どうにもならないもの、仲間、見えてきた世界
「今日は5つの法則について話すのはやめておこう」
リオンは私に近づいて、頭を撫でてくれた。
ドクとミーも、リオンの言葉に頷いている。
私の涙を見て、ドクとミーも涙を浮かべている。
厨房からも、何故かしくしく泣いている声が聞こえてくる…
リオンはロナウドを見直したように見える。
今ではかなり優しい顔をしているようだ。
「明日司教が来たら、正体を話すか?私はどちらでもいいんだが…」
リオンが、保護者になったロナウドに話しかける。
「いや、話しても仕方ないだろう…
まず話をしてやる義務は無いし、話をして危険が減るとも思えない…数日準備をしたら、この街を出よう!」(ロナウド)
「いいのかロナウドよ…この街にお前を慕う者も多いだろう?」(リオン)
「全然構わない、それにエルも元気になったんだ!
それに君達は冒険者だろう?
私は元商人だ!世渡りは上手いんだよ」(ロナウド)
ロナウドは得意そうな顔でリオンに言った。
リオンは少し微笑むとドクとミーを見る。
「僕もそれでいいよ!」
「もちろん私も!」
ドクもミーも嬉しそうな顔をしている。
「明日絆の宿に行くなら、俺も済ませたい用事があるからついていく。
そのあと別れて商人会に顔を出してくるさ」(ロナウド)
「私まだこの街に来てから観光してないな…あ!衛兵さんに身分証とお金渡さなくちゃ!」(花凜)
「今後の方針は何となく決まったな…衛兵か…すっかり忘れていた」(リオン)
「何だか今日は色々あって疲れたな…ゆっくり休むとしよう」(ロナウド)
「花凜様、これからもよろしくお願いします」(ミー)
「花凜様がやりたい事をやったらいいと思います。
これからもよろしくお願いします」(ドク)
ロナウドは私を抱いていた腕を解くと、頭をぽんぽん撫でてから体を離す。
私もだいたい満足したのでほっとした。
「みんなこれからもよろしくね…本当にありがとう…私はみんなが大好きだよ」
解散して、それぞれの部屋に移動する。
私はミーとリオンとお風呂に向かった。
実際私はお風呂に入る必要は無いが、入院中なかなか自由にお風呂に入れなかったので、お風呂は楽しみだ!
女風呂は私の自信作で、ミーは幻想的な空間に目を輝かせていた。
「綺麗…この光るクリスタルの木…」(ミー)
「綺麗だな、これは樹木なのか?」(リオン)
「それは木に見せた魔力の結晶なの!身体が疲れたらポキッと折って食べてね♪」(花凜)
リオンは試しに食べてみた。
「味は無いのだな…た○のこの里のようなものではないのか…」
リオンは少しガッカリしている…でもそこは私も抜かりはない!
「あれはね、館の壁からたまに生えるよ!
見つけたら食べてね!館に頼めば普通に出してくれるから、食べたかったら言えば大丈夫!」(花凜)
「ふふ、見つけて食べるのは楽しそうだな」(リオン)
「何だかわからないけど、見つけたら食べてみる〜」(ミー)
皆で身体を洗っていると、私は自分の身体が気になった…私もそろそろ女の子らしい体になりたかったのである。
私はリオンとミーの身体を隅々まで観察した。
「え?なに?わわ!」(ミー)
ミーの体を近くから観察していたので、流石に少し恥ずかしかったらしい…
「私もおっぱい作りたくてね!リオンもミーも羨ましい…」
「そうか…今はとりあえずで作った身体だったからな…
砂漠で動かし方も練習したし、そろそろ全身作れるだろう」
体を成長させるように集中してみた…
人化の魔法に1番重要なのはイメージ力だ!
この体を作るのに、数日間もイメージ特訓に費やした。
初めて人化の魔法を使った時は、呪いの藁人形のような有様に…そして今は人間と見分けがつかないほど完璧に出来上がっている。
ミーはDカップくらいあるだろうか?ミーと同じ大きさまで調節しようと魔力を操作した。
「ん?ちょっと……?膨らんだ?」
「ああ、無くはないな…」
何故か上手くいかない…
(んんん?)
