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銀山に憑りつかれた男 -あの時代で銀山をもう一度-  作者: 有坂総一郎
天文5年 楽市楽座と経済成長優先政策
12/23

楽市楽座

こんにちは、尼子詮久(2周目)です。


戦はどうした?


いえ、戦なんてしている暇なんてないんですよ。街道整備始めたら思いの外、出雲国中だけでなく伯耆や美作などからも人が集まってきましてね……。


一つの事業が人を呼ぶ、その集まった人を目当てに商人が来る、商売が盛んになり、さらに人と商人が集まり……という好循環による好景気がお膝元の富田の町と安来湊で起きたんですね。


というところで、今回のお話は始まります。

天文5年(1536年)初春


 富田~安来湊の高規格街道の整備は直轄地である能義郡と意宇郡の農民に農閑期の出稼ぎを兼ねて公共事業として行ったものだった。


 当初は農閑期の農民を動員して工事を進めていたが、富田や安来湊などの町人が自分たちも稼ぎたいと工事に参加するようになった。そのおかげで工事が捗るとともに、多くの工事現場において商人たちが商機と見込んで屋台を出し、現場の労働者たち相手に商売を始めた。


 そこで、尼子家の息がかかっている伯耆や美作の大きな町や村に工事労働者募集の案内を出した。すると、農閑期で収入が少ない農民を中心に出稼ぎに来るようになったのである。


 そうなると、多くの労働者が集まっている富田や安来湊へ商人が出店するようになり、商いが盛んになってきたのだ。


 だが、人が集まり、商売が盛んになれば、既存の商人と新参の商人との間で対立が深刻化し、相手の商売の妨害を平気でするようなものも出て来てた。当然、そんなことが増えてくれば統治者である尼子家にも陳情や苦情が相次ぐようになったのだ。


 そんなわけで、月山富田城の自室で政務に励んでいる。



「殿、また、安来湊と荒島で商人同士の喧嘩があったそうですわ。それと、鷺ノ湯温泉の拡張の陳情が来ていますわね……」


 喧嘩の理由は?


「同業者同士の諍いだそうですわね。既存の商人が商売の邪魔だと新参の商人の店を博徒に襲わせて、その後、新参の商人が放火して報復したと……ありますわね」


 やはり、楽市楽座が必要か……。


「誰でも自由に商売が出来るというアレですわね」


 そうだね。多くの商人が集まっていれば、同じ商品でも複数の店で扱うことだろうから、自然と売価は競合することで下落し、消費者にとって利益が大きい。逆に消費の拡大によって、商品の量産が進むことで商品単価が低下することによって薄利多売も実現出来るようになる。それは生産力の拡大と雇用の拡大を意味する。


「けれど、今までの独占販売、非課税、免税特権が商人と座が失うことで反発があるのではなくて?」


 反発があるかもしれないけれど、商機の拡大によって得ることが出来る利益と比べれば既得権益なんて微々たるものだよ……。それにその程度のこともわからない商人は今頃路頭に迷いかけていると思うしね。


「それもそうね……。いずれ銀山でも行うの?」


 銀山に関しては微妙かな……。独占販売による統制というメリットは捨てがたいんだよね。食料品、嗜好品に至るまで管理売買制度を採用する限り、銀山の鉱山労働者が叛乱やサボタージュを起こすことはない。一種の兵糧攻めだからね。


「ますます殿の鬼畜っぷりが板についてきましたわね……」


 そんなことはないよ。


 それより、楽市楽座だけれど、当面は能義郡と意宇郡のみで実施する。それ以外の直轄地は様子見だ。自主的に楽市楽座に移行するならば、それでよし。


「わかりましたわ。西出雲などで楽市楽座を今実施したら大社御師や宇龍浦の商人が大騒ぎするでしょうからね……」

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