびを美味しそうに食べてくれる。
具の牛しぐれ煮は、こちらの世界で手に入れた肉を甘辛く煮たものだね。
僕の部屋は今や調理器具で溢れている(普段はアイテムボックス内にあるけど)。
煮込みには圧力鍋がいい仕事をしてくれるんだよね。あと、ノーマルで出た料理本も地味にありがたい。
「この卵焼きも美味しさに磨きがかかっているね」
「これだけはデルクに負けない。妻の矜持」
妻の矜持……。ま、いいか。
あれから何日が過ぎ、もうすぐ夏季休暇というある日、今日もフィーデリアと共に通学し、いつもの車止めから歩いていると、校舎が爆発した。
「え!?」
「………」
周辺の生徒も大騒ぎだ。
その部屋は三階にあり……あそこはいつかの開かずの間じゃないか。
ドンッ。
あ、また爆発した。
思わず「たーまやー!」と口にしそうになったのを、我慢した。
そんな爆発した部屋の窓から黒い影が飛び出した。
「あんだ、あれは?」
「……魔物」
「え、魔物!?」
大空を飛ぶ巨大な影は、ガーゴイルだった。
石像なのに、翼を動かして器用に空を飛ぶ珍しい魔物だ。
「なんで魔物が?」
ここは貴族の子弟が通う学園で、魔物が出るような場所じゃない。しかも、一体や二体ではなく、ドンドンとガーゴイルが飛び出てくるんだけど?
これが異世界……なのか。
「デルク!?」
「うげっ」
フィーデリアが僕を突き飛ばした。まさかのDV!?
その直後、僕がいたところに黒い影が通り過ぎた。
「いてて……」
倒れた時に肘を擦りむいてしまったようだ。でも、フィーデリアのおかげで、魔物の攻撃を受けることがなかったので、助かったよ。
「よくもデルクに! ファイアジャベリン!」
炎の槍が一瞬で成形され、ゴゥッと飛翔した。その炎の槍は見事にガーゴイルに命中し、爆発した。
ガーゴイルは粉微塵に砕けた。
「半端ないな……」
あんな攻撃されたら、シャレにならない。ガーゴイルが少しだけ気の毒になった。
でも、僕を突き飛ばしたのはフィーデリアだけどね。
「デルク、大丈夫!?」
「大丈夫だよ、フィーデリアは怪我をしてない?」
「大丈夫」
「しかし、なんでこんなところに魔物が?」
「今は考えるよりも退避を」
「そうだね」
僕はフィーデリアの手を取り、走り出した。
校舎の中に入れば、少しは安全……。と思ったのは間違いだった。
なんと、校舎の中にはゴブリンと思われる人型の魔物が闊歩していたのだ。
「なんなんだ、これは?」
「もしかしたら、校舎内にダンジョンができたんじゃないかしら」
「え、ダンジョンが?」
ダンジョンはいつどこに出来るか、そのメカニズムは判明されていない。そして、ダンジョンを放置すると、魔物が溢れ出すことがある。それをダンジョンフローと言う。
そのダンジョンフローが起きたというのか……。
「今は魔物を倒すことが最優先。デルクは私の後ろに」
「それは駄目だよ。言ったろ、僕がフィーデリアの盾になるって」
「デルク……」
「フィーデリア……」
目と目が合う。熱い視線だ。
顔が近づいていき、鼻が当たりそうなくらいだ。
「グギャギャァァァッ」
「うるさい!」
フィーデリアがエアカッターを放つと、ゴブリンの首が飛んだ。
容赦がないな……。
まあ、魔物相手に容赦したら、こちらが殺されてしまうんだけどね。
フィーデリアは何かにとりつかれたように、魔物を狩った。ガーゴイルもゴブリンも、そしてオークも目の前に現れた魔物は全て倒していく。
何かに憑りつかれたかのように、フィーデリアは魔物を狩った。親の仇でも討つかのように魔物は倒されていった。
「サンダーボルト」
しかし、多才だね。まさに魔法の天才に相応しい属性魔法の数々だ。
僕もボケッとしていられない。フィーデリアを守るのは、僕なのだ!
僕は脳内でSSレアのカードを具現化させた。
SSR:魔剣ガルバス(技能・ガルバスクラッシュが使用可能)×一
僕は魔物が接近してきたら、魔剣ガルバスで斬りつける。もちろん、僕の腕では魔物に当てることさえ難しいが、牽制くらいはできる。その間にフィーデリアが魔法で魔物を倒すのだ。
ちなみに技能のガルバスクラッシュは、対象を破壊する必殺技らしい。必殺技なので、使う場所はここぞという時に限られるようだ。
「アイスジャベリン」
「ブヒ……」
腹に穴が開いたオークがドスンッ倒れる。こんな太い腹に、穴が開くなんてなんて威力なんだ……。
そこに悲鳴が聞こえてきた。