私は何度も同じようにやってみた…やはり上手くいかないようだ…
「自分に胸がある事を、イメージ出来てないんじゃないか?前の体には胸はあったのか?」
リオンからの衝撃の言葉を聞いた…
「無くは…なかった…」
私は泣きました…さっきロナウドに抱きしめられた時よりも泣いた…
この世界にもどうにもならない事はあるのだ…
何とかBカップちょいくらいまで、おっぱいを作る事に成功する!
リオンとミーは、私の相手で今日1番疲れただろう。
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【エル】
時刻は少し遡る…
父親にアイマスク(リオンの下着の胸当て)を外された…
俺は気が付いたら演習場にいたのだ。
全員がドン引きしている…
(あれ?これ?夢?)
花凜が近寄ってくると、俺から魔物の素材を受け取り、足早にその場を離れていく…
俺は風呂上がりに、リオンの下着を履いてしまったのだ…
「…」(ロナウド)
花凜やリオンや親父…ドクやミーまでが、俺を見ないように視線を逸らしてその場を去っていった…
「見ちゃいけません!」(ソルの住人)
「だってママ!空から裸のお兄ちゃんが」(子供)
「凄い戦いを見た後に…まさかまた驚かされるとは…」(ソルの冒険者)
「あれロナウドさんちのエルだろ?クソ!!頭までは手遅れだったのか!」(ロナウドの商人仲間)
「なんてこった…ロナウドさん…息子があんなになっちまったってのに…串焼き屋を頑張って…泣けるぜ」(ソルの強面の男)
「黒炭病…恐ろしい…あ!見ろよ!まだ玉が黒いぜ?」(ソルの若者)
「マジ引くわ〜」(ソルのギャル)
俺は動けなかった…何とか病気のせいにして、この場を離れよう…俺はそう決心した。
「ぐぅぅぅ…まだ黒炭病がああぁあぁあ」
(ちょっと待ってよ…誰か聞いてよ!)
今まで使ってこなかったと思える程に、俺は頭をフル回転させる!
ステルスモードになろうと思いつき、素早く魔力を制御したが、消えるには少し遅かったようだ。
「エル!病気が治ったのね!」
「ああ…そ、ソーナ」
近寄るソーナ…話しかけてきた彼女は、元冒険者で同じパーティーメンバーだった。
もう1人男性が近付いてくる…この男の事も良く知っているのだ。
無二の親友で、もちろん同じチームで冒険者パーティーを組んでいた男…ドルトン
「エル…なんて格好を…」(ソーナ)
「エル!良かった…弱々しくなっていくお前を見ると辛くてな…最近は余り見舞いにも行けなくて…すまなかった…」(ドルトン)
「…ドルトン…」(エル)
「とりあえずこれ着ろよ…」(ドルトン)
ドルトンは自分が着ていた薄手の旅用マントの紐を解き、俺に手渡してくる…正直体全体が隠せるのはとても嬉しかった。
「積もる話もある、まだ夕方前だが呑もうぜ!俺の奢りだ!」(ドルトン)
「いや、俺はちょっと一旦帰りた(そうよ!)」(エル)
俺の言葉を遮るように、ソーナがドルトンに同意する。
「また3人でお酒が呑めるなんて嬉しいわ」(ソーナ)
とりあえず帰りたいと言いたかった…でもドルトンとソーナに捕まって、断れなくなった。
何より嬉しそうな2人の笑顔に少し涙が滲んでいたので、断る事なんて出来なかったのだ。
(まあいいか…ソーナ前より綺麗になったな…ドルトンも少し大人びて見える)
「そ、そうだな、ドルトンの言葉に甘えるよ…ありがとう!」
「気にするな!」
俺達はすぐに酒場へ移動する事にした…こちらを見る街の人達の目線が痛かったので、逃げるように演習場から出ていく。
海沿いの昔から良く通っていた酒場に移動すると、海が一望出来るテラスに席を取った。
この酒場は結構人気が高く、値段の割には料理が美味しい。
たくさん思い出のあるこの場所に、何だか熱いものが込み上げてくる…
「何だか昔を思い出すな…」(エル)
「ついこの前の様な気もするけどな」(ドルトン)
「うん、いつもはもっと遅い時間だったけどね」(ソーナ)
ドルトンが微笑む…ほんと気さくで昔からいい奴だったのだ。
ドルトンは焼き魚、ソーセージ、トマトクラムスープを注文する。
昔から俺の好きな料理で、ドルトンも覚えていてくれたみたいだ…嬉しさや懐かしさで、涙がでそうになる。
料理が次々にテーブルに並んで、冷たいエールも運ばれて来た。
「エルの快気祝いだ!乾杯!」(ドルトン)
「「カンパーイ」」(エル、ソーナ)
それからドルトンは、俺が居ない間の冒険の話を始めた。
俺が居てくれたらって何度も思ったそうで、厳しかった依頼や、ソーナとの激戦の数々を沢山話してくれた…
本当に本当に楽しい時間だ…2人の話す言葉で、その時の状況が鮮明に想像できる。
ソーナも笑いながら、エルが居てくれたらなーって思った時の事を話してくれる。
(やっぱりソーナ…俺事が好きなのかな?)
