48話 「空に浮かぶポテチ袋に光が灯る。」
「あのヤロー、目に物を言わせてやる!」
あまりに執拗な“アホー”コールに反撃をすることにしたコーラ。
10kmに及ぶパイプを作り出し、遭難者の耳元に音が出るようにする。
パイプは二重構造で、音が外に漏れないようになっている。振動をよくするため、中には糸と変わらない太さの物を入れていた。
「これなら遠くとも届くはずだ!」
粋がっているのも今の内だ、くらえ!
「うるせぇ!!」
強くパイプに声を吹き込む。
遭難者達は、耳元にパイプが出現しても変わらず、アホーといい続けている。
声を出してから20数秒後、小型スピーカーから
“うるせぇ”という声が聞こえてきた。
遭難者は“うおっ”と声をあげ、そこからアホーと言わなくなる。
「よしっ。」
コーラは満足そうに拳を握ると、作業を再開する。
だが、すぐさまポテチが“アホー”の曲を歌い始める。
“能率重視のーコーラ「の」アホー!”
“合いの手つかないコーラ「の」アホー!”
“感想言わないコーラ「の」アホー!”
“アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー。”
「感想言わないって、ポテチが歌った曲のことか?」
確かにあの時、ポテチは少しだけ不満そうだった。
「褒めないからふて腐れるって、お前は俺の恋人か!」
しばらくは無視して、スピーカーの設置を優先する。
……だが。
いつまでたっても
“アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー。”のコールは続く。
「お前がそのつもりならやってやるよ。」
先ほど遭難者に使ったパイプは、一緒に移動させていたのですぐ使える状態だ。
「うるせぇ!!」
パイプから音が順調に伝わっていく。
「ポテチお前は直にくれてやるよ!」
コーラはポテチに気付かれぬ様に、ギリギリまで動かない。
あと1kmで音が聞こえる所で、ポテチの耳を挟むように先端部分を二つに分ける。
「くらえ!」
パイプが、ポテチの両耳をガッチリと掴み、“うるせぇ!!”の音が襲う。
小型スピーカーからは小さく“うるせぇ”の声が届いた。
「よし、ほぼあいつの耳が吸収したな。」
ようやく静かになるだろうと思いながら作業を進める。
しかし、次はなんとカラオケちゃんが、“アホー”の曲を歌い始める。
“アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー、アホー。”
「いや、流石にカラオケちゃんにはできないから。」
コーラは反撃しないという意思表示を込めて、パイプを消す。
すると……。
“反撃しないーコーラ「の」ヘタレ!”
“強くでないーつかないコーラ「の」ヘタレ!”
“言い返さないーコーラ「の」ヘタレ!”
“ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ、ヘタレ。”
「マジかよ!」
最初は躊躇するも、覚悟を決め。
「やってやるよ!」
コーラはまず、1km程度の長さのパイプを三つ作り出す。
それぞれに「うるせぇ!!」と声を吹き込み、音の進む速さに合わせてパイプも伸ばしていく。
ギリギリまでカラオケちゃん達が気付かないようにパイプの色を黒くし、闇に溶け込ませる。
“なんだあれ?”とポテチの声が聞こえたが、
「もう遅えよ。」
すぐさま、“うるせぇ!うるせぇ!うるせぇ!”
と小型スピーカーから声が届く。
その後“あははははっ!”と楽しそうな笑い声が聞こえた。
「もう、勘弁してくれ。」
これ以上煽らないでくれと祈りながら、急いで残りのスピーカーも設置した。
3人の元に戻ったコーラは開口一番、
「お前達やかましいわ!」
と、言うが3人はただただ大爆笑だった。
「本当に勘弁してくれ。」
「まあ、いいじゃないか。俺は楽しかった。」
ポテチは上機嫌でコーラの肩を叩く。
「聞いたよ?ポテチ君の妹さんのこととか?」
その言葉を聞くと、何故かコーラは血相を変えてこちらを見る。
「聞いたのか?」
……ああ、なるほど。
「いや、耳打ちしてたから聞いてない。なんだ?妹にホの字か。それとも定期的に風呂でも覗いてるんか?」
「なんだ、遭難者。アカシックレコードで調べたのか?」
「あははっ、なにそれ。」
「マジでやめろよ!」
「でも確かに覗きも一理あるな。」
と、ポテチが真剣な顔で話をし始める。
「こいつの自室から、うちの風呂場の換気扇の隙間まで、ちょうど一直線に見通せるんだよ。昔から『あそこのカーテンの隙間は鬼門だ』ってうちの妹も警戒しててさ」
「お前、マジかよ。」
疑いの目でコーラを見る。
「風呂場から見える部屋は全部見えないようにうちの親が処理してるわ!」
「そんなこといって、たまに見える湯気で悶々としてるんでしょ?コーラさんのエッチ。」
ポテチ達はこの元ネタを知らないのか、シーンと静まり返ってしまった。
「まあ、なんだ。首尾はどうだ?コーラ。」
この空気をかえるため、ポテチが口を開く。
「そうだな。セッティングは出来てる。早速移動するか?」
「ああ、そうしよう。」
早速カラオケセットを含む4人をペットボトルで上空まで押し上げる。
「高さが変わって、小型スピーカーとの距離がズレたから調整する。」
位置を動かしているようだが、辺りは暗闇だ。
スピーカーの中継地点も5km離れてるとのことだから、昼間でも分かりようがない。
「よし、準備は完了だ。ポテチ、ここから小型スピーカーまで全体を袋で覆ってくれ。色は白でな。」
「なんで白なんだ?」
「音の通りはあまり変わらないけど、白だと目立つだろ? 何か音が聞こえて見上げたとき、上空が白かったら何かあるって意識が向くから効果があるんだ。」
「あっ、だったら。」
遠くに設置された小型スピーカーから光が放たれ、白いポテチ袋が浮かび上がる。
「おおっ、目立つな。カラオケちゃんがやったの?」
そう尋ねると、
「うん、なんか出来た。」
……一気に、しかも触れずに出現させるなんて。
「なんか出来た」ってことは、アカシックレコードの補助作用が早速出ているじゃないか。
いいな、と眺めていると、
「おい、コーラ。遭難者がカラオケちゃんをうらやましそうな目で見ているぞ。」
「言ってやるなよ。」
「そうだ。放っておいてくれ。」
ポテチは何も言わず、カラオケちゃんに近づくと何やら話し合いを始める。
光がぐるぐると回ったり、赤い光が点灯したりした。
「赤かったり、回ったりすると、警告の合図と思う可能性があるからやめた方がいいんじゃないかな。」
光はそのまま静かに灯しておくことになった。