酒も入りどんどん気分が良くなる。
「ソーナ、綺麗になったな」
「やっぱりわかっちゃう?」
俺はつい言葉に出してしまったようだ…ソーナは顔を赤くしている。
楽しさのあまり、気が付いたら辺りは真っ暗になっていた。
テラスから良く見える空に、沢山の星が輝いている。
ドルトンがこの場に居なければ、きっとソーナと良い雰囲気になっていただろう。
「なあ、覚えているか?俺達の最初の任務…」(エル)
「ああ!覚えるぜ!」(ドルトン)
「うん…あの時もさ、依頼が終わったら夜中だったよね…畑を荒らすイノセントボアを1匹倒すだけだったのにね」(ソーナ)
ソーナが微笑む、あの時誓ったのだ…3人いつまでも一緒だって。
「俺達3人!いつまでも一緒だよな!」(エル)
「ああ!もちろんだ!」(ドルトン)
「うん!私もドルトンも皆一緒だよ!」(ソーナ)
目頭が熱い…生きてて良かったと思い、体を治してくれた花凜に感謝をした。
もう一度こんな時間を過ごせるなんて、夢にも思わなかったのだ…
(ありがとう花凜さん…)
「ところでエル…双黒の風とあの新人?のさ、2人とは知り合いなのか?」(ドルトン)
ドルトンは首を傾げ、ソーナはうんうんと頷いている。
「双黒の風の2人は、親父の恩人なんだ。
2人とも親父を好いていてくれて、よく屋台に飯を食べに来てくれていたみたいだぜ」(エル)
「ミーちゃん可愛いよね!ドクちゃんも可愛い!
しかも凄く強いんだもんね…」(ソーナ)
「ああ、ミーちゃん可愛いよな…
皆憧れるのは無理ない話だよ…今日戦闘を見たが、噂に違わぬ強さだったな!」(ドルトン)
「明るい正確で人当たりも良くて、妬む人も少ないよね…みんながドクちゃんとミーちゃんを応援してるもん」(ソーナ)
ドクとミーは評判が良い…
ナンバー冒険者でありながら、偉ぶらないし分け隔てなく周りと付き合っている。
小さな頃からこの街にいて、年配の冒険者達にも可愛がられているのだ。
その後もドルトンとソーナに戦闘の話を聞き、俺は深くため息を吐いた。
(何やってるんだよ…まったく…)
もし花凜が2人を蘇生しなかったら、あの場で戦闘を見ていた全員が襲いかかっていただろう…
「それで?あのドクとミーちゃんを倒した2人の事は知っているのか?」(ドルトン)
「そうそう、双黒の風2人がかりで勝てないなんて…何かの冗談かと思ったよ…初めて見る顔だったから、多分冒険者になる試験だったのかと思うんだけどね」(ソーナ)
「俺はその戦いを見てないけど、良くわかったよ…確かにあの2人はめちゃくちゃなところがある…見てくれ、この手足」(エル)
俺は椅子をずらして少し空中に浮ぶと、手の平から電撃をスパークさせて体に纏う。
他のお客さんの迷惑にならないように出力は小規模だが、バチバチと俺の体を走る青白い閃光が、周りの目を惹き付けてしまったようだ。
「な?やばいだろ?」(エル)
とりあえず下に降りて、そそくさと椅子に座り直した。
まだ周りから見られている視線を感じるが、普通に会話をしていれば飽きてくれるはずだ。
2人とも驚いて、目を見開いている。
「手からは鋭い爪や結界や、本当にもう色々さ…消える事も出来てしまう…」
見せた方が早いので、とりあえずステルスになってみせた。
またびっくりしたドルトンが、俺の消えた場所に手を伸ばしてくる。
ドルトンに肩を掴まれたところで、俺は再び姿を現した。
「やばいな…演習場に現れた時のその格好は、もしかして何か意味があったのか?」(ドルトン)
「そ、そうだよ!好きでこんな格好してる訳ないじゃないか!あはは…」(エル)
「あーー、びっくりした!そうだよね!そんな訳ないよね!」(ソーナ)
ソーナは、また少し顔を赤らめた。
空を飛んできて下着姿だった時の俺を、思い出しているのだろう…
お願いだからマントの中身は想像しないで欲しい…
(何とか誤解は解けた〜…あー良かった…)
誤解ではないのだが、自分でも受け入れられない事実を誤解として頭の中で処理したのだ…俺は悪くない…きっと悪くないはず…
「ますます気になるな…それで?あの2人は結局何なんだ?」(ドルトン)
「んー、なんか親父が拾って来たんだよ…
花凜さんって人が、親父の脚と俺の病気を治してくれたんだ。
もはや改造された様なもんだけど…」(エル)
「拾ってきたって?」(ソーナ)
「ああ、最初見た時は花凜さんは外套1枚だったよ?
今はうちのおふくろの昔の服を着て、家に住んでるよ」(エル)
「エルの親父さん…半端じゃないな…流石元大商人だな…」(ドルトン)
「商人は関係ないと思うけどな」(エル)
俺達は笑い合った…こんなに楽しい時間は久しぶりだ。
「親父の周りにはいつも人が集まるんだよな〜…ふ、親父を越えるのは大変だぜ」
何故か調子にのって、俺は思いっきりドヤ顔してしまった。
また3人で冒険出来るかと思うと、気分も最高である。
「なあなあ、俺達にも紹介してくれよ」(ドルトン)
「そうだよ!あの白いお姉様とお話してみたい!」(ソーナ)
「はは、わかったよ!まだ起きてると思うから、今から行くか…」(エル)
こうして俺達は、酒場を出る事にした。
家に向かう3人、自然と会話も弾む…
俺のいない間の出来事が沢山あって、いくら会話をしても尽きる事はないのだろう…2人は面白い話を沢山してくれた。
「ここが…俺の家か?」
「おいおい…いつからエルの家は守衛所になったんだよ」
木の柵を越えるとすぐ右側にマイホーム…奥に巨大な館…
俺も何がどうなっているのかわからない…ドルトンが俺と親父の家を守衛所だと言ったが、まさにその通り…
(え?なんで?)
本当に自分の家が守衛所にしか見えないのだ…
俺は家に明かりが灯っていないのに気付いて、館の方へ視線を戻した。
(どうなってるんだ?花凜さんの魔法かな?館の方にとりあえず行ってみよう!)
「止まれ!」(騎士)
「え?」(ソーナ)
「騎士までいるのかよ…何処の貴族だよ、エルの家は…」(ドルトン)
(え?知らない知らない知らない!どうしよう…誰この人…)
パニック寸前、そんな時扉が少し開いた。
「エル〜?」
花凜が外に出てきてホッとした…出てきてくれなかったらどうなることかと…
花凜は風呂上がりみたいで、とても良い香りがする。
花凜は知らない人がいて、扉から半身だけ外に出ている。
何故か朝より色気があって、花凜が艶っぽく見える…騎士は警戒を解き、扉の脇に移動した。
「おかえり〜?」(花凜)
「こんばんは!エルの友達のドルトンです!」(ドルトン)
「わ、わ、私はソーナです!」(ソーナ)
「花凜、2人は友達なんだ」(エル)
少し気分が大きくなっていて、花凜さんを呼び捨てにしてしまった…
騎士の表情はわからないが、ちょっと怒らせてしまったような気がした…
花凜は自己紹介されたが、緊張して言葉が出ない様子に見える…
扉がもう少し開いて、奥からリオンとミーが出てきた。
皆良い香りで、風呂上がりだとわかる。
「こ、こんばんは」(花凜)
「誰だ?」(リオン)
「エルの友達だって…」(花凜)
「エルさんの?」(ミー)
「な、なんで双黒の風のミーちゃんがここに居るんだ?」(ドルトン)
「え?双黒の風は明日解散します。
花凜様と師匠と私達はパーティー組む予定なんだ」(ミー)
俺はドルトンとソーナと一緒に驚いた!
まさか、俺もパーティーに入るのかな?
もしそうなら、ドルトンとソーナがいるから困るんだけど…
「私と花凜とドクとミーで!パーティーを組む事になる。
ロナウドは商人として、旅の準備やらを色々任せる形になるな…
だから安心しろ」(リオン)
リオンは何かを察したように、俺に説明をしてくる…
それはそれで、少し寂しい気分になった。
「そ、そうなのか…今日は2人を紹介したくて連れて来たんだよ!
ソーナとドルトン、俺のパーティーメンバーだ」
ドルトンとソーナは笑顔でお辞儀する。
「そうか!エルを頼んだぞ…それと、私の下着は返さなくていいからな」(リオン)
「「え?」」(ソーナ、ドルトン)
リオンの言葉に固まった。
2人には仕方なく、俺が女性物の下着を履いていた事になっているのだ。
しかし、まだ誤魔化せる範囲だろう…俺は必死に言葉を探すように頭をフル回転させた。
「ただ、もう使った下着は持っていかないでくれ…
明日買いに行くが、エルに頻繁に取られたらいくらあっても足りないからな…」(リオン)
「「私のも取らないでね」」(花凜、ミー)
「えーと、エルは仕方なく女性物の下着を履いていたんだよね?」(ソーナ)
全身から冷や汗が出てて凍り付く、何故か物理的に凍らされているような視線をリオンから感じた。
「ほぅ…仕方なくか、そうか…」(リオン)
「リオン…よしよし」(花凜)
花凜はリオンの頭を撫でている。
「ご、誤解なんだ、これは…」(エル)
動いた反動で、ドルトンから借りたマントがずり落ちた。
「まだ履いていたのだな…誤解か…私は何を誤解しているのか全くわからないが、誤解とゆう事にする」
リオンの絶対零度の視線が突き刺さる…
ミーは視線を外し、花凜は絶望の表情を浮かべていた。
「これ…お弁当」(花凜)
花凜からお弁当を受け取ると、3人はすぐに扉の中に消えた。
微妙な空気が周りを包んでいる…取り繕う事が出来なくなって、俺は固まっていた。
そんな俺の姿を見兼ねたかのように、騎士の1人が隣に来た。
「花凜様はな、エルを許すつもりだったのだ…今日は1日反省するんだな…
まあそのうち中に入る許可も出るだろう」
その後俺はすぐに自宅で着替えて、ドルトンにマントを返しす。
微妙な空気は変わらないが、2人をまだ明るい街まで送る事にした。
来る時は弾んでいた会話も、今は無くなっていた。
「あ、ドルトーン」
「帰って来た!」
「「ドルトーン」」
ドルトンに気付いた美女達4人が、ドルトンに近付いてくる。
まさか、色々な女性に手を出しての修羅場なのか?
何かあれば、俺はソーナを護らなければと思った。
「ただいま」(ドルトン)
「ドルトン、この人達は?」(エル)
「ああ、皆パーティーメンバーだ!そして俺の嫁だ」(ドルトン)
「ええ!ドルトン結婚してたのか!ソーナは知ってたのか?」(エル)
「私もドルトンの妻だもの、知っているわよ」(ソーナ)
ドルトンはいつの間にかハーレム野郎になっていたらしい…
俺の初恋…ソーナへの想いは、見事に打ち砕かれたのだった。
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「元気出してリオン」(花凜)
「気にしないでね!師匠」(ミー)
「ああ、そうだな…」(リオン)
「やっぱり私の治療がダメだったのかも…
誰かを治す前に、変態になる可能性を説明しなきゃ…」(花凜)
「それこそ大丈夫だ、あれは元々だよ」(リオン)
変態を量産してしまうかも知れない不安に、私は俯いてしまう…その後リオンがフォローしてくれて、何とか持ち直した。
この日の出来事をロナウドに報告、後日とても怒られるエルであった。
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「司教様は何時に来るかな?」(花凜)
「時間は指定してないが、昼過ぎではないか?」(リオン)
「花凜の魔法で、館の外に待合室を作ればどうだろうか?」(ロナウド)
みんな朝食を食べ終わり、私達は今日の相談をしている。
朝ごはんはスクランブルエッグと、パンと昨日のポトフの残りで済ませた。
「騎士さんに司教さんが来た時の対処は指示を出しておくから、私達は用事済ませて早く帰ってこよ」(花凜)
「では全員で行くとしよう」(リオン)
リビングで仲良くごろごろしているドクとミーを回収して、私達は家を出発した。
エルはロナウドに怒られて、今日は庭掃除する事になる。
罰が何も無いよりは、リオンとエルの確執が取れていいかもしれないと、ロナウドは言っていた。
元々確執と言うほどの事ではないが、後腐れなくスッキリした方がいいだろう。
一応今日の夜からは、エルも館に入れる予定である。
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ソルの街は、まだ早朝なのでそこまで賑わっていないようだ。
私は今までバタバタしていた事もあり、街を眺めるのは初めてのような気がした。
ロナウドに昨日娘だと言ってもらえて、私は心に余裕が出来てきたのである。
石造りの街並み、鮮やかな野花、潮風、今まで見えていなかった物が目にとまる。
絆の宿についた私達は、素材買い取りのお姉さんの前に移動した。
「おはようございます」
「あら、おはよう、お金御用意出来ております」
出された金貨の量にびっくりした。
「金貨11300枚です!持ち帰れますか?」(お姉さん)
台車のような物で運ばれて来た金貨の量に、朝の依頼を探す冒険者達もどよめいている。
「これは凄いな…私が大商人をしていた時でも、これだけのお金を稼ぐにはかなり時間がかかりそうだ…本当に凄いな」(ロナウド)
「重さは気にしなくていいのだが、1つにまとめてもらえないか?
1袋500枚入りだと思うんだが、それが22袋…このままでは流石に手が足りないからな」(リオン)
リオンは端数の袋を開けて中を確認する。
私はキラキラ光る金貨が気に入った。
金貨を1枚取り出して齧ってみた…花凜、それはオリンピックメダルではないぞ?…私は私にノリツッコミする。
金貨は黒く分厚い革袋にずっしりと入っていて、絆の宿の紋章みたいなものが、金色の糸で刺繍されていた。
(なんだか袋も高そう)
一部始終を見ていた冒険者達が、再び座喚きだした…
それを受け取る私達も、昨日の戦いで知れ渡っているのかもしれない。
ドクとミーも有名人なので、注目を浴びるのも仕方ないだろう。
演習場での激しい戦いを、実際に見に来ていた者も多い。
私は見る側だったので、演習場の見物人を見る余裕もあったのだ。
「それでは魔法鞄を1つ買いませんか?
ここで売ってる小さい魔法鞄でも、金貨50枚もしてしまう高価な物なんですが」(お姉さん)
「魔法鞄はどんな種類があるの?」(花凜)
「絆の宿は専門的な魔法鞄は無いのよ…
この街の魔道具屋さんに行けば、種類もありますが」(お姉さん)
「ありがとう!では魔法鞄1つ下さい」(花凜)
買った小さな魔法鞄を財布代わりにして、お金を全てその中に仕舞った。
今まで無一文だったので、金貨はとてもありがたい…
ここの用事は終わったので、すぐに2階へ続く階段に歩き出した。
「おい見ろよ…あの人、どんな怪我も治す回復魔法の使い手らしいぜ?名前は花凜さんだ」(男冒険者A)
「双黒の風の2人も居るぞ!それに白い悪魔も一緒だ!」(男冒険者B)
私達の名前も、既に冒険者達に知れ渡っているようだ。
そのリオンの2つ名は色々危険な気がする…
「リオン様綺麗…悪魔は失礼よ!」(女冒険者A)
「もう既に、名指し依頼が殺到しているらしいぜ?」(男冒険者A)
「凄いな…指名依頼は高いのにな…」(男冒険者C)
注目を浴びる事は不慣れなので、私は引き攣った顔になってしまったかもしれない…
ミミックの部屋の前に来て、ロナウドが前回と同じ様に、中に声をかける。
「おーい、ロナウドだ!」
「おう!入ってくれ!」




